メディアグランプリ

「伝える」は片方だけの靴下。「伝わる」は両足そろって初めて歩き出す。


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記事:志村幸枝(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
漢方相談を始めたばかりの頃、私は一生懸命に「説明」していた。
師匠の言葉を完コピし、なるべくその通りにしゃべっていた。
なぜなら、それらの言葉は人の心を動かしていたし、
同じようにやればうまくいくと思っていたからだ。
 
でも、全然反応がなかった。
そもそも、駆け出しの私が師匠の言葉を完コピしている時点で間違ってる。
年齢も経験も違うというのに。
そんなことにも気づかず空回りしていた。
 
うなずきながら聞いてくれても、結局「ちょっと考えます」で終わる。
満面の笑みで「また来ます」の言葉。信じて待っていたけど、二度と来ない。
人間不信にもなりかけた。
 
 
なんで? ちゃんと説明したのに。
情報、届けたのに。
一生懸命話したのに。
 
で、あるとき気づいた。
 
私の話って、「片方だけの靴下」なんだって。
 
 
朝、急いでるときに限って靴下の片方が見つからない。
右足にはすでに装着済み。でも、左がない。
引き出しも、洗濯カゴも探した。けど、ない。
 
この状態、めちゃくちゃもどかしい。
片方だけあっても、意味がない。
両足揃わないと、出かけられない。
 
 
伝えたつもりの私は、まさにそれだった。
 
 
“右足の靴下”だけ渡して、「はい、どうぞ」って満足してた。
でも、聞いた人の“左足”とペアになってなかった。
 
つまり、相手の立場、感情、タイミングと合ってなかった。
それじゃ、履いてもらえないよなって話。
 
 
それに拍車をかけてたのが、自分自身の温度の低さだった。
 
正直、漢方を始めた頃の私は、
「体にいいらしいから紹介してます」くらいの距離感だった。
 
自分が実感できてる「生理の不調」や「冷え性」など、
そういうことは等身大で語れたけれど、それ以外の未知の世界はグレーゾーン。
「良いらしいですよ」って、“らしい”ばっかりの伝え方だった。
 
つまり、自分でも両足履いてなかった。
伝えたくせに、どこか他人事だった。
そんなの、伝わるはずがない。
 
 
転機が訪れたのは、結婚して家族が増えたこと。
夫と子どもたちのおかげで、漢方の経験値が上がった。
自分のことは客観視できなくても、夫や子どもたちのことはよくわかった。
特に「子どもに熱を出させない漢方の実践」は、私にとって大きな糧となった。
 
それと、もう一つ。
自分が歳を重ね、「不調の経験値」が上がったこと。
それまでは、想像でしかなかったお客様の不調が、自分事になった。
より寄り添えるようになり「わかります!」の言葉に力が入る。
「弱さ」を持っているほど、「強く」なる仕事だと実感する。
 
 
これまでは勉強会や教科書で得た知識を「伝えた」だけだったものが、
実際の経験がそこにのると、生きた情報になり「伝わる」に変わっていった。
  
漢方を使って「感動」や「感激」したこと。
自分の中の心の揺さぶり。
その出来事が持っているエネルギーが、どんどん波及して、「伝わる」ようになった。
 
エネルギーって、目には見えない。
だけど、それが及ぼしたことは見える。
 
「電気」は見えないけれど、
「電気」というエネルギーが使われていることは
「モノが動く」とか、「明かりが灯る」などで、見ることができる。
 
漢方相談で言えば、
お客様が相談のお話の後に「よし、やってみよう!」と、
何かしらの心持ちを発動させてくれるかどうか。
行動に移してくれるかどうか。
 
 
そういう変化が、
じわじわ、自分の中で積もっていった。
 
そして、ようやく両足そろった。
右足が「情報」、左足が「実感」。
それがそろって、「伝わる」が始まった。
 
 
 
「これ、私、効いたんですよ」って、
なんの迷いや遠慮もなく、言えるようになった。
すると、そんな一言だけで「私もそれ飲んでみようかな」って
言ってくれる人が出てきた。
 
あ、履いてくれた。
 
私の渡した靴下を、誰かがちゃんと両足に履いてくれた。
その瞬間、やっと「伝わった」って感じた。
 
 
思うに、「伝える」って、靴下の片方なんだと思う。
 
情報とか、知識とか、理論とか。
それだけでも、まあ形にはなる。
でも、それだけじゃ人は動かない。
 
もう片方には、体験とか感情とか、
何かしらのエネルギーが必要。
 
両足がそろって初めて、ちゃんと歩き出せる。
そんな気がしている。
 
 
そしてさらに今は「履いてみたいと思ってもらえるか」
を大切にしている。
 
 
必死に「伝える」ことが、スタートだった私の相談スタイルは
自分で言ってしまうと、ちょっと「しゃべり過ぎ」のように感じている。
 
エネルギーが乗っかり「伝わる」に変換されたものは
それはそれで楽しさを提供できているとも思うが、
漢方相談を求める方には「聞いてほしい」方が多い。
 
 
 
「それなら履いてみようかな」
「これだったら履けそう」
そう思ってもらえる靴下を用意する。
これからはそんな漢方相談もしていきたい。
 
 
 
 
***

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2025-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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