黄金の日々
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:風間靖之(ライティング・ゼミ3月コース)
ゴールデンウィークはどうするの?どこに行っても混雑しているからな〜。混雑。大衆の意識のままの発想でGWを構想すると、連休で疲弊することになる。だいたい大多数の人が考えがちなことを考えてしまうものだ。うっかりレッドオーシャンを目指すと、だいたい頭数だけが多いグループが場を占領し、彼らの勝利の凱歌を上げる落ち着かない環境で、弛緩も気分転換もあったものはない。集団行動が苦手な人は、人混みがダメな人は連休はどう過ごせばよいというのだろう。どこにブルーオーシャンがあるというのだろう。
この場合、概念的な充実を捨てることから始めるのがいいのかもしれない。ところが、人はなかなか理性に頼ることをやめられるものではない。どうしても頭で考えてしまう。コントロールしたがってしまう。支配したがってしまう。一度、東京以外の都道府県の名前をランダムに引き、一番多く出たところに行くという飲み屋の遊びをした。宮城県が他を圧倒的に押さえてクローズアップされた。銀行の支店長みたいに、転勤を命じられて、仕方なくその地に赴くような感覚で、大晦日に宮城県に行きました。自分の意思を放棄して、より大いなるものに身を委ねる。この場合、ランダムというサムシング・グレートに参入するのだ。おおまかにしか計画を立てない。計画して、思い通りにしてやろうという作為が出ると、予想外の展開という可能性の芽を積んでしまうからだ。
仙台の話の詳細は本筋から逸脱するので割愛しますが、ある発見はありました。サンドイッチマンの笑いと同じように、宮城県人のクールな感覚が腑に落ちました。銀座に、あるいは、札幌に匹敵する広大な仙台駅周辺。慌てている人は観光客だけ。地元民は東京のそれよりも短い横断歩道の赤信号は待つ。車が走っていなくてもだ。気長なのだ。韓国式サウナが売りのスーパー銭湯にも行った。興奮している客は皆無。白いプラスチックの椅子に全裸姿で体をあずけて、共用のテレビを観るでもなく観ている人々。番組も選んだわけでもない、チープなバラエティ番組だが、そんなことどうでもいいのだ。九州のスーパー温泉で経験した、常連客のでかい声の会話とは対照的である。クールなのだ。クールだからといって、冷たいわけではない。ただ、脳が興奮していないのだ。むしろ、脳が興奮していたら、人なんて愛せない。クールとラブは矛盾しない。情熱がないわけではない。アイルランドのロックバンドU2みたいな世界観。氷点下、表面に覆い尽くす雪に埋もれながら、深いところで燃焼している情熱。直情的ではない情熱。観光ガイドブックでは知り得ない仙台人気質の魅力を発見するにいたった。
おのれの小さな計らい、思惑にグリップを手放し、無為自然の流れに乗る。その無為自然は、それを目指すことすらを忘れた頃に、流れに乗り、テイクオフしていることが多い。今回の連休は、思い出を刻むような出来事を起こすことを最初から諦めることにした。まず、何にも興味がなくて、何もしたくない日があった。本を読んでも、映像を観ても、音楽を聴いても、虚しい。うつ病に近いコンディション。結果、その日はなにもせず、20時間睡眠。次の日のリフレッシュ感といったら。快眠効果による快調のまま、近所の公園に行く。誰もいない。落ち着く。高尾山の山頂でこの静寂は味わえない。旅行に求めているものが、この誰も注目しない川沿いにある池のある公園で満たされる。満たされない遠出ではなく、満たされる散歩。というよりもピクニックに近い。ロンドン人は、珍しく太陽が見える晴天になると、公園にシートを敷いて、手持ちのランチボックスを手に仲間と憩う。花見に近いが、盛り上がることを求めていない。素朴にしみじみと晴天を祝っているのだ。質素な悦び。資本主義の煽りとは無縁の番外地の穏やかな満足。今のそれよりもっと、より多く、より刺激的にという渇望から離れた境地。
こういう盲点をつくような楽しみ方は、自分の心の声に傾聴する練習からスタートする。マスコミはわたしたちの代わりに考えてくれる。声高に、もっともらしく。その場合は、ああすべきだ、こうすべきだという周囲の声もある。こういう実感にともなわないながらも、抵抗するのが困難な大きな声を過大評価せずに、自分の感じていることにフォーカスする。直感を信じるというやつだ。不合理であろうと、従う。どうなってもなんとかなるさ、という自己信頼がベースにある。自己信頼のための具材を外に求めると、またややこしくなる。いいね欲しさに、過剰なほうに流れてしまうといけない。ここがむずかしいのだ。どうやったら自己信頼を築けるのだろうか。経験からくる自己信頼。つまり、実績に信頼の根拠を置くというのが王道なのかもしれない。しかし、それには時間と労力が必要だ。また、こうした自信を持つと、人は結論からものごとをとらえて、目の前の真実をとらえそこねてしまう危険もある。それでは、若者はいつまでたっても自己信頼が立ち上がってこない。それよりも、自分の内的感覚を信頼して、行動して、それがうまくいった経験を常日頃から繰り返していくことで、自己信頼が育っていく。個になり、孤になり、コペルニクス的に自分の内的感覚ファーストで生きる実践。これは、集団行動が苦手な人の特権である。大衆とは違うクラスターとしての自覚から始まる。
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