拝啓「秘めフォト」カメラマン様
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:和田 千尋(ライティング・ゼミ3月コース)
「セクシー写真、撮ってもらったんだ♡」
この一言に反応しない女子はいない。
「え、どういうこと?」「どこで? 誰に?」
女子会でこの話題を放り込めば、たちまち質問の嵐。話が詰まった時の、爆「談」ネタになること請け合いだ。
私が参加したのは、天狼院書店が主催する女性限定の人気撮影イベント「秘めフォト」。「自分史上最高にSEXYな1枚を撮る」がテーマで、基本は下着姿での撮影だ。ただ、どんなものを着るかは自由。しかし、どんな高価な衣装も、生肌が放つ光には敵わない。実際に見て、肌の露出が多いほど美しいことに驚いた。
正直に言おう。撮影直前には大いに後悔した。どこに出しても恥ずかしいワガママボディや年齢にも自信はなし。なぜ参加しようと思ってしまったのかと悶絶する夜もあった。でも、それでも参加したのは、単なる話のネタ以上に、「自分を変えたい」という密かな願いがあったからかもしれない。
当日、スタジオには10代から60代まで、さまざまな年齢や背景の女性たちが集まっていた。
「わお、今日は静かだね〜」
玄関から聞こえた、のんびりした声。上下黒色の服装でスタジオにのっそり入ってきたのはカメラマンの三浦崇典氏だった。今回の会場はマンションの一室を利用したスタジオだ。スタッフの「今日は初めての方が多いから、皆さん緊張しているんですよ」という言葉に「そうかそうか」とうなずいて笑う姿は、その場にいて全く違和感がない。まるで仕事先から自宅に帰ってきたお父さんのごとく空間に溶け込んでいた。
三浦氏は天狼院書店の店主であり、小説家・編集者・経営者でもあるマルチな人物だ。だがこの日彼が見せた顔は、徹底的に「寄り添うカメラマン」だった。
「じゃあちょっと説明するから集まって〜」と始まった撮影前のブリーフィング。パソコンを開き、柔らかく話し始める三浦カメラマン。
「この撮影ね、即効性があるんだよ」
参加者の意識が彼に集中する。
「その後結婚が決まったと報告してくる参加者が何人もいたり、帰りにナンパされまくったっていう人もいるくらいなんだ」
場がワッと華やぐ。そんな軽妙なトークで我々の興味をひきながら、「下着の線やタグなどは生活感が出てしまって、変にいやらしさが出てしまうから気をつけて」と注意点を伝えた。その中で、こんな一言があった。
「傷も、あざも、ほくろも、ケロイドも……隠さなくていい。むしろ、あるほうが、いい」我々の空気気感が変わる。そして腑に落ちる。
三浦カメラマンが捉えようとしているのは、飾り立てた「足す美しさ」ではなく、「引く美しさ」だ。その人が持つ「生命力」をカメラを通して「美しさ」へと変換する。それが彼の流儀なのだ、と。
撮影が始まると場の空気は一気に明るくなった。「そのお腹、めっちゃいいじゃん! 見てよ俺なんて〜」と自虐で笑いを取る三浦カメラマン。誰かの緊張で強張った顔がふっとほぐれた。
また彼は撮影の合間に健康や食生活についてなどの話題を振りまきながら、ごく自然なトーンで周囲に話しかける。彼がまるで友人同士の集まりのように振る舞うことで、参加者同士の距離もぐっと縮まっていく。撮影中に「うわ肌きれー」「ほんと!」「すてきー!」の声が自然と飛び交うようになり、スタジオは前向きな「肯定の空間」へと変わっていった。
今日の撮影メニューでは1人当たり3パターンの写真を撮る。見ているとかなりの重労働だ。「実は今までの撮影で膝を痛めちゃって〜」などと言いながら、高いハシゴに登ってシャッターを切りだした三浦カメラマン。「撮影の瞬間、三浦さんはカメラと一体化している」。以前誰かがそう表現していた。実際その通りだった。彼は存在感を消して場に溶け込むことで、撮られる側の思いも全面的に受け止めていた。
結果終盤になると、みんな堂々とレンズの前に立てるようになる。肯定的な空間にも後押しされ、自分の中の「好きになりたかった自分」が徐々に目を覚ますからだ。その感覚に素直に身を委ねると、こびりついた要らないものがスルリと剥がれ落ちていく。それはとてもすがすがしく感じられた。
そして撮影終了。すがすがしくもあるが、照れくさくもあり、各々そそくさと帰り支度を済ませる。
帰り道、誰かが言った「さようなら」に振り返った。そこに立っていた女性の姿はあまりにも瑞々しく美しかった。思わず足が止まる。一瞬だがその後ろに三浦カメラマンの「してやったり」という顔が浮かんだ気がした。
一般的な性のあり方は男性が「出す」性、女性が「受け入れる」性だ。しかし、涙、甘え、色気などを「出す」女性にこそ、男性は魅力を感じる。一方で度量広く包容力があるなど「受け入れ」て、涙を見せず我慢強い「出さない」男性が美徳とされていた日本社会。このベクトルの逆転は、なんとも興味深い。
でも思う。こんな風に軽やかに自分を解放できる場が、現在の男性にはあっていいのでは? と。女性限定の「秘めフォト」は「姫」と掛かっているであろう秀逸なネーミングだ。男性版なら「行けフォト」か……。
草食男子に色気を。
どんどん元気になっていく女子に、負けるな、と思う。
***
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