僕が彼女と別れた理由~子育てから逃げた、独身男性の告白
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記事:四国在住のアラフォー N.M(ライティング・ゼミ集中コース)
恥をひとつ、書きます。僕が彼女と別れたいきさつです。
僕は今、四国に移住して住んでいますが、5年前から約2年間、遠距離で関東の女性とお付き合いをしていました。
彼女は、幼い娘を抱えたシングルマザーでした。
僕は、移住前は東京に住んでおり、彼女はそのときからの友人。僕の四国移住の後、彼女が夫と別れたことにより、遠距離で付き合うことになったのです。
今も覚えています。付き合う前に一度、彼女の家に行ったときのことを。
彼女は、まだ首のすわってない娘を抱いて、微笑んでいました。それは、ラファエロの絵画『聖母子像』のような、後光が差すような美しさだった。
そんな姿に惚れ、「結婚前提で付き合いたい」と僕から告白したのでした。
彼女とは、「少し落ち着いて、お互いの準備が整ったら四国で一緒に暮らそう」と話していました。
折からのコロナ禍もあり、遠距離恋愛では頻繁に会うことはできません。僕が関東に行って彼女と娘に会えるのは、4カ月に1度くらいの頻度でした。
けれども、LINEやZoomで連絡を取りながら、彼女と娘の成長を見守る日々は、楽しかった。また、根無し草だった自分に一本の柱ができたような、シャンとした気持ちも覚えたものです。
しかし、彼女と付き合うようになって2年ほどたった頃。
僕は、仕事が著しく忙しくなっていました。勤めていた会社で同僚が辞め、その分の仕事を引き受けなければならなかったからです。
さらに、その年は、関わっていた事業で大きなイベントがあり、その対応で駆けずり回っていました。
そんな中、だんだんと、娘の育児、そして彼女との関係について、不安が高まっていきました。
彼女はよく、娘のことを「私の命より大切な子ども」と言っていました。彼女はもともと精神的な不調を患っていましたが、子どもを産んだことで立ち直ったという経緯があり、娘に対してある種の運命的なつながりを感じていたのです。
そんな娘と一緒にいるとき。僕はよく、怖くなりました。
娘が何かの事故に遭って大きなケガをしたり、亡くなってしまったりしたら。彼女との関係は、取返しのつかないことになるだろう。
実際、こんなことがありました。
彼女の家の2階で、娘と二人きりで遊んでいたとき。ふと娘が「おかーしゃんはどこ?」と言い出したのです。
そのとき、外から車の音が響いたのを聴いて、「おかーしゃんが帰ってきた!」と娘は興奮し、僕に、窓から外を見たいとせがみました。
僕は、娘を抱っこし、窓の近くに連れて行きました。すると、娘は窓の枠をつかんで、ぐいっと体を乗り出そうとしたのです。僕は慌てて娘を抱き戻しましたが、彼女が窓から転落するんじゃないかと、ものすごく怖かった。
この点、血のつながった子どもだったら、また違ったかもしれない。でも、継父として娘に接していた僕は、どこか、「娘に事故があったら、その責任は100%自分にある」そう感じていました。それで僕はだんだん、娘と接するのが怖くなりました。
また、彼女はご両親のそばで暮らしており、娘も「じいじ」「ばあば」になついていました。そんなご両親との仲を引き裂いてまで、四国で娘によい養育環境を準備できるのか。
僕が住む町にも、子育て中の家族はたくさんおり、ママ友・パパ友はつくれます。子育てのコミュニティもあります。しかし、それが「じじばば」がそばにいることに勝るほどのメリットがあるのか?自分の中で、その自信がもてませんでした。
さらに、お金の問題も大きかった。
「娘には、自分の人生を好きに選べるようにさせてあげたい」
「そのためには、娘が10歳になるまでに●万円、20歳になるまでに●万円貯金しよう!」
彼女は、そう言っていました。
僕には、四国でやってみたい事業がありました。でも、子育てをすることになったら、お金を貯めることが最優先事項になったら。そういったことはできないだろう。
「そんなの、全ての親が感じているプレッシャーだ」
「甘ったれんな」
そう言う人もいるでしょう。そうかもしれません。僕が弱かっただけかもしれませんね。
そんな僕の不安に呼応するように、彼女も、イヤイヤ期の娘の対応で疲れが目立つように。僕がLINEを送っても、返信は、どんどん少なくなっていきました。
そんなある日。
彼女から、「別れませんか」という連絡が来ました。
彼女がそう言ってきた理由については、彼女の一時的な感情もあったので、ここには書きません。
ただ、正直、僕も限界だった。だから、
「うん、わかったよ」
と答えました。
そして、激しい痛みと同時に、自分の上に積まれていた何百トンもの積荷がおろされたような、解放感を感じました。
結局、僕は、子どもよりも自分を優先したエゴイストに過ぎないのでしょう。
でも、親になるって、そこまで厳しいことなのか。
今も僕には分かりません。そんな僕は、今も独身です。
(写真はイメージです)
***
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