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「猫マーケティング」のすすめ〜気まぐれな彼らに学ぶ顧客心理と距離感の技術〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:綿引祐敏(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「うちの猫がまるで顧客のようだ」
そんなふうに感じる瞬間が、最近増えてきた。
 
猫を飼っていると、人間の思い通りにならない生き物と日々向き合うことになる。
名前を呼んでも来ない、気まぐれで反応はまちまち。
なのに、こちらが意図しないタイミングで甘えてくる。
まるで、「広告に反応しない消費者」と向き合うマーケターのような気分になるのだ。
 
 
「出したタイミングで食べない」
うちの猫は、ごはんを出してもすぐに食べない。
まず確認だけして、そのままスルー。
こちらが席を立った後に、ようやく自分のペースで食べ始める。
つまり、与えたタイミングでは動かないのだ。
 
これって、まさに現代の顧客そのものだと思う。
昔のように「新商品出たので、買ってください!」というプロダクトアウト的な広告に、いまや誰もすぐ反応しない。
必要な情報は受け取るけれど、アクションを起こすのはあくまで「自分のタイミング」であることが多い。
 
マーケティングにおいても、商品の魅力を「押し付ける」より、「そっと気づかせる」ほうが効果的な時代。
ちょうど猫にごはんを出すように、目立ちすぎず、でも確実に「そこにある」ことが大切だ。
 
 
「構ってほしいときだけ近づいてくる」
うちの猫は、甘えたいときだけ「かまって」と近寄ってくる。
でも、こちらの都合で触ろうとすると、そっけなく離れていく。
これもまた、マーケティングでよくある光景だ。
 
SNSで発信しても、キャンペーンを打っても、反応は気まぐれ。
その一回で振り向かせようとするのではなく、日々のコンテンツや接点を通じて信頼を積み重ねていくことが必要だ。
 
例えばスターバックス。
日々のSNS発信や接客のトーンに一貫性があり、「いつでも立ち寄れる安心感」があるブランドだ。
猫にとっての「いつもの飼い主」のように、顧客にとっても「安心できる存在」であることは、ロイヤルティ構築に必須である。
 
 
「じっと見つめてくるけれど、言葉にはしない」
ある日ふと気づくと、我が家の猫がじっとこちらを見ていた。
明確に「遊んで」とは言わないが、明らかに何かを求めているような視線。
 
これも、顧客の「微妙なシグナル」と重なる。
検索ワード、ECサイトでの滞在時間、ある投稿にだけ反応する「いいね」の数々。
それは明確な要望ではないけれど、確実に興味や関心を示すサインだ。
 
無印良品は、この「観察力」に長けたブランドだといえる。
顧客の生活をじっくり観察し、使う人の声に耳を傾け、過剰に売り込まず、あくまで「生活に寄り添う」視点で商品を展開する。自然とお客様にわかりやすいPOPを提供する売場であったりする。
 
猫のように、静かにこちらを見つめているだけの顧客の存在を感じ取れるかどうか。
これが、反応率では測れない「ブランドの本質力」を左右するといえる。
 
 
「撫でたいときと、撫でられたくないときがある」
うちの猫は、撫でられたいときとそうでないときで、明確に距離の取り方が違う。
こちらが構いたいタイミングと、猫の気分は一致しない。
でも、何かを察したとき、たとえばお気に入りのタオルを広げたときや、届いた荷物の段ボールを置いたときなど、自然と近寄ってくることがある。
 
これは、マーケティングでいう「きっかけ設計」に近い。
 
人は、ロジックより感覚で動く。
情報よりも「違和感」に反応する。
だからこそ、広告ではなくコンテンツ、告知ではなくストーリー。
例えばブルーボトルコーヒーのように、「なにか雰囲気が違う」「おしゃれな空間がある」と感じさせる演出が、行動のトリガーになる。
 
つまり、猫が動くのは「誘われた」と感じたとき。
人も同じだ。
説得よりも、気づきを与える方がずっと効果的。
 
 
「都合よく構うだけでは、信頼されない」
結局のところ、猫に好かれるには「都合のいい時だけ構わない」「急に距離を詰めない」「でも毎日そこにいる」という絶妙なバランスが必要になる。
 
マーケティングも、まったく同じだ。
 
・売り込まないけど、離れない
・観察するけど、押しつけない
・忘れられないように、そっと印象に残す
 
こうした姿勢が、今の顧客とちょうどいい関係を築く秘訣であり、猫との日常から学べるマーケティングのエッセンスだ。
 
 
結局、マーケティングで本当に大切なのは「主導権を握らずに、相手に歩み寄る力」であると実感する。
情報過多の時代においては、説得や売り込みはむしろ逆効果になることもある。
 
いかに自然に、相手のペースで関心を引き出すか。
いかに信頼を蓄積し、「振り向きたくなる瞬間」を設計できるか。
そのためには、短期的な効果を追うのではなく、長期的な関係構築に目を向ける必要がある。
 
顧客は、常に自分の都合で動く。
だからこそ、企業側は「期待されているタイミング」で、「心地よい距離感」でそこにいること。
それが、現代のマーケティングに求められる基本姿勢なのだ。
ただ猫と戯れている時間もそう無駄ではないということである。
 
 
 
 
***

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2025-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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