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バルセロナのスタンプラリー的歩き方


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記事:小川澄子(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
バルセロナと聞いて、あなたが最初に思い浮かべるのは何だろう?
サッカー? ガウディの建築? ピカソやミロの芸術? それとも、海と山の幸に恵まれたグルメの街?
 
魅力が折り重なるこの都市を、今回は「建築」をテーマに歩いてみようと思う。
というのも、2026年にはついにサグラダ・ファミリアが完成を迎える予定だからだ。
1882年に着工してから140年以上。
幾度となく立ち止まりながらも、人々の手で少しずつ積み上げられてきた夢が、ようやく形になる。
 
バルセロナはスペイン北東部、カタルーニャ州の州都。
地中海交易の要として栄え、13〜14世紀にはシチリアやナポリ、アテネまでを支配下に収めた時代もあった。
18世紀には産業革命を経て、新たな富を得た市民たちが新市街に個性豊かな邸宅を構え始める。
それが、現在のバルセロナの街並みを形づくっている「モデルニスモ建築」だ。
 
隣国フランスのアール・ヌーボーの影響を受けた曲線美、装飾のきらめき、そして大量生産可能となったタイルの使い方がその特徴だ。
加えて、カタルーニャの文化復興運動の波に乗り、州旗やバラの花、民話のモチーフなどがあちこちに散りばめられている。
 
バルセロナの街には、120ものモデルニスモ建築が点在している。
その足元には、赤い丸石に「バルセロナ・フラワー」が描かれた印がある。
まるでスタンプラリーのように、それをたどって歩いてみてほしい。
赤い石を見つけたら、ぜひ立ち止まって空を見上げてみよう。
そこには、波打つ壁面や、夢の中のような装飾に彩られた建物があるはずだ。
 
有料で屋上まで公開されている建築もあれば、ふらりと入れるバルやブティック、ホテルや美術館なども建物そのものがモデルニスモだったりする。
外観だけでなく、内装にも手がかけられているから、建築の中で過ごす時間そのものがひとつの体験になる。
 
私のおすすめは「カタルーニャ音楽堂」。
スタンプラリーの途中で疲れた足を休めながら、1階のカフェでコーヒーを片手に座るだけでも、その空間に心を奪われる。
天井から壁、柱、ステンドグラスの一枚に至るまで、装飾の密度がすごい。
ガイドツアーでの鑑賞もいいけれど、ぜひチケットを取って、音楽とともに体験してみてほしい。
 
そして、この街の建築を語るなら、アントニ・ガウディは外せない。
1852年、カタルーニャ州に生まれた彼は、1878年のパリ万博で出展したショーケースのデザインで注目を集め、後に生涯のパトロンとなるグエルと出会う。
 
グエル公園、グエル邸、コロニア・グエル教会……。
「グエル」の名を冠した建築群は、どれも彼の支援あってこその作品だ。
 
1883年、31歳の若きガウディはサグラダ・ファミリアの2代目建築家に任命される。
前任者の図面を引き継ぎながら、独自の発想を次々に盛り込み、唯一無二の建築へと変貌させていく。
晩年は、グエル公園にあった自宅には帰らず、サグラダ・ファミリアに寝泊まりしながら設計に没頭し、1926年、事故によりこの世を去った。
 
彼の死後も、建設は途切れることなく続いている。
バルセロナの住宅街を歩いていると、不意に目の前にそびえ立つその姿は、まるで大地から生えた建築のように見える。
 
2026年の完成予定は、ガウディ没後100年にもあたる節目の年。
これまで写真に写り込んでいたクレーンや足場が消え、ようやく建物の全貌が現れることになる。
 
工事の費用は、長年にわたって信者の寄付と入場料でまかなわれてきた。
何度も資金難に陥りながらも、バルセロナ・オリンピックや世界遺産登録などをきっかけに観光客が増加。
安定した入場料収入が工事を後押ししてきた。
 
ガウディは、詳細な設計図を描かず、模型で構想を伝えるスタイルだった。
スペイン内戦で一部の資料が焼失した後も、残された模型や資料をもとに、後継者たちはガウディの想像力に寄り添いながら設計を続けている。
 
だからこそ、ファサードごとに異なる印象を持ち、時代や建築家の違いがそのまま表情となって刻まれている。
 
近年はコンピューターや3Dプリンターなどの技術が導入され、工期は大きく短縮された。
そのぶん、内部の一部にやや直線的で人工的な印象を受ける場所もある。
だが、それを補って余りあるのが、ステンドグラスの存在だ。
 
光の角度で、教会内部の色彩が刻々と変わっていく。
まるで万華鏡の中に入り込んだような、静かで劇的な時間が流れていく。
 
バルセロナを歩くことは、スタンプラリーのようなもの。
足元の赤い印を頼りに見上げて、時には建物の中に足を踏み入れてみてほしい。
そこには、あなた自身が出会うしかないバルセロナが待っている。
 
 
 
 
***

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2025-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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