メディアグランプリ

手に入れた魔法の杖〜構造と偏愛、そしてデザインの感情〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:綿引祐敏(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「書くのが怖いけど、どうしても書けるようになりたい」
そんな気持ちで参加したライティング・ゼミ。
だけど初日に気づいてしまった。
文章には、人の心を動かす「構造」という仕掛けがあるのだと。
その瞬間、私はまるで「魔法の杖」を手に入れたような気分になった。
 
 
「感性だけじゃない、引き付ける文章には設計図がある」
書くという行為が、ただ思いつきを並べることではなく、感情を運ぶための設計だったと気づいた。
本屋で立ち読みした小説の冒頭に引き込まれた瞬間、それは確信に変わった。
「この作者は、読者の心をつかむ構造を知っている!」
今まで「センス」だと思っていたものの正体は、ある種の「技術」だったのだ。
 
構造とは、言葉を魔法に変えるための公式のようなもの。
自分の意志で人の心を動かせる。そんな「力」を得たと感じた。
しかもこの力は、実は私が昔から触れてきた「ジュエリーデザイン」の世界にも、確かに存在していた。
 
 
「ジュエリーは、ただの装飾表現じゃなかったのか」
私はかつてジュエリーデザイナーとして、数々のデザイン画を制作し、何百というデザインに向き合ってきた。
その過程で最も大切にしていたのは、ジュエリーが持つ「ストーリー」だった。
 
どんな人が身につけ、どんな気持ちでそれを選ぶのか。
そのジュエリーを手にした人の魅力を、どうすれば最大限に引き出せるか。
 
ジュエリーは不思議なもので、その石自体に力があるからか、商品を超えた効用をもたらす。
その華やか屋によって身につける人の外見を変えるだけでなく、持つことで自信を創出させ、内面すらも美しく見せる。
まるで、魔法のように。
そんな「人を変える力」を込められるように、私は一つひとつをデザインしていた。
 
文章の表現も、まったく同じだと感じた。
人の心を動かすためには、そこに意味だけでなく、「想い」が必要なのだ。
 
 
「だけど、この魔法の杖は好きなものにしか反応しない」
正直なところ、これが最初にぶつかった壁であった。
今回のゼミで最も悩んだのは、書くネタを探すことだった。
裏返せば、自分が本当に「愛しているもの」に向き合うことが足らなかったからかもしれない。
 
どんなに素晴らしい構造を知っても、「情熱」がこもってなければ言葉は響かない。
構造とは「器」であり、情熱や偏愛はそこに注がれる「魂」なのではないだろうか。
 
 
「書くことって、実は恋愛っぽい」
ここまで書き続けてみて感じた率直な感想である。
これは、文章を考えるとき、「達成したい想い」と「なかなかうまく進まない気持ち」があいまった複雑な感情を覚えた。
これはなんだか「恋」的な感覚なのではないか、と。
好きな人のことを、もっと知りたいと思い、自分をもっと魅力的に伝えたいと思うように。
 
そう考えると、実はジュエリーをデザインするときも、まさに恋のようだった気がする。
この石をどうしたら一番輝かせられるデザインをつくれるか、どうすれば身につける人がもっと美しく見えるか。
夜通し悩んで、図面を描いて、試作して、また描き直す。
 
そして、恋は思い通りにいかないからこそ、人は夢中になる。
だからこそ、文章もまた「成就しない前提」で向き合うべきものなのかもしれない。
書くことは一部つらさがあったけれど、一方でワクワク感も感じていたのも否めない。
 
恋の面白さは、必ずしも報われることにあるのではない。その過程こそがいちばん楽しいともいう。
報われるかもしれない、という揺れの中にこそ、人は想像力と創造力をかき立てられる。
片想いがいちばん美しいのは、完成していないから。
だから、書くこともまた、「完成しない愛」のように永遠におもしろいのかもしれない。
 
読者の心に届くかはわからない。それでも届けたい。
この「届くかもしれない」という想いが、言葉を選び、魅力的な文章を生み出すのだと思う。
 
 
「あなたは、本当は何を愛していますか?」
書くことで、気づかされることがあった。
私は何にときめくのか。何に怒るのか。何を手放したくないと思うのか。
 
書くたびに、自分の偏愛の輪郭が少しずつはっきりしていく。
そしてそのたびに、自分の中の「表現者」としての感性もまた、よみがえってくる。
 
書くコツの魔法の杖を手に入れた今、私に足りないものは自分が何を愛しているかを知る勇気ではないだろうか。
どんなに磨かれた技術も、想いがなければ空回りする。
自分の好きに、もっと素直になりたい。
 
書くという行為は、読み手に届けるという目的を超えて、
「書き手自身を深く知る旅」なのだと思う。
 
そして気づけば、それはジュエリーをデザインしていたときに感じていた感覚にそっくりだった。
「これだ」と思える石に出会った瞬間の高揚感。
「なぜこの形にしたのか」と問われたときに、自分の中から自然と答えが湧き上がってくる感覚。
文章表現もジュエリーデザインも、どちらも、自分の偏愛を通して、他者とつながる方法だったのだ。
 
魔法の杖は、使う人の考え方と使い方で大きく変わる。
きっとこれからも、私は「偏愛」を探し続けるだろう。
それが、自分の人生そのものこそを豊かにすると確信している。
 
 
 
 
***

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2025-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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