メディアグランプリ

異世界に行きたば、ナンパしろ。

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:モモ(ライティング特講)
 
 
クレイジーな友人がふたりいる。イケメン見つけ、即声掛け、断わられば、次を待つ。流れ作業のようにナンパをする奴らだ。ナンパって言ってもいやらしいものではない。ただ話して、気になったらインスタを交換して、立ち去る。フラットでクリアな関係だ。それをそばでニヤニヤしながら見て、あとで訊きだして、キャーキャー騒ぐ。それがめちゃ、楽しい。
 
でも、他人事だから楽しいのだ。
 
金曜夜、私は都市のド真ん中にてひとり、途方に暮れていた。
落とし物を渡すわけでもなく、道を訊くわけでもなく、知らない人にただただ声をかけるって、常軌を逸している。正直おかしい。クレイジーな友人にナンパを強制された。人が多い方がイイ人を捕まえやすいんだと。
ここに来てやっと、私はナンパについて考えさせられた。スタートポイントにたったのだ。
私は常に読者視点だ。どこに行くにしても、自分&ツレとだけで世界をたて、外と壁を作る。
隣のテーブルの人がうるさかろうが、修羅場の渦中にあろうが、ただの「画面の向こうの出来事」としか見られないのだ。そして、そこに自分はいない。他人の世界を見た気になってただけで、私は自分の世界から一歩も出ていなかったんだ。
ナンパという非日常的な出来事を鑑賞するいち読者。そこに、迷惑かもしれない、勇気あるな、という一般的な意見はあれど、相当な覚悟や当事者ほどの感情は働かない。
このままズルズル明日へ持ち越したとしても、結局逃れられない。今は先のことなんぞ、考えずに行動。
えい、勢いじゃあ
「すみません……すみません!ちょっと友達が貴方のことが気になるって言ってたんで、インスタ交
換しませんか?」
自分の世界から飛び出した。あまりの衝撃に、頭の重さに、眩暈がして後ろに倒れる気がした。足が硬直した一方で、男は二度の声がけに歩みを止め、振り返った。あたりを見渡し、やがてこちらと目が合う。
なんの準備もなく、突然他人の世界に土足で踏み入った。無礼講でお願いします、と心の中で祈る。
「え、僕ですか?」
違います。脳がそう叫びたかった。
「そうです。これ、その友達のインスタのQRです」
こちらのスマホ画面を凝視しながら首に手を置き、傾げる『推定年齢20弱の強めのパーマがかかっ
ているハーフっぽい目鼻立ちのイケメンマッシュくん』。
「インスタっすか、いやー、まぁいいっすけど」
よもや、君は首痛め系男子なのか。
てかわかりやすく照れんな。こんちくしょう、なんでこんなことになったのかな、私ってば。
「おねぇさんってどこから来たんすか?」
……こうなったら、もう楽しんでしまおう。
「春日市。福岡のちょっと南の方だよ」
福岡市。日本八大都市のひとつだよ。
「どこの学生なんすか」
「○○大学の経済学部」
まだぴちぴちの高校生じゃ。志望学部も違うし。
すまんね。どうせ君とは今日限りだから、しょうもない嘘をつかせてくれ。
「ナンパなんか、初めてされたなぁ」
奇遇だね、私もだよ。
友人①に、ご希望通りの『男子』を見つけてあげましたよ、っとDMを送る。
「えー、友達かわいんすか?」
「ハーフのかわいい子ですよー」
ガワだけな。身はバケモンさ。
「マジっすか、僕もハーフです。どことのやと思います?」
「えー、アメリカとか?笑」
 
このナンパ以来、見知らぬ人に話しかけるのにためらいも覚悟も必要なくなった。
イイ人を紹介するうえで、友達の希望どおりなのかの確認だけでなく、そのひととなりを知ることも非
常に大切だ。世間話はいい。
会話を重ねると、「画面の向こう」にいた相手が、2Dの存在から3Dに、そして4Dへと形変える。そし
て、その過程は私の探究欲と好奇心を満たしてくれる。まちゆく人がこんなにも多種多様だとは、以
前の私なら絶対知らない。
ある日は、おしゃれな格好で美容学生を装ってナンパし、またある時は、カタコトな日本語を駆使し、
留学生としてナンパした。空気を読みながら生きる、日本人の性を剥いで、ナンパをするのは楽し
かったし、無駄な嘘、無駄な会話、無駄な労力をかけると、より滑稽だった。いろんな人がいる。パー
ソナルスペースの狭い人の傍を通った時は、にらまれて警戒されたし、ノリのよい人に声をかけたと
きはベストフレンドにもなれた。
 
友人にナンパの醍醐味を訊いてみた。
「普段なら絶対に真正面からぶつからない人に声をかけた後って自分が自分じゃないみたいで、世
界がいつもの世界じゃないんだよね。」
私は思った。それって、バフじゃん? 異世界じゃん? もしかして、ナンパって結構人を変えちゃうの
では? 自分の世界を出て、違う世界に行くためには、召喚魔法も女神様もいらないのかもしれな
い。簡単だ。固定概念を捨てればいい。ノリの良い友を連れてナンパすればいいんだ。きっと頼りに
なる。変わりたいけど変われないから、異世界に行きたい? 冒険したいから、異世界に行きたい?
 
では、最初の一歩としてナンパをおすすめしたい。だって、ナンパは異世界に連れて行ってくれるか
ら。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00



2025-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事