メディアグランプリ

迷いの正解は、満ちては欠ける月の裏側に


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記事:菊子(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
迷った時。どうやったら正解を選べるんだろう。
考えて、考えて、ずっと迷宮にいた。
 
 
私は趣味でタロット占いを習っている。
タロットは78枚のカードで構成されていて、その中に「月」というカードがある。
 
私はこの「月」が、78枚の中で一番苦手だ。
 
「月」は満ち欠けを繰り返す不定形のもの、というところから、カードの意味は、「不安、迷い、幻想、夢想、神秘、インスピレーション」などなど。実に曖昧模糊とした、不安定さのある、感情の揺れるカードだ。
 
占ってこのカードが出ると、「出た! 迷いの極みが!!」と、ため息が出る。(個人の見解です)
 
何か迷うことがあってカードを引いたのに、「それはまだ白黒つきかねます」なんて言われたら、もうどうすりゃいいのさ。
 
私はもともと、迷い始め、考え始めると、メビウスの輪に放り込まれたように出口がなくなってしまう。思考の無限回廊にハマる要素は、できるだけ排除したい。そんな私にとって、「月」は本当に困ってしまうカードだ。
 
現代はとにかくスピード感を求められる。考えがすぐメビウス化してしまう私は、この目まぐるしさに少し息切れしてしまう。生まれた時代、ちょっと間違えたんじゃね? とすら思う。
 
LINEやメールなどのメッセージにしても、周りの人々は返信が速い。ネットでは、「レスポンスの速い人は出来る人」という表現をいたるところで見かける。そうでしょう。そうでしょうとも。私だって、返信の速い人は有り難いし、リスペクトもしているよ。
 
だから私も、できるだけ迷わず即決したい。
 
それでも、考え始めると止まらなくなるのは、様々な選択肢、想い、決断までのシミュレーション、決めた後の正邪善悪、そういったものが頭からとめどなく溢れてくるから。選ぶものが無数に出てき過ぎて、絞り込めなくなってしまう。
 
 
選択肢の中から、最適解を選びたい。
失敗も、後悔も、したくない。
 
 
……そう、迷いの原因は、
「間違ったらどうしよう」という「不安」「怖れ」。
「絶対に間違えたくない」という「欲」。
 
私が「占う」ことも、考えてみればこの不安、怖れ、欲に起因するのかもしれない。
 
ここまで考えて、はたと気づいた。
「全部、独りで考えてしまっているぞ」と。
 
独りで考えること。それ自体は問題はないと思う。ただ、無限回廊に入り込んでいるということは、迷いへのアプローチ方法に、問題があるのかもしれない。
 
 
そこで見つけたのが「ソクラテス式問答法」
 
 
《ソクラテス式問答法とは、相手の意見や考えを引き出し、質問を通じて真理を追求する対話法。ソクラテスが用いた手法で、相手に疑問を投げかけ、思考を深めてもらうことで、より深い理解や真理へと導くことを目的とする。》
 
多角的に質問して思考を深めることで、自分の気づいていなかった答えにたどり着けるのだという。でも、質問方法はわかっても、自分に対してどう質問していくかは結構難しそうだ。
 
しかしそこはこのAI時代。ソクラテス式問答法を取り入れたAIというものを、作っている方がいた! なんて有り難いの……! 早速お題を投げてみる。
 
「あなたにとって、迷った時の『最適解』とはどんな意味なのか」から始まって、どんどん深掘りした質問が、AIから投げかけられてくる。
 
『「間違わないこと」や「後悔しないこと」は、本当に可能だと思いますか? それとも、そうであってほしいという願いなのでしょうか?』
 
『自分がこれまでにしてきた「後悔しなかった選択」と「後悔した選択」とを比べてみると、そこにはどのような違いがあったと思いますか?』
 
自分が普段考えもしていなかったことを、次々と問われていく。ええ~! そんなのすぐに答えられないよ! でも、問われたならば、答えなければ。考えに考えて、答えを返す。
 
途中、質問の上限数に達してしまったため、結論までたどり着かなかったけれど、それでも、私にとっての『最適解』の定義(=認識)が変わった。
 
最初は、「間違わないこと」や「後悔しないこと」といった、白黒でしかとらえていなかった『最適解』の認識。それが、「自分の想いに誠実に選ぶこと」という価値観を尊重したものへと変わった。
 
ここにたどり着いた時、自分でもビックリした。間違うことも、後悔することもあるかもしれないけれど、「私は、自分の想いに誠実であることが、一番大切だと思っていた」ことを、知った。
 
「月」のカードには、月のほかに、水辺から這い上がるザリガニが描かれている。「水」は感情や潜在意識も表していて、ザリガニは、表へ出てきた潜在意識の象徴とされている。
(注:「ライダー版」と呼ばれる一番メジャーなカードの説明です)
 
ずっと苦手だった「月」のカード。心の底から這い出たザリガニが、「正解」を探す迷宮で、出口まで案内してくれた。これからは間違うか否かではなく、心の想いを見つめることで、建設的な選択ができそうな気がする。
 
そして、スッキリ・ハッキリ・スピーディーを求められる世の中ではあるけれど、一方で、「あえて答えをすぐに出さないほうがよいこと」もまた、存在すると思っている。
 
「月」のカードは、理屈だけでは割り切れない事柄も表す。答えを無理に出すよりも、迷いの揺らぎの中を模索することで、真実が見えてくることもあるのかもしれない。
 
一番大事なことは、見えない場所に潜んでいる。
月の裏側のようなところに。
静かに輝く月を見上げて、そんなことを思った。
 
 
 
 
***

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2025-06-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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