朝のルーティン、同じことをしても、毎日同じじゃない
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:及川佳織(ライティング・ゼミ 3月コース)
目が覚めた。5時18分。
「ああ、損した」と思った。ということは、体調万全ではないということだ。
不思議なもので、早く目が覚めて、「まだ寝られるな」と思っても、「せっかく目が覚めたから起きるか」と起き上がれる日と、絶対に起きなければならない6時まで、あと何分寝られるかなと計算してしまう日がある。
今日はとっさに「あと40分」と計算し、寝返りを打ち、あごの下までかけぶとんを引っ張った。
しかし眠れない。ゆうべはわりと早く寝たから、もう睡眠は十分なのだろう。2回、3回寝返りを打ったところで時計を見ると、5時29分。もうあきらめよう。
でも身体が起き上がろうとしない。目を開けて最初に見るのがスマホの画面というのがよくないことは重々承知で、スマホを立ち上げてしまった。ひいきのサッカーチームの情報がないかなあと探したが、ない。何かチームの明るいニュースでもあれば、気が済んで起き上がるのだが、ぐずぐずと見続けてしまう。
スマホの時刻が目に入ると、5時52分。観念してようやく起き上がった。まずは水を一杯飲んで、お弁当と朝食を作り始める。
今週は、けっこう疲れているなあ。昨日は木曜なのに、なぜか金曜日のような気がしていた。
「なんだか今日、金曜日のような気がする」
と言うと、隣にいた同僚が
「あ、僕も今日、金曜日の気がします」
と言い、続けてその隣の同僚が
「え、俺も今日、金曜日の気がする」
と言い出し、3人で顔を見合わせた。
「疲れてるのかな」
「実は、何か見えない大きな力が働いていて、金曜日だと思わされてたりして」
「この席のあたりだけ、時空がゆがんでたりして」
などとくだらないことを言ったっけ。
卵を焼きながら昨日のやりとりを思い出していると、ストレッチを忘れたことに気がついた。
私は重症の腰痛持ちだ。目が覚めたら、ネットで見てやりやすくて効果のあったストレッチをふとんの中ですることにしている。ちゃんとインターバルでメニューがこなせるアプリも入れてある。今日はそれを忘れてしまった。
しかたないので、卵が焼けるまでの間、なんとなく伸びをして、つじつまを合わせておく。本当は、疲れている時ほど、ゆっくりストレッチをして、身体を柔らかくしてから起きだした方がいいのだろう。なのに、実際には疲れている時ほど、そういうルーティンをスキップしてしまう。不思議なものだ。
私は約20年ぶりに常勤フルタイムで働き始めた。ずっとフリーランスで、朝は好きな時に目覚め、曜日も気にせず、無秩序に暮らしていたので、規則正しい生活というのに逆にあこがれがあった。
決まった時間に目が覚め、さわやかな音楽でストレッチをし、スマートスピーカーに今日の天気を教えてもらい、お弁当を作り、おいしいコーヒーと朝食の後、出かける……などという「充実した素敵な毎日」を送れるものと思っていた。
しかし、人間は機械ではない。まったく同じ日が続くなどということはない。まず、目が覚めた時に「やった、早く起きれた」と思う日と「なんだ、まだ寝られたのに」と思う日があるとは思わなかった。その一瞬がその一日の最初の分かれ道である。
振り返って考えてみると、フリーランスだった頃の方が、毎日同じ目覚め方をしていた気がする。目が覚めて時計を見ても、特に何も感じない。目覚ましをかけていないから、得したも損したもないのだ。実際には目覚める時間も、せいぜい20分くらいしか変わらない。その後も、毎日やっていることだから、今日もストレッチをする。後でいくらでも見られるから、スマホを見ようともしない。
まだ寝ていても別に怒られるわけでも、困るわけでもないが、寝たければいつでも寝られるので、とりあえず目が覚めたから起きるか、とすんなり起き上がって、朝食の準備を始める。
まったく決まりがなく、自由に好き勝手に暮らしていた時の方が、よっぽど淡々と規則正しく、毎日同じことをしていた。少なくとも、朝のルーティンは。
1日、1週間といったもう少し長いスパンで見れば、朝のルーティンなんて短い時間だ。フリーだった時も、常勤になってからも、やっていることはほとんど変わらない。しかし、それをやっている時の気持ちはけっこう違う。
自由だった時は、規則正しく型にはまっていき、型にはまった時は、そこから外れようとする。
あるいは見方を変えると、自由だった時は小さな心の動きに鈍感で、ただの習慣として動いていただけなのかもしれない。今の方が、揺れている気持ちを落ち着かせようと心を砕き、敏感になっている。これは、いいことなのだろうか。
来週の月曜日、目が覚めたらどう思うだろう。もし「損した」と思っても、くよくよしないようにしよう。ただちょっと疲れているだけだから。朝のルーティンは、きっと私を押しつぶしたりはしない。
***
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