突然のお知らせ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:井口敦子(ライティング・ゼミ5月コース)
先日、大家さんから電話が掛かってきた。「いま、お部屋にいますか?」と聞かれたが、出勤中だったので、いないことを伝えるとお話したいことがあるという。
「明日の午前中なら空いてます」と伝えたが、確認してから再度連絡しますと言われた。
大家さんだけの用事なら、すぐに日程調整はできるだろうに、確認するということは別の人が関わっているのだろうとすぐに察しがついた。
話の内容には一切触れず、日程だけが決まった。
一体、何の話をされるのだろう。同席するのは、きっとなんだかの業者に違いない。
私の頭の中で、さまざまな想像が駆け巡る。まあ、行ってみればわかるだろう。
あまり深く考えないで当日を迎えた。
大家さん宅を訪問すると、もう一人男性が待っていた。不動産業者の方だった。
大家さんは丁寧に今の状況や今回の話の趣旨を説明してくれた。
簡単に言うと、耐震調査を行ったところ、耐震基準よりもかなり低い判定だということがわかった。要は安全が保たれない住まいということである。補強工事も考えたが、壁をすべて剝がして補強せねばならず、その間、居住は出来ない。築60年弱ということもあり、解体するか立て直すか、すぐに決めかねているらしい。どちらにしても、このままでは住み続けるのは難しいということで、半年後の12月初旬で契約の解約をお願いしたいと言われた。
築60年弱。ぱっと見はそう見えないが、確かにほころびは感じていた。それでも、親切な大家さんで、気になったことを伝えるとすぐに動いて下さり、何かあれば相談しやすくて、住みやすさを感じていただけに残念だった。
その後方部隊として、不動産業者の方が新居探しをサポートしてくれるのだという。
さらに、私は8月に更新を迎える。いまから急いで新居探しというのもあまりにも突然すぎる。
どこか想定内のことではあったが、いざ引っ越さなければならないとなると気持ちは複雑だった。いまの部屋に引っ越してきて8年くらいになるだろうか。1Kでバストイレ別。居心地が良いし、割と自由にさせてもらえている。金額的にも地域の中では、かなりお得な物件だと思う。
帰ってすぐに物件を探した。私は自転車での移動が多いので、駐輪場は必須だ。
突然、物件を探さなければならなくなるなんて、思っても見なかった。
なぜだか、こういう時の検索は必死で見てしまう。
検索しながら一喜一憂してしまう。きっと不動産屋さんしか知らない情報もあったりするだろうからと、勝手に期待して気持ちを落ち着かせた。
思わぬお知らせに、こんなこともあるんだな~と思った。
でも、何かのいいきっかけかもしれない。
断捨離しなくちゃ。少しずつ始めていたが、本格的に動かなければならなくなった。今度はどんな所に住もうか。何を基準に決めようか。いろいろな状況から、近隣に住むことになるだろう。検索していく中で、自分は生活において、なにを大事にしたいのか。そんなことが見えてくるような気がした。
このことを母に伝えた。母は近隣で一人暮らしをしている。「あらあら大変ねえ」とどこか他人事のような返事だったが仕方ない。介護サービスをたくさん入れて、私が時々様子を見に行って、なんとか生活できている。母の反応にちょっとした寂しさを感じつつも、なんとかいまの状況が保たれていることを有り難いと思った。こんな生活がいつまで続くかわからない。だから、いつも有り難いと思う。
母を見ていて思ったのは、そんなに物は持たなくてもいいのかもしれないということ。おそらく。歳をとっていって、使う物は今より決まってくるし、使える物しか使わなくなる。母方のオバからも、少し前に使わなくなった食器など要らないかと聞かれた。
まだまだ母より若い私は、物で満たされることは沢山あるし、その楽しみ方も知っている。
でも、どこか、物をたくさん持つと、それだけ場所や時間や手間もかかる。これからは、できれば自分に合った丁寧な暮らしがいい。自分のキャパに合ったモノと暮らし方。
ミニマリストにはなれそうにもないが、シンプルに整った住まいにしたい。
そんなことをふと思った。
数か月後には、引っ越さなければならないという現実。気持ちはすぐには奮い立たない。でも、少しずつ片付けていかないと……そして新しい住まいを決めなければならない。
ちょっと気が重い。自分の性格として、いままではすぐに段取りを想像し、あれこれやることに追われていった。でも、今はそんな気持ちではない。少しずつやっていこう。
1月から転職し、とても恵まれている環境で働かせてもらっている。2月に母が転倒し入院。4月末に退院してきて大変だった。半年前からパートナーとの関係がぎくしゃくして自分の気持ちがわからなくなった。それでも、ようやくいろんなことが落ち着いてきたところ。ゆっくりとこれからのことを考えるきっかけなのかな……そんな風にも思えた。
とりあえず、いまの住まいに感謝して新しい生活を考えていこう。
近所の集合住宅を気にして見るようになっている自分がいる。いつもと同じ風景なのに、意識が違うだけで、こんなにも見え方が違うのかと発見がある。少し大変だけれど、新たな生活が、新しい自分につながっていけたらなと思う。
***
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