必要なのは「行動しない力」なのだけれど
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:及川佳織(ライティング・ゼミ3月コース)
また買い込んでしまった……。
食材である。
明日の朝食べるパンが切れていて、スーパーに立ち寄った。パンだけ買えばいいのに、いろいろ買い込んでしまったのである。
しょっちゅう、これをやってしまう。買うものがもうすぐなくなりそうなヨーグルトや、来週には買わなきゃならない卵ならまだいい。今特に必要でないものを買い込んでしまう。
たとえば「何かあったときのために」のカップ麺。何かって何? いつか作ってみたいなあと思っていた、ブイヤベースとかガレットとか、カタカナの名前の料理に使う食材。本当に作るの、それ?
あとは調味料とか、レトルトカレーなどが思いがけず安くなっていると「とりあえず」と買ってしまう。次に必要になった時に、高くなっていたら悔しいじゃない。
そうやって食材がどんどんたまっていく。そして、それを消費し終わる前に、また次を買う。
唯一の救いは、買い置きしてあるものをさらに買うということだけはしない、ということであろう。とはいえ、年を取って物忘れがひどくなったら、それもあやしい。いつものようにスーパーで買い込んで帰って「あら、うちにあったわ」ということになるのではないか。怖い。
満杯になった食品保存棚を見て、ため息をつく。スーパーに行くからいけないんだ。スーパーで見ると、買いたくなる。逆にたくさん食材を買い込んで、行かなくてすむようにしたらいいんじゃないだろうか。
当面の献立を立て、必要な食材を書きだす。相当な量になりそうだ。スーパーへ行って、大荷物を持って帰ってくる。よし、これで少なくとも1週間から10日は買い物に行かなくてすむだろう。満足。
しかし、そううまくはいかない。数日後、仕事が立て込んで遅くなり、家に帰るとめちゃくちゃにお腹がすいていた。もちろん献立は立ててあって、肉と野菜を炒めればいいだけだったのに、それを食べ終わると、もの足りない。もうちょっと何か食べたい。
でも献立をくずすことになるからなあ。歯を食いしばってこのまま寝てしまうか、いや、夜遅くまで頑張った自分に敬意を表して、明日食べる予定だった冷凍餃子を食べちゃうか。
はい、冷凍餃子、食べました。
献立が狂うとけっこう挫折感が大きかった。一念発起して悪い癖を直そうとしたのに、という気持ちが強かった。
実際には、冷凍餃子1パックである。明日の分を食べたのだったら、あさって以降の献立を1日ずつ前倒しすればいいだけである。なのに、そう思えない。
ああ、この方法ではダメなのか。
ここまで来て、ふと気づいた。あれっ、私は何のために「この方法」を考えだしたんだっけ。
食材をため込んでしまうのを反省していたのだった。それがどんどん話が横にそれて、餃子を1日早く食べてしまったことでこんなに落ち込んでいる。餃子は食べていいんじゃないの、食材をため込まずに消費したんだから。
何かの問題を解決しようとして、あれこれ方法を考え、工夫をしていくうちに本来の問題がわからなくなってしまうことがある。こんな方法はどうだろう、あれはどうだろうと考えること自体がけっこう楽しいからだ。
しかし、それを試してみて失敗すると、がっくり来る。問題が解決しなかったことより、自分で考えた解決方法がうまく機能しなかったことに失望する。うまくいくと思ったのに。いろいろ工夫したのに。あんなに考えたのに。
自分を過大評価しているのだろう。私なら、自分の考えた方法で解決できるはずだと。それがダメだったから、挫折感が大きいのだ。嫌な性格である。
解決策を考えるのは好きだし、もしかしたら得意なのかもしれない。でも実は、行動力はない。
自分で考えた解決策どおりにきちんと行動できれば、問題は解決するはずである。どんなにお腹がすいていても、明日の餃子を今日食べないことができればいいのだ。行動力というよりも、「行動しない力」と言うべきだろうか。
そもそも、スーパーであれこれ買い物をしなければ、問題は解決する。私がすべきことは「しない」ことである。
買い物をする、反省をする、対策を考える、それをやってみる、失敗する、がっかりする。もし買い物をしなければ、これを全部しなくてすむ。
でも、それはなんだか、ちょっと寂しくはないか。買い物をしない。終わり。私はあとの時間、何をしたらいいのだろう。
そう思うと、問題発見から「がっかり」までの一連の流れも、案外楽しいと思えてくる。やっぱりあれこれ考えるのが好きだ。食品棚一杯になった食材を見た時から、さあ何とかしなくてはと、そわそわし始める。もちろん、そのために食材を買いだめしているわけではなかったのだが。
私のくせだ。また何か問題があれば、あれこれと解決策を練るのだろう。
***
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