メディアグランプリ

5年前に賞味期限が切れたサーモン缶と戦ったら、“マンガは人生の教科書だった”と気づいた


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記事:前田 さやか(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
危なかったぁ。
マジで死ぬかと思った。
でも鳥山明先生のおかげで、助かった。
(鳥山明とはDr.スランプやドラゴンボールなど人気マンガの作者である)
 
私はこれまで、マンガに何度も救われてきた気がする。
 
幼い頃から、本といえばマンガだった。活字だけの本を読むようになったのは、社会人になってからのこと。ちょっと恥ずかしい話だ。
夢中になって読んだのは少年ジャンプ。女の子なのに、少年マンガばかり読んでいた。でも意外にも、その知識が人生のピンチで役立つ瞬間があるのだ。
つい最近も、そんな瞬間が訪れた。
 
キッチンの引き出しを整理していたときだ。
見つけてしまった。なんと賞味期限を5年も過ぎた缶詰。

コロナ禍になる数年前。北欧へ旅行したときを思い出す。
「ここのサーモンおいしいね! 日本で食べたいから買おうっか?」
「いいね。コレ、けっこう日持ちするじゃん」
寒空の魚市場。夫とした何気ない会話。確かに買った。確かに持ち帰った。
 
もはや開けるタイミングを逸した、過去の遺物である。
私は手に持って呟いた。
「開ける勇気がない」
その缶詰は、しばらくキッチンでさまよった。電子レンジの上、トースターの上、炊飯器の横。
「おい、そろそろ居場所決めてくれよ」
「いや、ごめんよ。君の居場所はもうない」
と言いながら、開ける勇気はなかった。
 
ある日、私のやる気スイッチが入った。
「ぼちぼち、君を処分するよ」
怖いもの見たさで、私はドキドキした。
「よし、開けるぞ」
丸いプルタブに手をかけ、ぐっと引いた。
その瞬間だった!
「ヤバっ!」
思わず叫んだ。信じられないほどの悪臭が広がった。公園のトイレのような、ちょっと形容しがたい強烈なニオイだ。
私は比較的ニオイには強い方だが、これは無理だった。胃の奥から込み上げてくるものを必死でこらえた。もだえながら、袋に中身を捨てた。
 
コレで万事解決とはいかない。同じ缶詰があと2つもある。
「あと2つ、今やる? 無理じゃない?」
「いや、今やらなきゃ、一生やらない」
心の中で押し問答を繰り返す私。2つ目を開けようとしたとき、ふと頭をよぎった。
「ニオイがわからなければ、いいんじゃない?」
あるマンガのシーンが、私の脳内に浮かんだ。
『ドラゴンボール』のクリリンが現れたのだ。
クリリンは鼻がない。なのにクサイ敵と戦ったとき、苦戦していた。そこへ悟空がツッコむ。
「臭いのは気のせいだ! おまえには鼻がないじゃないか!」
うむ、これだ!
私はすぐに口呼吸に切り替えた。すると、あれほどの悪臭が、まったく感じられなくなった。まさか、クリリン戦法で切り抜けられるとは思わなかった。私は、完全勝利した。ありがとう、鳥山先生。
 
改めて思った。やっぱりマンガは、ただの娯楽じゃないのだ。発想の転換や、生きる知恵を与えてくれることがある。
私にとって、“マンガは生きる教科書”なのだ。
 
中学の体育の授業を思い出す。雨でグラウンドが使えなかった。
「今日は体育館でバスケをします」
先生がアナウンスをした。
「まずい。バスケやったことないよ。でもあの手がある!」
当時私は、マンガ『スラムダンク』にドハマりしていた。欠かさず、アニメもマンガも見ていた。
「よし! スラムダンクで読んだシュート、ここでやってみるか」
私の脳内で、主人公“桜木花道”がシュートを決めるシーンを再生した。
「左手は添えるだけ」(シュート前の決め台詞)
そう自分に言い聞かせた。
彼になりきってシュートしてみると、面白いほど決まった! 
「案外いけるじゃん。桜木!」と、私はニヤけた。
 
マンガって、まるで体に染みこむ教科書のようなのだ。体育の教科書なるものも、確かにあった。でも読んでも、私はうまくシュートのイメージできなかった。しかしマンガには、“できる気”にさせる力がある。まったく不思議だ。
 
それでも昔は、マンガは悪者扱いされていた。
小学校では持っていったら即没収だった。ある日、マンガを友達と読みたくて学校へ持って行ってしまった。その時の先生が言った言葉が忘れられない。
「読むペースが違ってケンカになるから、持ってこないように」
私は黙って、話を聞いていた気がする。
でも今、先生に会えるなら一度伝えてみたい。
「マンガって、わかりやすい教科書なんですよ」と。
 
実際、『スラムダンク』は世界中でヒットしている。どうしようもない不良が、仲間とぶつかりながらバスケを通じて大人になっていく。こんな熱い“人生のバイブル”、学校の教科書にあっても良さそうだ。
 
まだ「マンガが悪いもの」だと、思っている方がいるのかもしれない。その方も本気でマンガを騙されたと思って読んでみたら、きっと考えが変わるはず。今からでも遅くないと思う。
マンガは、人生を豊かにしてくれるはずだ。
 
キッチンで空になった缶詰を見ながら、私は湧き上がる気持ちを感じた。
『また新しいマンガに出会いたいな』
そこには、勇気や希望があるかもしれない。
ちょっと困ったときのヒントも、きっとある。
あなたも、そんな一冊と出会える日が来るかもしれない。
だってマンガは、人生のバイブルなのだから。
 
 
 
 
***

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2025-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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