「しかたらむかな」って知っていますか?
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:和田 千尋(ライティング・ゼミ3月コース)
「しかたらむかな」って、知っていますか?
呪文? それっぽいですが違います。
反対から読んでみてください!
「なかむらたかし」……そう中村隆志さんの名前なんです。
「しかたらむかな」はお店の名前で、中村隆志さんは店主です。東京・清澄白河で人気を博したパン屋の「中村食糧」が、2023年夏に同じく東京・神楽坂へ移転する際に改名した新店名なんです。言いにくいけどおもしろい。 初めてこの名前の由来を目にしたとき、思わずニヤリとしてしまいました。
「中村食糧」は、もともと「予約が取れないパン屋」としてパンマニアの間では有名。噂によると、行列が近隣住民からの苦情につながっていたとかで、ついに移転。満を持して神楽坂に誕生したのが、この「しかたらむかな」なのです。
そんな人気店に、ある日パン好きの友人からお誘いが。
「行かない?」と言われて、二つ返事で「行く!」と即答。
が、しかし。その数日後、まさかのテレビのゴールデンタイムで紹介されてしまい、人気は大爆発の予感。これはヤバい……!
すぐに友人とLINEで連絡を取り合い、日程を調整。けれど、ただ行くだけでは目当てのパンが買えないのがこの店のすごいところ。
「しかたらむかな」には、来店方法が2種類あります。
①事前予約をしている人(10時半〜13時の時間帯限定)
②13時からの先着順販売(ただし売り切れ次第終了)
友人は、闘志を燃やして予約開始の月曜夜20時前からパソコン前にスタンバイ。事前予約はほとんど秒で埋まる人気コンサート並の激熱な戦い。
ならば早々にあきらめて13時以降の枠に並んだほうが確実じゃないの、と思いますよね。
私ならそうします。
実は予約ひと枠につき4名まで同行可能。滅多に行かれないという思いから、1人1人が爆買いする。そうなると毎回人気のパンは早々に売り切れるという現実があるんです。
生粋のファンはやはり予約枠でとこだわります。アクセス→リセット→アクセス→リセット……無表情で続けること30分。ようやく予約が取れたと知らせが来た瞬間、私は叫びました。
「ありがとう! お疲れ! 一生ついていく!!」
そんな大奮闘の末、ようやく迎えた「しかたらむかな」来店当日。
パンの魅力は、まずなんといっても加水率110%という驚異的な配合。水分をたっぷり含んだ生地は、しっとりモチモチ。噛めば噛むほど、小麦の甘みがじわじわ広がり、手に持ってみるとずっしりと手に吸い付きます。そのまま口に放り込むと、ふわりと溶けるという至福感。でも周囲には香ばし気にしっかり焼き目がついているんです。
具材との一体感もたまりません。名物の「いちご」は、果汁をしみ込ませたピンク色にの生地からゴロゴロと大粒のブドウやパインが顔をのぞかせる。それらが、まるで生のフルーツを食べているようなジューシーさです。
HPには「数種類の国産小麦と数種類の自家製酵母を組み合わせて、日本文化に寄り添うようにパンを作っています」とだけの、そっけないくらいの言葉しか書かれていませんが、中村店主が生地と向き合い酵母を厳選し、多くの時間を費やし試行錯誤しながら作り上げていったパンたち。
名前も個性的で、「たわわ」「チョコガシガシ」「みんなのパン」「ヨカン」など、思わずクスッと笑ってしまうネーミング。パンに対する愛情が、伝わってきます。
ただ、このパン、買ったあとの持ち帰りが一番大変。
超がつくほどの加水パン。ちょっとでも圧が加わると変形するし、上に何かをのせるとつぶれてしまうので気を遣います。前回は持って帰る過程でペチャンとなってしまったと哀しそうに語る友人。人にあげる分は無理矢理ひっぱったりのばしたりして(!)なんとかカタチを整え、自分は泣く泣く底の方のつぶれたパンを食べたそう。
今回は「絶対リベンジ!」と底が広くて固いバッグを準備しての参戦です。
神楽坂の店舗は、黒い建物に囲まれた半地下の小さな空間。目立つ看板もないのに、開店前から行列ができている。さすがの人気ぶり。
パンの並ぶ木のショーケースには、派手な見た目ではないものの、私の心の目では宝石のように輝いて見えるパンたちがずらり。親切なスタッフの方とやり取りし、目移りしながらも、事前に決めていたメニューをサッと選び、紙袋へ。
その重み。袋越しに伝わる「幸せの重力」。
大切に、大切に持ち帰り、家で袋をそっと開けると、そこにはパンの楽園が……!
ひとくち食べて、思ったのは……。
中村シェフの情熱も、スタッフさんの心遣いも、友人の予約の奮闘も、自分の持ち帰りの苦労も、すべてはこの一口のためにあるのか、ということ。
小麦の甘み、具材の旨み、焼き加減の香ばしさ。噛むたびに、じんわりと味わいが広がっていく。パンって、ここまで人の想いをのせられるんだと、ただただ感謝です。
その感動を分かち合いたくて、すぐさま友人にLINEを送ります。
「やばい、『しかたらむかな』最高」
「私も! 幸せすぎる!」
「また予約、がんばろうね」
「うん、次は『たわわ』を2個ずつにしよう」
「了解。また『しかたらむかな』絶対行こうね」
LINEの文面には「しかたらむかな」「しかたらむかな」という文字が呪文のように繰り返されています。
そう、きっとこれは呪文なんだ。
目にするだけで幸せな気持ちになる魔法の言葉。
心に笑顔をもたらす、美味しさの合言葉。
ごめんなさい、最初に「呪文じゃない」と言いましたが訂正させてください。
「しかたらむかな」って、間違いなく心に効く呪文です。
***
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