青天の霹靂-わたしが「2人に1人」の「1人」になった日
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記事:りりぃ(ライティング・ゼミ5月コース)
「悪性の腫瘍の可能性が高いので、紹介状を出します」
医師のその言葉を聞いた瞬間、わたしの世界が一時停止した。
声は聞こえているのに、頭に意味が入ってこない。
しばらくして、言葉の輪郭? がじわじわと心にしみてきた。
「ああ、わたし、がんかもしれないんだ」
これまでにも、「青天の霹靂」と呼べるような出来事は幾度かあった。
高速道路で、突然車のワイパーが動き出してパワーウインドウが開いた! と思ったら車が動かなくなったとき。
長雨の時、焦って保育園へ向かい、通行止め寸前の道をトラックに着いて行ったら、エンジンが止まり、車が半分水に浸かりながら必死に脱出したあの日。
息子が6歳のときに離婚し、シングルマザーとして新たな一歩を踏み出したときも。
両親の同じ年の相次ぐ他界や、当時福島県いわき市に住んでいた時に経験した東日本大震災の衝撃も、決して忘れられない。
でも、医師から「がんの疑いが濃厚」と告げられたその瞬間は、
人生の中でも群を抜いて衝撃だった。
「2人に1人はがんになる時代だよね」と、幾度となく人との会話で口にしていた。
だけど心の奥では、どこか「自分だけは違う、大丈夫」と思い込んでいたのだと思う。
私は10年ほど前から自宅でカフェを営みながら、会社員としても働いている。
毎年欠かさず健診を受けてきたけれど、多少の異常値は気にせずスルーしてきた。
乳がんの再検査も再再検査も経験したけれど、結果は大丈夫だった。
だからきっと今回もそうだと思っていた。
ところが、2023年1月の健診で、肝機能の数値が大きく基準値を超え、精密検査を勧められた。
さらに、便潜血が2日連続で出たため、大腸内視鏡検査もすすめられた。
それでも私は、「自分は大丈夫」と根拠のない自信で、受診を先延ばしにしてしまっていた。
実際に病院に足を運んだのは、4月の終わり。
いまにして思えば、ほんとにわたしって奴は! だけど……
そこで再び現実に引き戻された。
沈黙の臓器と言われる肝臓の肝機能の数値はやはり深刻で、専門医のいる病院への紹介状が出された。
加えて、大腸内視鏡検査ではポリープが見つかり、その大きさや形状から「がんの疑いが濃厚」と診断された。
そして私は、2通の紹介状を手に、大きな病院へ向かうことになった。
肝機能障害については、今のところ薬はなく、定期的な検査と生活習慣の改善が必要とされた。
一方、大腸がんの疑いについては、この病院でも再度大腸癌内視鏡検査をして、その結果腸壁の深部まで広がっている可能性があるため、
内視鏡ではなく外科による腹腔鏡手術が選択された。
そして、2024年8月
私は「大腸がん切除手術」のため、入院した。
手術では、大腸20cmとリンパ節を切除。
一か月後の生検の結果は「やはり大腸がん(結腸がん)」であることが確定。
しかし、リンパ節への転移はなく、抗がん剤治療は不要となった。
抗がん剤治療をしなくて良かったことは、わたしのがんのストレスを小さくしたと思う。
現在は、寛解に向けて5年間の経過観察が続いている。
手術から10ヶ月が経った今、
私は大腸がんのフォローアップとしての外科診察と、肝機能障害での消化器内科を2ヶ月に1回受診している。
いま、日常は戻ってきた。
でも、すべてを「元通り」と言えるわけではない。
術後、吐き気で眠れなかった夜、
傷の痛みで身動きがとれなかった朝。
再発の不安に押しつぶされそうな日はいまもある。
シングルマザーとなってから、全て一人で判断して、人に頼らずに生きてきた私にとって、家族に助けを求めるのは勇気がいった。
病院から「診察には家族の同伴が必要です」と言われ、両親亡きいま、姉は肝硬変の末期でサポートすることはあっても、サポートしてもらう事はできない。
頼れるのは、小さな子供のいる息子夫婦だけ。
息子夫婦に同伴の連絡をしたとき、心の奥で、「迷惑をかけてしまった」と、自分を責める気持ちがあった。
でも、この病気が教えてくれたのは、「誰かに頼ること」は、弱さではなく、生きていく上での自然な選択だということだった。
そして「わたしは誰にも頼らないで生きてきた」と思っていたけど、亡き両親の存在や、今現在病と戦っている姉の存在も、わたしはその存在に守られてきたということも。
もしこの病気を経験していなければ、気づけなかったことが、いくつもある。
強がることと、強くあることは違うということ。
「一人でできること」には限界があるということ。
そして、「命がある」「生きている」ということが、どれほど尊いかということ。
これまでにも人生観が変わるような出来事はあった。
でも、今回の「大腸がん」という現実は、それらを凌駕するインパクトだった。
2人に1人の「1人」になったからこそ、見えた世界がある。
この経験は、わたしだけでなく、わたしの周りの人たちにも、きっと何か大切なことを残してくれるはずだ。
「2人に1人」の「1人」になった日
その日は、これからの私に必要な、大切な日だったのだと。
***
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