メディアグランプリ

不満だらけの旅先で自分軸が芽生えた話。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:安井 智世(ライティング・ゼミ5月コース)
 
 
「わーい!!! 終わった~!!!」
山手線の内側にある駅のホームで赤い電車を背に私は力いっぱい叫んだ。
今はちょうど一泊旅行から帰ってきて自宅の最寄り駅に着いたとこなのだ。
ここで疑問に思うだろう。旅行は楽しいもののはずで義務感のように押しつぶされるものじゃないはずだと。
その通りなのだが今回の旅行は違ったのだ。私はこの解放感と共に大きな疲労感があった。
 
駅から家まで徒歩15分。私はこの時すでに解放感よりも疲労感の方が大きくなっていた。
今回の旅行は通所先(ここから先ではクラブと呼ぶ)のイベントで秩父・長瀞に希望した参加者みんなで一泊して遊ぶという内容だった。
一日目は秩父神社に行き、周辺を散策して食べ歩きをした。
夜はBBQして花火をして夜通しボードゲームやカードゲーム、ジェンガなどをした。
二日目は長瀞に移動し、岩畳をみて川下りをした。
短い時間で人気観光スポットを回って絶景ありスリルありそして何よりみそポテトありだ。
そんな楽しい旅行で私は何よりも対人関係に疲れ果てていた。
 
私はずっと人と関わることは自分の身を削ることで成立すると思っていた。
八方美人で、誰とでも仲良くできる「いい人」を演じて、でも内心はずっとしんどくて。
 
今回の旅行だって、誰かの話に笑って相槌を打ち、景色や電車を見てはしゃぎ、全力で旅行を楽しんでいる人を演じた。「楽しそうでいなきゃ」と思うあまり、気が付けば私は「自分」を完全に置き去りにしていた。
旅行から帰ってきた私はボロボロだった。
 
もう、自分を犠牲にした付き合いは、やめたい。
 
 
それから私は「自分の感情」に向き合い始めた。
最初にやったのは、とにかく感じたことを言葉にすることだった。
モヤっとした。
疲れた。
なんか嫌だった。
そんな曖昧な感覚もそのまま言葉にした。誰かに直接ぶつけるのではなく、信頼できる人にだけこぼしてみたり、自分でノートに書いてみたりした。
「私がしんどかったのは、あの人に期待しすぎていたからなんだ」
「全員から好かれようとしてたから疲れていたんだ」
書き出すうちに段々と自分の不快ポイントが見えてきた。
 
私はこういうときに疲れるんだ。
私は、こういう言い方が苦手なんだ。
まるで、自分の取扱説明書を作るような作業だった。
でも、それが私を少しずつ楽にしていった。
 
変化を実感したのは、カフェでの出来事だった。
 
友達と入ったそのカフェは休日だったこともあってか、談笑している人、仕事をしている人、ひとりでぼーっとしている人……。様々な人で溢れていて、空いている席は喫煙所の前の席だっただけだった。
私は喘息を持っていて、たばこの煙を吸うと咳が出てしまうし、たばこの煙の匂いはそもそも好きではなかった。なので、喫煙所の前に座るのを少々ためらっていた。
するとその時、窓側の席が空いた。
私は胸の奥がザワザワした。
「あの日の私」が背中を押してくれているように感じた。
息を吸って、私は口を開いた。
「ごめん、ここたばこの匂いするから、席変えない?」
言っちゃった……! でも言えた……! 鼓動が早くなるのを感じた。「嫌われないかな」「空気を悪くしちゃったかな」そんな不安も微かに感じた。
でも友達は少し驚いた顔をしたあと「だよね! 私も思った!」と笑って言ってくれた。
 
友達も嫌だと思ってたんだ……。
たった一言。でも私の中ではものすごく大きな出来事だった。
この一言は、ただ席を変えただけじゃない。
私が「自分の声」を信じてみたはじめての選択だった。
誰かのためじゃなくていい。自分のために行動していい。
私の世界が音を立ててひらいていくのを感じた。
 
誰かの顔色じゃなくて、自分の声を優先する。
その小さな積み重ねが私を少しずつ変えていった。
 
今でも時々、周りの顔色を窺ってばかりだったあの時に戻ってしまいそうになる瞬間がある。誰かに合わせすぎて疲れたり、こんなこと言っていいのかなって思ったり。
 
でも私は知っている。
あの日。行きよりも何倍も膨らんだように感じたリュックの重みも、張り裂けてしまいそうだった心の痛みも。
「もうこんな思いしたくない」と心の底から願った自分の声。
 
あの日の私が、今の私をここまで連れてきてくれた。
 
自分軸で生きることはわがままじゃない。
「私はこれが嫌だ」「こうしたい」と自分に正直でいること。
そして。それを選んでいいと思えるようになること。
 
自分軸って、ずっとブレずにいられることじゃない。
怒ったり、落ち込んだり、迷ったり……。感情に流される日があってもいい。
それでも「私にとって心地いい場所はここだ」って、ちゃんと戻って来られる。
 
大丈夫だと思えない日があっても、「私らしくありたい」という気持ちに立ち返れる。
心が揺れても、自分の「中心」に帰って来られる。
そんな土台があることこそが、自分軸なのだと思う。
 
少し前の私と同じように、他人の目を気にして疲れ果てている人がいたら、そっと伝えたい。
 
大丈夫。
あなたは、あなたを選んでいい。
 
 
 
 
***

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2025-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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