メディアグランプリ

18年の時を超えて、再び『鈍感力』を手に取りたくなった先に見えたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:りりぃ(ライティング・ゼミ5月コース)
 
 
『鈍感力』
渡辺淳一さんの本。
わたしもリアルタイムで一度読んでいるのに、いま、なぜかもう一度読みたくなった。
 
18年の時を超えて、あの言葉たちが今の私に必要な気がしてならないのだ。
 
わたしはというと――
好奇心旺盛で、明るく前向きで、行動はおっちょこちょいで、猪突猛進で、前しか見えないタイプ。
粗忽者で、うっかりさんで、すっとこどっこい。
もちろん、それも間違いなくわたし。
だけど内面は、かなりナイーブだと自負している。
 
感受性が強すぎて、感情の振れ幅がとにかく大きい。
楽しいことや嬉しいことは、人一倍響くけど、
その分、悲しみや苦しみもズドンと重くのしかかる。
……正直、疲れるのだ。
 
たぶんそのバランスをとるために、
無意識に、行動だけでも前へ前へと突き進むようになったのかもしれない。
自分でも気づかないうちに、ね。
 
でも、この“内と外のギャップ”は、時に誤解を生む。
理解されないことで、さらに傷ついたり、悲しくなったりする。
 
そして年齢を重ね、人生を折り返す頃には、
家族や周りの人の病気や死――
避けられない別れが、否応なく自分の世界に入り込んでくる。
 
事実、両親は2人とも病で70代で亡くなって、姉は肝硬変の末期状態で、自宅介護という状態。
 
離婚して、シングルマザーになってからのわたしにとって、大きな「塀」のような存在だった両親を失った悲しみと寂しさ。
 
もしかしたら、2人姉妹の姉までも、失ってしまうかもしれない怖さ。
 
気づけばわたしは、悲しみに包まれたまま抜け出せずにいた。
 
そう悲しいままなのだ。
 
寄り添いすぎて、抱え込みすぎて、
気づけば免疫力もガクンと落ちていた。
 
昨年、自分自身が大きな病気になったのも、
おそらくそうした心のダメージと無関係ではなかったと思う。
 
でも……
これから先、もっと多くの“辛いこと”が待っているかもしれない。
 
それは、減ることはなくむしろ増えていく。
そう考えると、今のままの思考や感受性では、
自分自身が持たなくなってしまうんじゃ??
 
それでは、この先、自分も周りの大切な人も守れない。
もっと、しなやかさと優しさをもった強さを身につけたい。
 
そんなとき、ふと頭に浮かんだのが
あの本『鈍感力』だった。
 
まずは、思っている以上に繊細な自分を、少しでも守るために、“鈍感さ”という知恵を、あらためて学びたい。
今の私には、そんな力が必要なのかもしれない……そう思った。
 
そして私は、18年前に読んだ『鈍感力』をもう一度読もうと、ネットで古本を注文した。
 
あのときとは違う今の私が、この本をどう受け止めるのか。それを確かめたかった。
 
けれど。
本が届く前、ふらりと立ち寄った書店で、ある一冊の本と出会った。
 
『感性のある人が習慣にしていること』
 
著者の名前も知らない。いつ出版されたかもわからない。
でも、そのタイトルに何かを感じた私は、直感でその本を手に取った。
 
この本の内容を紹介したいわけではない。
ただ、「はじめに」のわずかな文章を読んだだけで、私の中の迷いがすーっと消えていった。
 
そうか。
私は、やっぱり「感性の人間」だったのだ。
 
周囲からどう見られているかではなく、“自分がどう感じているか”こそが、本当の自分を表している。
 
本の中で紹介されていた「感性」の定義――
 
感性とは、物事を心に深く感じ取る動き(感受性)であり、
外界からの刺激を受け止める感覚的能力である。
 
さらに著者はこう語っていた。
感性とは、先天的な才能ではなく、日々の習慣や経験の中で、後天的に育まれていくもの。
 
私はその言葉に、深くうなずいた。
 
これまでの人生で感じてきたこと、経験してきたこと、喜びも、悲しみも、すべてが私の感性を、丁寧に育ててきてくれたのだと気づいた。
 
もちろん、ときに“鈍感力”が必要な人もいる。
 
感じすぎてしまって苦しくなる人、気をつかいすぎて「生きづらさ」を抱えている人にとって、感情を少し鈍くするというのは、ひとつの自衛手段だと思う。
 
けれど、私は――
「鈍感さ」を必要とする人間ではなかった。
 
繊細で、感受性が強くて、よく泣いて、よく笑って、すぐに心が揺れる。
賑やかすぎる感情。
でも、それがわたしだ。
 
喜びも、トキメキも、ワクワクも――
私は人一倍、深く感じることができる。
 
そして同じように、
悲しみも、苦しみも、切なさも、誰よりも深く感じてしまう。
 
でも、それがなんだっていうの?
上等じゃないか!
 
傷つきやすいことも、感情の波が激しいことも、
それを含めて、私という人間を形づくってきたんだ。
 
そして私は、そんな自分が好きだ。
 
誤解する人がいても、理解しない人がいても、誤解せずに理解してくれる人がいる。
わたしにとって、必要で大切なものを間違わないようにしよう。
 
そう気づけたとき――
もう『鈍感力』を開く必要はなくなっていた。
 
きっと今読めば、18年前とはまったく違う感じ方をするだろう。
でももう、それは問題でもないし、目的でもない。
 
「自分は鈍感にならなきゃダメなんじゃないか」と思ったこと自体が、そもそも間違いだった。
 
だから私は、これから先は、
無理に“鈍感になろう”とはせず、むしろこの感性を大切にしながら、少しずつでも、もっともっと磨いていくことにする。
 
深く感じる私のままで。
 
優しく、しなやかに、生きていこう。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00



2025-07-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事