メディアグランプリ

心臓に怒られたら、新しい〇〇と〇〇の楽しみ方を見つけた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:星空志音(ライティング・ゼミ5月コース)
 
 
「胸に手を当てて考えてみろ!」
上司や親にそう言われて落ち込んだ経験は、きっと誰しもあるのではないでしょうか? 
あなたは最近いつ胸に手を当てましたか? 
『ええと……いつだっけ? つらかったことを思い出すなんて嫌だなあ……』
「ああ……もういい! じゃあ、最近いつ脈を測った?」
『はあ? 脈?』
胸に手を当てるなら分かるが、脈を測るだと? 一体何の関係があるんだ? 
「もっとオレを大事にしてくれよ……」
上司でも親でもなく、心臓にそう言われたのです。
 
 
 
私たちが胸に手を当てたり、脈を測ったりするのは、どんな時でしょうか? 
胸に手を当てるのは、大概怒られて自分を省みている時ですよね。何かしら失敗して反省せざるを得ない時に言われるのがこの言葉です。
そして脈を測るのは、健康上の理由で心拍を測らなくてはいけない時で、普段健康な時にはあまり測ることはないですよね。
反省したり病気だったりいずれもあまり良くない時にする行為です。
 
私も以前はよくしていました。うつ病で心の悩みを抱えていたことがあったのですが、何かあれば全て自分のせいだと考え、反省が足らないんだと胸に手を当て考えては落ち込む毎日でした。
さらに以前不整脈だと言われたことがあり、それ以来不安になると定期的に脈に触れては状態を確かめていました。
酷く痛む胸の鼓動と向き合うのは何ともつらいもので、その時の私は心音から逃げたくてしょうがありませんでした。
「おいおい。心臓の音ってそんなに悪いものなのかよ……」
心臓がそう思っていたとも知らずに。
 
 
うつ病と闘っていた時の数少ない心の支えは、音楽でした。音に身を預けている間が、つらいことを忘れることのできる貴重な時間でした。そんな私にとって、音楽ライブに行くことが何よりの楽しみなのですが、そこでずっと逃げていた心音と新しい出会いをしたのです。
 
「ドゥン……ドゥン……ドゥン……ドゥン……」
小気味良く内臓にまで響き渡る楽器の音。それに合わせて脈打つように照らす照明。
『何だろう、このどこかで感じたことのある感覚。これはまるで……』
『……あっ、心臓だ!』
そう思った私は、無意識で胸に手を当てていました。すると
「ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……」
全く同じスピードで心臓が跳ねている。見事なくらいにシンクロする音。
『これはもしや……』
そう思った私は不整脈を調べる時にしかやってこなかったあの仕草を試みました。すると案の定
「トクッ……トクッ……トクッ……トクッ……」
手首にあてがった指からビートを感じたのです。いつもなら不整脈かどうかしか知らせてくれない脈が、立派な楽器と化していたのです。
 
『すごい!!』
今までは手を叩いたり体を揺らしたりしながら、大好きな音楽を感じていたのですが、さすがに楽器で共鳴することはできないと思っていました。でも自分の中にある自分にしかない楽器があることに気づいたのです。
今まではつらい時に胸に手を当てたり脈を測ったりしていたから、こんな楽しい使い方をしたのは初めてでした。
 
「どうだ! すごいだろう!」
心臓が自慢げに答えます。
「お前、今すごく楽しんで生きているな!」
 
『あ、そうか。私不安でバクバクしているんじゃなくて、楽しくてドキドキしているのか!』
どんどんどんどん高鳴る心臓。
『私はこんなにバクバクするほど楽しいことをしているんだ! 今めっちゃ生きてる! 私、楽しんで生きてる!!』
そう思った瞬間涙がこぼれました。
 
『教えてくれてありがとう』
「いや、オレはずっと変わらず鳴らしていたんだけどな」
 
今までも心臓はちゃんと言ってくれていたのです。つらい時にはつらいと。楽しい時には楽しいと。それなのにいつの間にか、つらい時だけ耳にして、心音から逃げていた。楽しい音だって鳴らしてくれていただろうに、蓋をして聞こうとしなかったのは自分自身だったのです。
 
「ちゃんと心の音を聞け! つらい音だけでなく、楽しんでいる音もな!」
「なあ? だから胸に手を当てて考えてみろって言ったろ!」
 
長いうつ病との闘いでつらい音ばかり聞くことが癖づいていた私が、呪縛から解放された瞬間でした。
良くないことはしっかりと省みて、良い時は表に出さず謙虚に。
日本人ならこんな考えをする方は多いと思います。とても素敵な考え方だと思います。ただ少し行き過ぎると、自分の楽しんでいる音、喜んでいる音を、押さえつけ過ぎてしまうような気がします。もっと楽しい音を認めていい。
 
『ごめんね。今まで大切にできていなかったね』
心臓に向かってつぶやきました。
 
 
これからライブに行く人へ新しい楽しみ方を提案します。
ペンライトもうちわもいいけど、胸に手を当てたり脈に触れたりしてみてください。
自分にしかない心の音に正直になって、ライブも人生も楽しんでみてくださいね。
 
 
 
 
***

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2025-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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