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テストはレントゲン

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記事:山本知歩(ライティング・ゼミ7月コース)
 
 
「テストはレントゲン」そう教わったのは中学に入学した時だった。
私は私立の中高一貫校出身だ。その学校は、いわゆる「定期考査」や「成績表」がない学校で、テストはあるものの一律に点数だけで生徒の評価をしないというのが何よりの特徴だった。
「テストはレントゲン」。たとえば病院でレントゲンを撮ると、「骨が折れている」とか「異物がある」とか、そんなふうに、ふだん見えないものが見える。
それと同じで、テストも、ふだんは気づいていない自分の「学びのクセ」とか「抜け落ちているもの」が、浮かび上がってくるものだ。
たとえば、私は中学のとき、国語のテストで「作者の気持ちを答えなさい」「この時のAはどんな気持ちだったか」という設問を答えるのが苦手だった。裏の裏をかいているのではないか? これはひっかけ問題なのではないか? と深く考えすぎてしまうからだ。
「素直に答えるならA、引っ掛けるならBだろう」いつもそう思ってBを選択し、いつも間違えていた。
テスト後の解説を聞くと、「なあんだ、もっと素直に考えてよかったのか」と思うのに、なぜかテストになると深読みしすぎてしまう。あれは、私の中にある「なんでも深く考えすぎてしまう思考グセ」が、レントゲンのように浮かび上がった瞬間だったのかもしれない。
あるいは高校のときの英語の小テスト。
文法はできるのに、単語がぜんぜん覚えられなくて、毎回同じような単語でつまずく。
そのときも、テストが教えてくれたのは、「君、形は整っているけど、中身がスカスカなんじゃない?」ということだった。
ショックではあるけど、それを自覚できたおかげで、やっと「自分の勉強のやり方を見直そう」と思えた。テストはいい助言者とも言える。テストによって、私の人間性を炙り出されるような気さえする。
 
あるいは美術はどうだろうか。美術に「テスト」はない。評価はあるけれど。点数として評価されるものではないけれど、しかし同じように「レントゲン」的に映し出されるものはあると思う。私は美大出身でもあるけど、やはり、自分が作る作品はレントゲンのようで、私の価値観や人間性を写し出すものだったように感じる。
 
しかしレントゲンだって、見たくないものが写ってしまうことがある。でも、写ったからこそ治療できる。向き合える。テストも、同じだ。
たとえば「あなたの知らないこと」が、そこに写る。
「頑張ったつもりだけど、方向がズレていたかも」という事実も、写る。
いやな気持ちになることもあるけど、それって、写ったからこそわかることだ。
 
逆に、何も写らなかったとしたらどうだろう?
レントゲンで異常が見つからなかった。
テストで何も引っかからなかった。
一見すると「よかった」と思うかもしれない。でも、ちょっとだけ立ち止まって考えてみる。「ほんとうに何もないのか? それとも、写らないように、うまく隠しているのか?」
私たちは、「評価される」と聞くと、つい構えてしまう。
「ちゃんとしなくちゃ」と思って、見せたい自分だけを用意する。でも、レントゲンには、それが通用しない。
骨が折れていたら、折れている。肺に影があれば、そこに影がある。
取り繕いようがない、まっすぐな現実。
テストも、実はそういうものかもしれない。
いや、もちろん、テストの点数がすべてではない。
たった1回の結果で、人の価値なんて決まらない。
でも、そこに写った「何か」に気づけるかどうかは、大きい。
見ようとするか、見ないフリをするかで、ずいぶん違う。
 
ちなみに最近、「自分は何が好きか?」という問いも、ある意味テストみたいだな、と感じている。誰かに強制されたわけじゃないのに、「ちゃんと答えなきゃ」と思ってしまう自分がいる。「この場合はこう答えるのが正解なのだろうな」と深読みしてしまう自分がいる。優等生ちゃんなのかもしれない。
 
でも、答えはいつだってにじんでいて、はっきりとは見えない。
レントゲンの写真のように、白黒ではっきりしていればいいのに。
でも、現実の自分は、そんなにコントラストが強くない。いや、レントゲンでも白くぼやけてけ見えないこともあるのかな。
だからこそ、思う。
「見えないものを、少しでも見えるようにしてくれる」のが、レントゲンであり、テストであり、問いであり。
そして、その“うつし出された自分”と向き合うことで、ようやく人は、自分を知ることができるのだと。
テストはレントゲンのようなもの。
それは、私たちの“今”を写し出す鏡のようでもある。
見たくない部分があっても、それをなかったことにしない。
写っていることの何に心が反応するのか、レントゲンに何を見るのか。同じ人間でも、見る時期が違ったら、違うものが見えるのかもしれない。子供と大人の時の価値観の違いのように。でもどれもが正解で、「良い」も「悪い」も一概には言えないのだと思う。
自分の見ている世界は「何か」日々考える。
それこそが、ほんとうの「勉強」なのかもしれない。
 
 
 
 
***

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2025-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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