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憧れは落とし穴 〜 置き去りにされた私を探しに


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:キャサリン.(ライティング・ゼミ7月コース)
  
   

憧れって美しいもの。そう信じて、疑わずに、ずっと生きてきた。

 

私が憧れるのは、容姿端麗な人、知性あふれる人、歌が上手い人、踊りが素敵な人、デッサン力がある人、センスがいい人、感性が豊かな人、頭の回転が速い人、話が面白い人、サイキックな能力がある人……そしてもちろん、鋭い文章が書ける人。

私は自分のことを、憧れを抱きやすいタイプだと自覚している。特に、才能を惜しみなく輝かせている人に対して、強く憧れる傾向がある。

憧れは、人に対してだけでなく、場所や国、在り方、モノの場合もあるだろう。泊まってみたい高級ホテル、行ってみたい遠い国、おしゃれな暮らし、乗ってみたい車……。

 

憧れている時、人はたいてい喜びや、いい意味での興奮、高揚感に包まれている。心は踊り、目はハートになっているかもしれない。私は好きなバレエダンサーの舞台を観たあと、「生まれてきてよかった」と何度も思ったことがある。なかなかにポジティブなバイブレーションだ。

そして、憧れはときに、現実とのギャップを埋めようとする動機にもなる。成長したいというモチベーションにつながり、日常にハリが生まれ、単調な毎日が生き生きと動き出す。誰にも迷惑はかけていないし、本人はすこぶる楽しいわけだし、幸せに満たされている。

ならば、憧れは大切にすべきもの。

Let’s 憧れ! 大いに憧れをもって生きるべし!

 

……そう思っていた。けれど、ある時ふと気づいてしまった。

「憧れって本当にいいことばかりだろうか?」

 

憧れの対象には、多くの場合「ないものねだり」の要素がある。自分にはない、遠くかけ離れたものだからこそ、惹かれ、憧れる。そして、少しでも近づけたら…と夢を見る。

SNSやインターネットが普及した今、私たちは日々、ものすごい量の情報にさらされている。その中で、憧れの対象に矢継ぎ早に出くわす毎日なのだ。かつて「世界はほしいモノにあふれてる」という番組があったが「世界は憧れにあふれてる」という番組も作れそうだ。たとえ私がそこまで「憧れ体質」でなかったとしても、世の中には、憧れの種がそこいら中に撒かれている。誰かの才能、持ち物、旅先、肩書き、雰囲気。自分にないものをまとっている人やモノなどごまんとあるのだ。

 

私のように「憧れ体質」の人がいる一方で「自分軸体質」の人がいることもまた事実だ。みんながこぞって飛びつこうとしているもの、注目している人、流行りの類には目もくれず、淡々と、粛々と、”我が日々”を営んでいる人たちがいる。自分のエッセンスを含まない物事をちゃんと感知して、そう簡単には振り回されない。そんな人に、私は危うく、また憧れてしまいそうになる。

 

私が憧れているのは、本当に私がなりたい私なのか?それは本当に欲しいもので、本当に本当に、心の底からやりたいことなのか? 

 

それを確かめるには体験あるのみだが、いい大人なら少なからず体験済みなはず。

たとえば。憧れの人に近づこうとマネしたファッションが、あまりにも当たり前に似合わない。恋焦がれて行った国のはずが、ごはんの不味さにガッカリして帰国。おしゃれな暮らしは意外と面倒で、ちっとも楽しくない。乗ってみたかった車は案外乗り心地が悪かった。などなど。

 

意気揚々と向かったはずなのに、それは「憧れ」と思い込まされていただけだった。じゃあなぜまんまと思い込まされてしまうのか? 

私の答えはこうだ。

「本当の自分を置き去りにしてしまうから」

私たちは、いつでも“本来の自分”と一心同体でいることが大事。ないものねだりをするより、自分に似合う服を着る方がきっと可愛いし、せっかく行くならごはんが美味しい国がいい。ズボラでも自分にフィットする暮らしが楽しいし、自分にしっくりくる車は、何よりストレスがない。

 

誰かの「いいね」が、私にとっても「いい」とは限らない。そんな、あたりまえすぎることに、ようやく気づいた。遅かったけれど、気づけてよかった。

私が本当にやりたいこと、望む生き方は何なのか。わからなくなってしまったからこそ、真剣に考えた。

 

誰かに、何かに、憧れを抱く時、本当の自分はどこにいるだろう? もしかして、自分ではない誰かの着ぐるみを着て生きようとしてはいないか? 自分ではないものとして生きるなんて、命の無駄遣いだ。薔薇や月下美人は、たしかに豪華で美しい。けれど私がスミレなら、スミレとして強く美しく咲きたい。そのために力の限り情熱を燃やし、憧れに振り回されず、私は私でいたい。自分の純度を高め、最良の自分を目指し、いつだって本来の自分の声が聞こえるところに立っていたい。

 

遠回りもしたし、失敗もした。でもこれからは、憧れという落とし穴を、華麗なステップでひょいっとかわしながら、自分にしか出せない色で、たっぷりと才能を輝かせて生きていこう。

 
 
 
 
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2025-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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