旅行が教えてくれた綺麗な星座と歪な星座
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:星空志音(ライティング・ゼミ5月コース)
「随分と独特な形になったな……」
旅が終わり振り返る地図アプリ。行った場所に印をつけるのが習慣。
星座のように行った場所を線で結べば、何とも歪な形。
その隣には観光ガイド本。
『2泊3日パーフェクトなルートはこれだ!』と題されたそれは、王道の水族館もビーチも飲食店も見事に網羅されている、何とも美しい形。
旅の途中で手に入れた完璧なガイド本をほぼ活かしきれず、帰ってから名所を見つけて後悔……。滅多に行けない旅行を私はふいにしたのか?
二つの全く違う星座を眺めて、笑った。
先日私は音楽ライブを観に行くために沖縄へ行きました。
夏の土日の沖縄、しかも有名アーティストのライブがある日程の飛行機とホテルを押さえることがいかに大変か、のんびり屋の私は知りませんでした。私が調べ始めた時には、すでに当選者によってほとんどのホテルは満室でした。
本当はコンサート会場の近くのホテルがいい。
出来るなら沖縄らしいリゾートホテルがいい。
ただ現実は、満室か、予算の2〜3倍の価格。
仕方なく諦め、ライブ会場からギリギリ歩ける古びたホテルを選びました。
しかし、そこが意外といい所だったのです。
スタッフさんのご好意で早めのチェックイン。大浴場もあり、自由に読める本まで充実。あまりの過ごしやすさに、チェックアウトギリギリまでくつろいでしまうほどでした。
ただ、少しくつろぎ過ぎてしまいました。
ご飯を食べに行こうとしたら、ガイド本に載るような有名店は、軒並みラストオーダーが終わっているか定休日。
仕方なく諦め、開いていればどこでもいいやと地図アプリで探し見つけたのは、ホテル同様古びた定食屋でした。
それなのに、とんでもなく美味しかったのです。
どんなチェーン店にもないこの店だけの味。さらにたった一人で経営されているおじいさまの人柄も相まって、他ではなかなか感じることのできない経験になりました。
「予想外にいいホテルに、予想外にいい食堂。ついているなぁ!」
そう思いながら店を出て目に入った看板に驚きました。
『◯△×食堂』
私の泊まったホテルは
『◯△×ホテル』
偶然にも同じ名前。
同じ名前が私を呼んだのです!
今改めて振り返ってみると、ちゃんと同じ名前だと認識できたのは、食事後でした。
でももしかしたらホテルでのいい体験があり、その名前にいい印象を持っていた私は、地図上にたくさん示された店の中から無意識で同じ名前のこの食堂に目がいったのかもしれない。
それこそ、もし私が前もって入念に準備をしていればこのホテルは選んでいなかったかもしれないし、このホテルが心地良過ぎて長居していなければ、違う飲食店を選んでいただろう。
ただ名前が同じだっただけ。それだけのことだけど、店を出て一人、思わずガッツポーズして微笑んでしまうほどに嬉しい体験になりました。想定外の出会いが新たな出会いを呼ぶ面白さが、私をワクワクさせました。それはどのガイド本にも載っていない、私だけの経験になったのです。
正直準備不足な旅行でした。
それでも一旦旅行が始まってしまえば、準備万端だろうが、準備不足だろうが、進むしかありません。最短距離で行こうが、寄り道しようが、想定外のことが起ころうが、家に着くというゴールまで進むしかありません。
一回こっきりで一方通行。
それはまさに人生も一緒です。
一回こっきりだからこそ、絶対に失敗したくない。完璧主義な私は、石橋を叩き過ぎて壊すくらい、考え過ぎて動けないことばかりでした。何でも始める前に入念に計画を立て、失敗を避けることに必死でした。
でも今回のように想定外の出会いが新たな出会いを呼ぶ。それってすごく面白い! 完璧主義だった性格の私が出会ってこなかったものに、今出会えている。
失敗を恐れて動けないことが、一番の失敗だったのです。
そのことに気づいたことは、私の人生をたった今大きく変えつつあります。まさに今、執筆していることがそうなのです。
ほんの数か月前までは、執筆した記事が世に出ることはおろか、SNSでの発信ですら全くしない人間でした。そんな私が想定外の出会いをし、その方に「文筆家になりたい」と宣言してしまったのです。今のようにここで毎週記事を書くようになるよりも半年も前のことです。その当時はうっすらと思っているくらいで、今ほど気持ちが固まる前でした。それなのに宣言してしまった……! 石橋を叩かないにも程がある! それまでの私なら有り得ないそのうっかりが、人生を変えてしまったのです。
はみ出す事を恐れて品行方正に真っ直ぐな道を作ることに必死だった私が、自分の作った枠からはみ出した瞬間でした。そうすると道は途端に不思議な足跡で埋まりました。あっちこっちチグハグに向いた足跡、同じところばかり踏み締めた足跡、急にジャンプして蹴り上げた足跡……。真っ直ぐとは程遠い。でもそんなことどうでもいい。私にしかない味のある足跡を見てクスッと笑う。
「これが私だけの人生だ」
完璧なガイド本の隣には、実際辿ったぐちゃぐちゃの痕跡。
綺麗な星座と歪な星座、二つの全く違う星座を眺めて、笑った。
「歪でいい。私にしか創れない形だ!」
王道の名所には軒並み行きそびれた旅だったのに、歪な星座を眺める自分はことのほか幸せそうな顔をしていた。
人生だってそれでいい。
星空に自分にしか描けない星座を掲げて。
《終わり》
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