メディアグランプリ

繋がりたいのに発信が怖いのは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中優希菜(ライティング・ゼミ5月コース)

 

発信が怖くなったのは、いつからだったろう。

昔は思ったことはそのまま発言していたし、インターネットにも書き込んだ。

だけど今は、YouTubeのコメント欄に投稿するのも気が引ける。

たくさん友達ができたSNSアカウントも、もう何年も「見る専」になっていて、ついに年1回のあけおめも投稿しなくなった。

投稿しようと思って、SNSの下書きを書くところまではできる。ただ、投稿ボタンを押せずに下書きだけが溜まっていく。

いったい、いつから自分の言葉に自信が持てなくなったんだろう。

 

インターネットとの出会いは、中学生の頃に遡る。

二つ折りの携帯からiPhoneに乗り換えたタイミングで、ネット文化が大好きな友達に勧められ、Twitterを始めた。

 

私はわりと、頭の中がうるさいタイプだ。

ずっと頭の中で何人かの私がラジオを撮っている感じ。

その思い付きをそのままTwitterに垂れ流して、中学の友達、同じゲームが好きな大学生のお兄さんお姉さんなんかと仲良くなった。

1ツイートすれば、必ずいいねが何個かつく。そんな環境が楽しくて、考えは全部Twitterに書いていたし、好きなことを好きだと何度もつぶやいた。

自他ともに認める「ツイ廃」で、学校以外の時間はずっとTwitterにいたと思う。

 

高校生になって、リアルの友達と繋がる「リア垢」と、趣味をさらけ出した「趣味垢」を分けて使うようになった。

当時、自分の周りではよくある流れだったけれど、今思えば「あんまり仲良くない友達にも見られていい投稿」とそうでない投稿を分けるようになったきっかけでもあると思う。

 

頭の中を垂れ流していた投稿が、読み手を意識するようになって「この投稿にあの子はどう思うんだろう」と投稿する前にためらいが出るようになった。

実際、友達のツイートを見て陰口を言う人もいた。

同じ趣味の人や気が合う人と繋がることが楽しかったSNSが、仲間内で自分を良く見せたい、嫌われたくない、という感情を持つ場所になり始めた。

この頃から、私のSNSは少し不自由になっていたと思う。

 

大学生になると、もっと発信をためらうようになった。

1番大きなきっかけは、ジェンダー論の授業だ。

先生は、男性に男性らしさを、女性に女性らしさを求める社会構造について論じていたと思う。

「ステレオタイプを押し付けるのは悪だ」そんな論調に、当然の考えだと思う反面、それを自ら望む人たちはどうなるんだろう? と考えた。

 

自分は、女性らしいふわふわしたキャラクターが好きだったし、自分もそうなりたかった。

もっとバリバリやりたいと思っている人が、そうできない社会構造は変えていけると良いというのは同意だ。

ただ、自分が良いなと思った女性らしさみたいなものが、社会的に作られたステレオタイプで、それが悪だと言われているように感じたのだ。

女性らしさを望んで女性らしく振舞っている人もいるんじゃないか、女性に女性らしさを求めるのが悪なら、そういう人はどうなるんだろう。

私はそちら側の人間だと思うし、望んで女性らしくするのは別に良いんじゃないか。

そんなことを逡巡していた。

 

自分が良いと思うものは、社会によって作られている。

その社会の正解は、時代によって変わっていく。

じゃあ自分の好きってなんなんだろう? 今自分が正しいと思って発信したことが、今の社会にとってどう受け取られるかわからない。そして今は良くても、数年後には批判の対象になるかもしれない。

そんな不安が、私のSNSをもっと不自由にさせていた。

 

私が大学に入学した2017年ごろ、「こたつ記事」と呼ばれるような、聞きかじった情報を軽くまとめた記事が増えた。

明らかな誤りや悪意がある記事に嫌な気分になったし、よくこんな記事が書けるな、人を傷つけてしまうのが怖くないんだろうか……ともやもやしていたのを覚えている。

 

有名人でもない1ユーザーがそこまで考えなくてもいいのはわかっている。

でも、無自覚に社会を悪くする歯車になるのは嫌だった。

そんなことを考えるうちに、SNSは動かないのがデフォルトというくらい、投稿ができなくなってしまった。

 

それでもどこかで「発信をしたい」と考えている自分がいた。

大人になるほど、すぐ会える友達は減っていく。

SNSは、気が向いたときすぐ誰かと繋がれるツールだ。私は、人と繋がっていたいと思っているらしい。

 

繋がりたいのに発信が怖いのは、嫌われる勇気がなかったからだ。

他人と比較して自分に自信が持てなかったり、誰にでも好かれたい自分のエゴに縛られたり、見知らぬ不特定多数の視線を妄想して、自分を不自由にさせていた。

でも、社会が変わろうと、周りが変わろうと、自分の好きなものを好きだと言うことにためらいを持つ必要はない。自分の好きを他の人と比べたって、何も良いことはない。

 

そんなことを思って、最近はYouTubeのコメントをしてみたり、ちょっとしたことをツイートしてみたり、何も考えず発信する練習をしている。

率直に好きだと言って、それに共感してくれると繋がっていく、それがSNSだったなあと中学時代を思い返す。

だから今日も、少しずつリハビリをして、「こういう自分でいたい」を体現できる日々を重ねていきたいと思っている。

そうやって言葉を外に出すたびに、自分の好きを積み重ねた自分らしさを見つけられるような気がしている。

 


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2025-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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