パブリックイメージに敗北した話
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記事:升井さくら(ライティング・ゼミ7月コース)
皆さんは、周囲の人に勘違いされてしまっていることってないだろうか。悪い誤解ではなく、そんな人間じゃないのに、というような実際よりもちょっと良いパブリックイメージをもたれるような勘違いである。「本当は、私、そんな人じゃありません!」と声高に言うほどの悪いイメージでもなく、そのプレッシャーに押し潰されるほどのパブリックイメージでもないから、「そんなことないですよー、へへっ」なんて、やんわりとした否定しかできなくて、謙遜しているように思われて、「またまた!」とか笑われちゃって、微妙な気持ちを抱えて過ごす。そんな人、結構いるんじゃないだろうか。
私の場合は、美意識が高い人だと勘違いされてしまった。
皆さんは美意識が高い人と言えば、どんな人をイメージするだろうか。例えば巷では、神様仏様みな実様、指原莉乃様、MEGUMI様、あたりだろうか。最近ではインスタグラムを中心としたSNSに美容情報が溢れているし、有名無名問わずいろんな人が発信している。美肌のためにはこんな成分がいいとか、体重はどうとか、ヘアケアにはこれがいいとか、むしろ情報過多だと思う。もはや何が正解なのか分からないほどだ。
私は、本当はメイクすら落とせず疲れて寝落ち界隈の人間だ。けれど多分、出勤がギリギリなのもメイクに時間をかけているからだと思われている。毎朝ただの寝坊なのに。「色気より食い気! ポテチうんめぇ!」と思っているし、それは今でもあまり変わらない。いや、健康のためには、もうちょっと筋肉つけたり、痩せたりした方が良いとは思うけど、運動大嫌い、だって楽しくないもん。そんな程度の美意識。
しかし夏のある日、事件が起きた。
私は日焼けすると皮がベロベロに剥けたり、赤くヒリヒリしたりする体質なので、夏場に外出する時はそれが嫌で、仕方なく日焼け止めを塗るようにしている。そうすれば大丈夫だから。だから少しぐらい袖の短い服を着て歩いていても、別に問題ないと思ったし、用事も室内だから、紫外線をばっちり浴びる時間なんて、ほんの15分くらいだし、と、高を括っていた。用事を済ませてご機嫌に、本屋でも寄ろうかとしていた私の手の甲に異常が起きた。
「痛い……。」
見ると、両手の甲にぶわっと、いくつもの赤い発疹が出ている。どうやら私はいつの間にか、生身ではギラつく太陽の下を歩けない体になっていたようだ。日光に当たれば死ぬのか、私、鬼じゃん。慌てて私は、駅ビルの中の雑貨屋でアームカバーを買い、なんとか燃えて塵にならずに済んだ。
それ以来、私は真っ当に太陽の下で生きることを諦めて、日焼けの恐怖から、夏は基本的に太陽を避けて生き、どうしても外出しなければならない時は、まるで君島十和子のような完全防備紫外線ブロックスタイルで過ごすようになってしまった。もちろん日焼け止めも毎日欠かさず塗った。紫外線が強い時だけ、と思っていたが、天気予報のお姉さんが
「実は今日もこんな天気ですが、紫外線は結構降り注いでいます。」
と言うと、怖くて年中日焼け止めが手放せなくなってしまった。だって日焼けすると身体が痛くて、シャワーも寝るのも辛いんだもん。
そんな日々を過ごしていたら、職場の人に
「美意識が高いですよね。」
と言われてしまった。確かにやっていることは、そうなんだけど、理由が違う。シミとか美白とかじゃなくて、本当にただ痛いのが嫌なだけ。日焼け止めを塗っただけだと肌が白っぽくツヤッとなって、コウメ太夫みたいだから、適当な化粧をしてから毎朝来ているだけ。チクショー。
でもそんなこと面と向かって言えるはずも無く、愛想笑いで、
「いやあ、そんなことないですよー。」
と返してしまう。こんな自分がちょっと悲しい。だからといって、日焼け対策を止めて、健康小麦色の肌に私はなれない。多分その前に燃える。
結局、私はパブリックイメージに抗うことができないのだ。だからもう、抗う気持ちを捨て、負けを認めることにした。
とはいえ美意識急上昇はできないので、日焼け対策、美白・シミアプローチだけ万全で過ごしてやることにした。美白美容液を顔面に塗りたくり、シミ対策スティックをぐりぐり塗って、晴雨兼用日傘を年がら年中持ち歩く。ビタミンCも積極的に摂った。
ふと気がついた。やっていること、そう大きく変わらないな。結局、自分の中の目的が変わっただけで、美容液は元々使っているし、傘だって雨が降ったら困るからいつも持っている。レモンだって齧るくらい好きだ。他人から見て、きっと違いは分からない。
でも、今までよりも肌の白さを褒められた時に嬉しくなった。店員さんの営業トークかもしれないけれど、「色白で肌のキメが細かいですね」なんて言われると有頂天だった。これまでは肌の白さを指摘されても、戸惑うだけだったのに、世界が少し違って見えてきたのだ。
もしかしたら、周りが勝手にもつパブリックイメージに合わせてやるのも、案外、悪くないのかもしれない
***
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