メディアグランプリ

愛は14000キロを越えて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川本諒(ライティング・ゼミ7月コース)

「はじめまして〜、仲良くなりたいので電話しませんか?」

ここ最近マッチングアプリを始めた私は、自分のやりとりがテンプレート化していることに気付いた。気付いた時には相手に合わせたメッセージを送らなくなった。親しくなってないうちから1人1人に丁寧な対応をしても折る骨が多い割に返信が来ない。

とりあえず返事が来たら電話で話して、予定合わせて会って、お互いビミョーな雰囲気で解散して……そんなんばっかり。

お互いそこまで興味ないのがバレバレというか、趣味も仕事も住みも違うと盛り上がる話題も少ない。せいぜい出身の話とか仕事の話あたりをうすーく喋っておしまい。みんな自分に興味ない人のことなんて興味ないもんね。

私は人と違う、ということをかなり嫌っている。生活リズム、趣向、性格、その他何でも。過去の経験で、親しくなってプライベートを共有すればするほど、相手と自分の違いは受け入れ難いものになり、喧嘩になった。そのせいか、自分と気の合う人とは共通項が多い気がする。自分と似ている人の方が興味が持てるし好きだ。

そんな私だが、最近寝る前と起床後に欠かさずコロンビア人のGさん(仮)と話している。距離はアプリ表示だと14000キロらしい。ちなみに今調べたところ地球の半径は6378キロだった。どこ住んでんだよ。

マッチングアプリにはパスポートモードなるものが存在しており、これをONにすると距離を無視してマッチング相手を探すらしい。この機能で14000キロ(?)離れたコロンビアからいいねが飛んできたわけだけど、こっちは聞きたいことしかない。

Gさんはなんでこんな東京の自分にいいねしたんですか、コロンビアも今暑いんですか、そっちでは何が流行ってるんですか、今日のごはん何ですか……エトセトラ。

とはいえ、プロフィールは英語だしコロンビアの第一言語はスペイン語らしい。色々聞きたい気持ちはあるが、最低限言葉くらいは向こうに合わせて話しかけるのが礼儀だろう。質問攻めにしたい心を抑えて、ファーストコンタクトは「遠くからありがとう〜!コロンビアからですか?」に留めた(もちろんGoogle翻訳で英語に変換して)。

送信したのが日本時間13時(仕事サボり)。コロンビアは日本より14時間遅いようで、向こうは前日夜23時。割と直ぐに返事が来た。

「Hello, nice to meet you, I liked your profile.」

「Yes, I am Colombian」

マッチ後の会話の立ち上がりにお国柄は出ないのかもしれない。思ったより普通だった。

それからしばらく英語で「わ〜お互いのこと知りたいですね〜」みたいな会話をした。正直どっちからしても異文化すぎて、存在自体がめちゃくちゃ面白いんだと思う。会話は弾みかけたものの、コロンビア時間は深夜だし、日本時間はゴリゴリ就業時間なので、その日の会話は一旦終わった。

翌日以降、Gさんが日本語変換してくれるようになり、日本語で話し始めた。文化も言葉も生活も違うのに相手への思いやりだけが二人の間で共通していて、コミュニケーションはこうあるべきだよなあとしみじみ思う。

Gさんと楽しく話している自分を振り返り、なんか違いも案外楽しめるな、と感じた。違いを嫌っていると思っていたけれど、この人と話すのはめちゃくちゃ楽しい。日本語変換された文章は簡素で、内容もざっくりしているけれど敬意と関心を向けてくれているのが凄く伝わってくる。話しているうちに分かったのが、日本もコロンビアもそんなに違いがないな、という事だった。

「今日は引越しする家を探してたよ」

「今日は友達と散歩したり美術館に行ってたよ」

「今日は弟と久々に会うんだ、楽しみ」

「今日は仕事遅くまであったんだ、疲れたよ〜」

お互い、1日の終わりにどんな日だったか報告するようになった。これだけ見るとどっちが日本人でどっちがコロンビア人か分からないでしょう……。

やり取りを続けるうちに、時差の14時間が「不便」ではなく「お互いの一日を二倍楽しめる仕組み」みたいに感じられるようになった。私もGさんもコロンビア時間と日本時間を両方意識しながら生活している。私が寝る前、Gさんは朝食を摂りながらおやすみ、とメッセージを送る。私が仕事を終えてぼーっとしている頃、Gさんは愛犬の散歩の様子をSNSに載せている。どちらも相手の生活圏外の全く違う存在なのに、日々の断片を交換することで、少しだけ同じ時間を生きているような気がした。

今ではGさんとは友達よりちょっと仲良いくらいの関係になっている。距離も距離なので付き合うとかはないし、別に関係に名前をつけたところで話す内容も変わんないだろうし。人と違っていても仲良くなれることを教えてくれたGさんには感謝している。いつか海外旅行に行くならコロンビアに行ってみたい。

***

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2025-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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