こびとの日
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:光田菜央子(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
私は同じ主催者のツアーで、過去3回、イスラエル旅行に行っています。そのツアーでは毎回必ず、どこかの保育園か小学校を訪問する日がありました。
これは2回目のイスラエル旅行中、現地の小学校で聞いたお話です。
その訪問した小学校には、月に1度、生徒が参加する「こびとの日」がありました。
「くつやのこびと」という童話をご存じでしょうか。親切すぎてお金がなくなってしまった靴屋の主人のために、主人が寝ている間に一所懸命、こびとたちが靴を作る、というお話です。
この童話のように、こびとはイスラエルの子どもたちにとって、人に知られず親切をしたり、役にたつことをする妖精のようでした。
そのこびとみたいになろう! というのが、その小学校で行われていた「こびとの日」。
その日、子どもたちは「人に知られないように」何かをします。人に見られたり知らせることなく、そっと何か「よいこと」をします。感謝されたり褒められることを目的としません。
朝早く起きて道路を掃除することかもしれませんし、ゴミ箱を洗ったり、家族の靴をそっと磨くことかもしれません。
とにかく、誰にも知られず自分の心だけが知っている「何かよいこと」をその日が終わるまでに行います。
子どもたちは、何日も前から「何をしよう」って頭を悩ませるそうです。
こびとの日。
これが毎月の行事として成立するには、ある程度、高い道徳心が子どもたちに必要です。あるいは、目には見えない大いなるもの(イスラエルの場合には神様)を信じる心も必要です。
「誰にも知られず行う」ことが重要なので、何もしなくても怒られません。したか、しなかったかさえ分からないよう行うのが重要なので、何もしなくても誰にも分かりません。
でも、この日は必ず何か良いことをする。
それが「こびとの日」です。
以前、人間力を高めるというコンセプトのビジネスセミナーに参加したことがあります。参加者は会社の幹部クラスか経営者がほとんど。そしてそのセミナーでも、自宅や会社で何か善行、人の役にたつことを行うことが課題として出されました。小さなことでよいので良きことを日々実践することで人間力を高め、ひいてはそれが会社の売上、業績をあげる源泉となる、というわけです。
ただし、そのセミナーの課題と「こびとの日」では大きく違ったことがありました。
どんな小さなことでもいいので、毎日必ず「善行」を行うのですが、やった日は、事前に配布された表に○をつける必要がありました。○を書き入れ、点数をつけ、指導者に添削をしてもらうことを前提にその課題は出されました。
経営者や会社の幹部という立場の人たちが参加するセミナーなのに、人間力を高めるという大義名分があるのに、ただ言葉だけでやりなさいと言っても、ほとんどの人は実行しないことを講師は経験上知っていたんですね。
私が子どもの頃、夏休み中のラジオ体操に眠い目をこすりながらも参加できたのは、出席表に〇がもらえたからでした。どうやら我々は、大人になっても「善行」を継続するには、達成感や評価が必要らしいです。
イスラエルの子どもたちが行うのは月に1回だとしても、この差は歴然としていないですか。
聖書には「人に見せるために人前で善行をしないように。人に褒められたくて、わざわざ人通りの多い通りで施しをしないように。右手がしていることを、左手に知らされないように」(マタイ6章)とあります。
ということは、聖書に書かれるほど昔から、人は他の人に知られたり褒められたりしないと「善行」が出来ない生き物のようです。
実際「こんなにしてあげたのに、あの人は感謝が足りない」というのは、よく聞くセリフです。
上記で紹介したマタイ6章には「隠れたところですでに神様は見ているんだから、他人にわざわざその親切を知らせるのは偽善者のすることだ」とも書かれています。
そうはいっても人の心は弱い。つい「誰かに賞賛を浴びたい、感謝されたい」と思ってしまいます。
そういう心が人間にはあるからこそ、その小学校は「こびとの日」を通じて子どもたちに何かを体験してもらいたいと願っているのかもしれません。そして、誰にも知られず善行を毎月し続けた子どもたちは、きっと自尊心が高く、強い心と柔軟性を持つ大人に成長していくだろうなあと想像します。
イスラエルの子供たちがやっていることですから、私たち大人だって、できないことはありません。
感謝も賞賛も期待せず、たんたんと良きことをする。
キッチンに汚れたお皿があったら、「今日はこびとの日」って思いながら洗ってみてはいかがでしょう? 道路にゴミが落ちていたら「わたしはこびと」って思いながら拾ってみてはいかがでしょう? そう思うことで、ちょっと気持ちが楽しくなりませんか。
この「こびとの日」、日本の小学校でも取り入れることができたら、子どもも学校も変わっていくだろうなぁと思います。
もちろん、私たち大人は毎日が「こびとの日」になるといいんですけどね。
***
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