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人生には、急がば回れという時もある


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岬 あん(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)

 

めまい持ちである。
子供の頃は自家中毒。
大人になってからは年に数回、トイレまで這っていかなくてはならなくなるほどのひどいめまい、嘔吐に悩まされてきた。

天狼院のライティングゼミ第五、六講のあった木曜の夜、めまいを予感した。
早く寝た方がいいと思ってはいた。
翌週火曜日から入院するとあって、木曜、金曜の午後はただでも外せない予定が山積みだったのだ。
体力を温存すべきだ。

ただ入院までに課題提出をできるだけ多く済ませておきたい。
せめてひとつは原稿を書き上げて寝よう、と考えた。
それが判断ミスだった。
翌日の第七講はめまいで最後まで受けかね、八講は横になっての受講となってしまった。
一ヶ月限定とはいえ動画のアーカイブがあってホッとしている。
予定の詰まっていた最終日はスマホで講義を聞きながら支度。
帰宅後はほぼ完全に撃沈。嘔吐に至ってしまった。

全集中して目の前のことに意識を傾けるより、全体を見て配分する、根を詰めない、頑張りすぎないことが私にとっては学ぶべき大事なことのようだ。
回り道のようでもどかしいのだが。

そういうわけで現在ベッドにて、ひたすら思い浮かぶままにこの原稿を書いている。
全く頭が働かない。
ひとまず現状を書いてお茶を濁している。
これでは即興というか、もはやどう考えてもまともな原稿を提出できない言い訳を並べているだけである。
これすらもコンテンツにできるくらい読ませる力を身につけられるといいのだが、それには修行が必要だろう。
いや、自分自身がコンテンツにでもならない限り、さすがに無理がある気がする。
読者メリットもサービスのサの字もないのだから。

さて、入院まで後二日。

この度人生で初めての手術を受けることになった。
子宮筋腫のためだ。
三年ほどホルモン剤を使って生理の出血を止める治療をしていたのだがうまく軌道に乗らなかった。

更年期。
田舎の母も筋腫による大量出血で寝込んでいたと聞いてはいた。
私はその時期、すでに大学を卒業し(就職にあぶれ非常勤だった)都内にいたので、実態を目にしてはいないのだが。
貧血でめまいを起こしながら運転し道端に嘔吐したり、出先のトイレで大量出血し、居合わせた女性に助けてもらったこともあるとも聞いた。
一人では婦人科のある病院まで辿り着けず、当時実家から専門学校へ通っていた妹が送迎するようなこともあったようだ。

筋腫はできる場所によっては出血量が凄まじい。私も実感している。
まず生理じゃない日がほとんどなくなる。
そしてひどい日はマンションの下のスーパーに買い物に行くのも不安な状態になる。
外出の予定はキャンセルせざるを得ない。電車に乗るなどとても考えられないからだ。

しかも残念なことに筋腫のできやすい女性は閉経が遅い。
女性ホルモンが活発なせいだ。
筋腫を取り除いても新たにできてしまうことが多いらしい。
母も再発組だったようだ。
子宮を残したいという思いが強かったのか、母は薬も使わずその状態を七年か八年継続し、閉経を待った。
副反応の強く出やすい人なのである。
自身の生活にひきつけてみても、考えられない過酷さだなと思う。
車生活の田舎であれば尚更だろう。

私は生理の重くなり始めた三年前に二つのホルモン剤を使っての治療を開始した。
一つは身体を閉経の状態に持って行く薬。生理を止め筋腫を小さくする効果がある。母の時代にはなかったものだ。
こちらの薬は大変効果的だったが、骨密度を下げるため六ヶ月以上継続することはできない決まりがある。
医師は一時的におばあちゃんになる薬と言った。
こうして筋腫を小さくした後に、身体を妊娠の状態に持っていき生理を止めるもう一つの薬に移行するのが、一般的な「閉経までの逃げ切り療法」だ。
こちらの薬は効けばそのまま閉経まで飲み続けることができる。
残念ながら私には「妊娠状態に持って行く薬」が効かなかった。
飲んでいても大量血に至ってしまう。
仕方なく骨密度を確認しながら再び「閉経の状態に持って行く薬」に戻り再チャレンジすることを繰り返した。
そうしているうち徐々に手の指に痛みが出るなど薬の副作用が強くなってきたという形だ。
骨密度を下げる危険を知りながらも「逃げ切り療法」にチャレンジし続けるか、筋腫、もしくは子宮を摘出するか。選択を迫られていた。

母が閉経を迎えたのは五十五歳。
決して同じようになるわけではないが、仮にその年齢になるまで「逃げ切り療法」に失敗し続けたとしたら、合計十回を超えてトライし続けなければならないことになる。
子宮以外の内臓で生理を起こす子宮内膜症を併発していると、生理のたびに手術の難易度も上がってしまう。
私は筋腫だけでなく子宮を摘出することを選択した。

手術はダビンチと呼ばれる医療ロボットを使って行う。
ロボット支援下子宮全摘術という。
腹に五箇所、八ミリの穴を開けてロボットのアームを入れ、靭帯を切り子宮を取り出す手術だ。
摘出には産道を使うため、傷が少なくて済むのが特徴らしい。
ホルモン状態を保つため、何事もなければ二つの卵巣は残す予定だ。
女性ホルモンの力を借りれば骨密度の回復も見込める。

傷が小さく済むとはいえ、内臓を切って出すのだからそれなりのリスクはある。
天狼院の講座の始まる前まで、私は子宮全摘出手術を受けた当事者や医療者の配信する動画やブログに釘付けになった。
そちらに根を詰めていたわけである。

術後ほとんどが熱とめまいがでることになるが、腸閉塞を防ぐために無理のない範囲で歩くこと。
ただし腹圧はかけないこと。
内臓の位置が落ち着いていられるように骨盤底筋群を意識して鍛えること。
ただし焦らないこと……

手術日が決まった時、講座提出日半ばではないか、入院準備もあるのに集中できるだろうかと悩んだ。
しかしこれより遅れると薬が切れて手術がやりにくくなってしまう(生理が復活し筋腫も増大するため)し、入院中に息子の学校が始まってしまう。
講座そのものと重ならずに済んだのだから、きっと時期的にも最適だったのだ。

どうせめまいになるとはいえ、手術の前に体調を整えておくことは何よりも大切だ。
添削をしてもらえるせっかくの機会。毎日どうにか記事をまとめて提出することにこだわってきたが、一旦区切りをつけて、深呼吸することとしよう

出せなくてもいい。
ちゃんとやれなくてもいい。
休むのも仕事のうち。
根を詰めるな。

人生には、急がば回れという時もある
文章も、術後のケアも、リラックスした方がうまくいくかもしれないしね。

《終わり》

 

 

***

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2025-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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