アイドル ~私たちは誰かの原動力~
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:安井 智世(ライティング・ゼミ5月コース)
無数の光。照らされる会場。黄色い歓声。その声で揺れる舞台。
その舞台に立つ私たちの希望。
アイドルって、本当に必要な存在なのだろうか。
そう思っていた私の考えは、あの日のライブで変わった。
***
「アイドル」「推し活」近年存在が当たり前になったこの言葉。
「私、ドルオタなんだよね」と言っても特段変な目で見られることはない。
むしろ今、世の中には「アイドル」と呼ばれる存在がはびこっていてアイドルそれぞれの個性もむなしく、「何が違うかわからない」なんて言われてしまうこともある。
それでもなぜ「アイドル」は常に存在するのか。
なぜ「アイドル」という存在が必要なのか。
「アイドル」とは何なのか。
***
嘘みたいに広がる青空の下。8月。私はワクワクでおぼつかない両手で髪を巻いていた。
今日は大好きなアイドルのLIVEの日。朝5時に起きて入念に準備をする。
8時40分家を出て横浜に向かう。朝の東海道線には日曜日にも関わらずスーツを着た人が何人か乗っていた。その中には私と同じグッズを持った人もいた。
横浜駅に着くとあっという間に周りは同じキーホルダーやうちわを持った人であふれていく。
グッズ販売の列は販売開始1時間前にも関わらず長蛇の列だった。列に並び、カバンから扇風機とスマホを取り出す。生ぬるい風を浴びながらグッズの一覧を確認して何を買うかをもう一度吟味する。
11時。販売開始時間になり列が進み始めたが思ったより列は長く、買い終わるまで4時間立ちっぱなしだった。
すでにパンパンになった足を引きずってお昼ご飯を食べに行く。
お昼ご飯を食べながらランダムグッズの開封をして、会場に戻り、推しのグッズへと交換できないかと相手を探す。SNS用の写真を撮って、ファンクラブ会員用のブースに行ったりしていたらあっという間に開場時間。
席の場所にドキドキしながら会場に入るとそこはもう別の世界だった。
なんとなく、会場が浮いているような気さえする。
ファンたちの期待と興奮と一種の緊張のようなものが空気に溶けて入り混じっていた。ペンライトを握りしめている人、コールをぶつぶつと唱えて最終確認している人、会場の音楽と一緒に体を動かす人。それぞれの過ごし方で、でも皆がもうすぐみられる景色を待ち望んでいた。
私もまた、それぞれに過ごすオタクを見ながら開演の時間を今か今かと待ち望んでいた。
もう何回腕の時計を確認して「あと何分だよ!」といったかわからない頃、会場の音楽が一気に大きくなった。会場のボルテージも一気に上がり歓声が上がる。
映像が流れる。待ち望んでいたアイドルの顔が映る。暗転。
次の瞬間。歓声がより大きくなる。
アイドルがステージ上に姿を現した。
生で見る彼女たちはどうしたって本物で、キラキラと輝いていた。
待ち望んでいた彼女たちは私たちの期待以上のステージを見せてくれた。
きっと何度も練習したのであろうカッコいいダンスブレイクに、細かい演出、LIVE限定のアレンジバージョンのパフォーマンス。どれもが格別ですべてが忘れられない宝物だった。
テレビ出演やアルバム活動やほかの舞台もあるという多忙さのアイドル。その証拠に11人中3人が体調不良で活動休止となった状態でのアリーナツアーだった。
3人が活動休止というのはアイドル界にとっても異例のことでどれだけ多忙だったのか、負担の大きさが伝わってきた。
私がLIVEに行ったアイドルに関わらず、多忙が原因の体調不良で活動休止してしまうアイドルは少なくない。
そこまでしてファンのため、見てくれる人の為に努力ができるアイドルという存在。
私は今回のLIVE中ずっと「アイドルって何だろう」と考えていた。
アイドルであるということ。
誰かの希望であること。
みんなの期待を背負うということ。
努力をひたすらにし続けなければいけないこと。
誰かの居場所になるということ。
美しくあるということ。
色んな事が頭をよぎったが私には経験がなくてどれもしっくりこなかった。
そんなことを考えていたらあっという間に楽しいときは終わりで、最後のあいさつになった。そして最後のあいさつで答えを知った。
何度もオーディションに参加しては惜しくもデビューに至らず、でもそれでも諦めずにデビューしたメンバーのあいさつだった。
「私はみんなが知っての通りオタクだから、みんながこうやって今日ここにいるみたいに推しのLIVEとかに行って、推しに会って、頑張ろうと思えたことが何度もあって、そのおかげで私は今日ここにアイドルとして立っている」
「私がそうであったように今日ここにいるみんなの頑張る動機になったりとか、夢に向かって頑張ろうとする原動力になったらいい」
会場のペンライトは彼女のメンバーカラーであるラベンダーに染まっていた。
誰もが彼女の言葉を一言一句拾おうと聞き入って、彼女のこれまでの汗と涙がにじむ努力を思っていた。
私も涙が止まらなかった。
「アイドル」ってきっと私たちの原動力になる。彼女たちが舞台で踊って、歌ってくれる。存在してくれる。それだけで私たちの“生きる理由”になる。
私も誰か一人でもいいから誰かの原動力になれたらいいな。
彼女たちの原動力に私たちだって力を貸したいな。
そう思っていた時、次のメンバーの言葉で私は最後の涙腺が決壊した。
「みんなのペンライトの光が私たちの原動力になっています」
ああ、私も彼女たちの力になれていた。
力をもらっているのは私たちだけかと思っていたけれど彼女たちも私たちの声援に、ペンライトの海に力をもらっていた。
誰かの原動力をもらうこと。
そして私たちも気づかないうちに誰かの人生の原動力になっていること。
そんなことを知って嬉しくなった幸せなLIVEだった。
誰かの光に照らされて、また誰かの光になれる。
アイドルとは、きっとそんな「光の連鎖」の中心にいる存在なのだ。
***
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