日本を離れた旅を通じて自身がどうありたいかを考えた
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:塩田健詞(ライティング・ゼミ5月コース)
「学生のうちにいっぱい遊んでおけよ。社会人になったら遊べなくなるんだから。あ、そうだ旅行は行っとけよ。特に海外は」
大学生の頃、社会人と話す機会があり、進路を意識して「大学生のうちに何を準備しておけばいいか」とよく尋ねていた時期があった。返ってくる答えは決まって、「社会人になるととにかく時間がなくなる。だから大学生のうちは時間をかけてできることを思いきりやった方がいい」というものだった。なるほど、時間を自由に使えることこそが学生の特権であり、「大学生は人生の夏休み」という言葉もそこから来るのだろう。
その代表例が海外旅行だ。確かに韓国や台湾のように日本から2、3時間で行ける場所なら、工夫すれば1泊2日でも楽しめる。だが、それ以外の国となるとそうはいかない。有給休暇の取得率を企業のPRに掲げるくらい、日本の社会人にとって「休みを取って旅行に行く」ことは大きなハードルなのだろう。
そんな中、社会人になってからの私は、幸運にも長期の休みを取り、海外に行く機会を得ることができた。
渡航先はネパール。6年ぶりの海外旅行であり、社会人になってからは初めての長期滞在だった。移動時間も含めて8日間――これだけ長く仕事を離れ、しかも日本から遠く離れるのは久しぶりのことだ。旅立つ前から「今回はきっと自分を考える時間になる」と直感していたが、現地で過ごした日々は想像以上に大きな刺激と気づきをもたらした。
カトマンズの街並み、混雑するバス、ホテルでの何気ない朝食。どれもが新鮮で、日本の日常の延長では味わえない感覚にあふれていた。特に印象的だったのは、英語が拙くても臆せず話しかけてくる現地人の姿である。自分が同じ年齢の頃、果たしてこんなに自信を持って外国人に接することができただろうか――そう自問すると、これまでの歩みや、これからどう生きたいのかを考えざるを得なかった。
さらに、現地ガイドから直接聞いた人生観も胸に残っている。ネパールでは政治の腐敗により教育やインフラに十分な投資がなされず、多くの人が国内だけでは生計を立てられない。そのため、多くの若者が外国へ出稼ぎに行くのだという。日本ではインドネパール料理店で働く人をよく見かけるが、彼らの背景にこうした事情があるのだと知った。
滞在中、特に印象に残ったのは「時間の流れの違い」だった。日本では、何をするにも効率や成果を意識するのが当たり前だ。会議の進行も、電車の運行も、食事の提供も、分刻みで予定通りに進むことが求められる。しかし、ネパールではそうはいかない。バスは予定通りに来ないし、レストランで注文した料理も気長に待たなければならない。最初は戸惑ったが、次第に「予定通りにいかないことが当たり前」の空気に、自分も自然と馴染んでいった。
そんな中で気づいたのは、人々がその場その場を楽しんでいる姿だ。隣の席で遅れている料理を待ちながら笑い合う家族。混雑したバスの中でも音楽を口ずさむ若者たち。彼らの様子は、自分の中にずっとあった「将来に備えるために今を犠牲にする」という生き方を振り返らせてくれた。効率や成果ばかりを追い求めてきた自分にとって、その姿はまぶしく映った。
もちろん、海外旅行には不便も多い。言葉が通じない、交通が乱れる、食事が合わない。だが、むしろその「日本では当たり前に解決されている不便さ」こそが、自分の考え方を揺さぶってくれるのだと思う。
日本での旅行も素晴らしい体験だ。しかし、海外だからこそ得られるものがある。それは「当たり前を疑う」という感覚だ。私たちは思っている以上に「日本人としての常識」に浸っている。その殻を少しでも破ってみると、日常の見え方ががらりと変わるのだと実感した。
帰国後、ふとした瞬間にネパールでの光景がよみがえる。自分の人生をどんなリズムで生きたいのか、何を大切にして働きたいのか。日本を離れることで、かえって日本での自分の在り方を問い直せた。海外に行くことは、単なる非日常の体験ではなく、自分自身を映す鏡のような役割を果たしてくれるのだと実感した。異国で得た気づきは、帰国後の生活の中でもふとした判断や行動に影響し、自分の軸を確認する小さな支えになっている。
だからこそ提案したい。たまには海外に出てみるのはどうだろうか。観光地を巡るだけでも、現地の人と話すだけでもいい。ほんの少し日常を離れることで、「自分はどうありたいのか」を見つめ直す機会になる。慌ただしい日常から距離を置くからこそ見えるものがある。旅は贅沢に思えるかもしれないが、そこで得られる視点は日常生活を支える力にもなる。私にとってネパールがそうであったように、あなたにとっての旅先が、きっと新しい視点を与えてくれるはずだ。
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