私の時給はおいくら? ただ、Macbook AIRが欲しかっただけなのに……。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:藤原 宏輝(ライティング・ゼミ5月コース)
「あのお、あとどのくらい時間かかりますか?」
私は普段からイライラする事なんてほぼないが、さすがにこの時ばかりは時計をチラ見しイラっとして、思わずショップ店員さんに声を荒げて聞いた。
半年ほど前に修理したノートPCが、とうとう悲鳴を上げた。
「まただ。もう、限界かなあ」深夜のオフィスで一人、思わず声が出てしまった。これが、ことの始まりだった。
何年かに一度、必ず当たり前のように、寿命なのか、なぜか?
会社のあらゆるパソコンが1つ、また1つ。
どこか悪くなったり、壊れたり、電源が入らなくなったり、
「今回はWindowsのサポート終了も近いし」と、さらにひとりごとの私。
「私のパソコン人生なんて会社の備品だし、たいしたこだわりもないし」
そう言って20年以上、自分の意思でパソコンを選んだことがなかった。
会社のデスクトップのパソコンも、出張用の軽いノート型パソコンも、スマホも。
調子が悪くなれば、取引先業者の営業担当さんが来てくれ、早急に修理して下さり、時には
「これは、新しいパソコンにした方が良さそうですね。新しいものにしましょうか? すぐにお持ちしますね」と
「はい、よろしくお願いします」と私はうなずくだけだった。
これまで値段も性能も、ほぼ知らないままパソコンは他人任せの人生を歩んできた。
そんな私が初めて色々と調べ、周りの反応や意見もいただき、
「MacBook Air、買ってみようかな」と思い立ったのだ。
理由は単純で、画像や動画を最近扱うことが増えたから。という事もあるのだが、周りに「Macいいよ」と勧められていたし、なによりちょっとカッコいい気がした。
ところが、いつもの業者さんに相談すると、
「Macは当社では取り扱ってないです。やっぱりWindowsの方が安心ですし、使い勝手がいいと思いますよ」
と、いつものようにWindowsを勧められる。
ここで、私はふと立ち止まった。
いつも通り、また“お任せ”で済ませてしまっていいのか?
初めて「少し、考えてみます」と伝え、ふたつ返事で営業担当の方の言う事を聞かなかった。
その後「今回は、自分で見に行ってみよう」と自分の目で実際に確かめる事にした。
そこでまず、Apple Storeにを予約をしようと試みたが、お盆前だったからなのか?
希望の時間に予約が取れそうになく、早々に断念。
それでも諦めなかった私は、ついに未知の世界である家電量販店へ、1人で足を踏み入れた。
そう、生まれて初めての単独突撃だった。
緊張しドキドキしながら入った店内で、Appleコーナーのスタッフはとても丁寧に対応してくれたので、少しホッとしたのだった。
MacBook Airのそれぞれの機能の違いやスペック、使い心地まで、まるで彼女は魔法使いのように使いこなし、説明してくれた。
そして私はついに、購入を決意。再び、週明けに一人で家電量販店へ急いだ。
「MacBook、これに決めました」と言うと、女性スタッフがニコリ。と笑顔で、
「かしこまりました、先日ご覧頂いたタイプのものですね。早速、お手続きさせて頂きます」
この一言で、私はお会計を済ませて、さっさと会社に戻ろうとした。というか、購入したらすぐに帰れると思っていた。すると、彼女は
「まず、こちらにおかけください」
とお席に案内してくれたので、丁寧な対応だなと思った矢先、
「今回のご購入は、今なら携帯会社のキャンペーンで、こちらのMacBook Air がさらに1万円引きになります」と、耳寄り情報をくれた。
「えっ、1万円引き!?」
ちょうど、何年も使ったガラケーをそろそろ替えないと行けないし。と思っていたタイミングでもあったので、とてもお得な気持ちになった。
それが、まさかMacBookの購入と一緒に携帯の機種変更までできるなんて、ショップに行く手間も省けてよかった。
お得! という言葉に心が揺れた。私はまるで何かに背中を押されたような気持ちで、
「では、携帯の機種変更も、一緒にお願いします!」
と張り切って答えた。
親切なスタッフさんの案内で、結果的に “1万円の値引き”でガラケーからの機種変更は1円で可能となった。
しかし、ここからが私の未体験ゾーンに突入し、想像を絶するほどの時間を要して、大変な事になっていくのだ。という事は、この時に知るはずもなかった。
「時間かお金、どっちが大事?」
まさに、現代を生きる私たちが常に、自問する問いだ。
でも、今回はその葛藤を経験したことで「自分の価値観」や「時間の尊さ」に、改めて向き合う事ができた。
物事には、お金をかける価値があるものと、時間をかける価値があるものがある。
「1万円、お得なら!」それが、始まりだった。
手続きに入る前に、どのくらい時間がかかるか? を確認したのだが、
「少々、お時間いただきます」と言われた。
少々という単語が、その時は明確に把握出来ていなかったのだ。
MacBookの購入からガラケーの機種変更に移行し、席を移動、案内、書類、確認……。
「はい、こちらへ」「次はあちらへ」「少々お待ちください」
私は何度も場所を移され、担当者が何人も代わり、どこかの役所の手続きかと思うほど、あちこちへ。
ふと時計を見ると、1時間半経過。
「あら、こんなに時間がかかるのかしら。私はただ、MacBookを買いに来ただけなのに……」
私の胸に静かな不安と苛立ちが募る。
お客様との待ち合わせにも遅れそうになり、思わず口を開いた。
「あと、どれくらい時間がかかりますか?」と聞いてみたが、私の声が届かなかったのか?
誰も答えてくれなかった。
「あのお、あとどのくらい時間かかりますか?」
私は普段からイライラする事なんてほぼないが、さすがにこの時ばかりは思わずショップ店員さんに声を荒げて聞いた。
すると、やっと携帯ショップのスタッフさんから
「あと、1時間ほどですね」と申し訳なさそうに答えが返ってきた。
私の中の何かが、音を立てて崩れた。
「えっ、まだこれから1時間ですかっ! では、夕方にまた来ます!」
とさらに、声を荒げて半ば強引に手続きを一旦切り上げようとしたが「ここまでは」と先方も必死だ。
それでも、その言葉を振り切って仕事に戻った。
夕方、再びお店に戻るとその後もさらに2時間近くかかり、ようやく残りの手続きと支払いが完了。
MacBook AIRを買うだけですぐに終わるはずが、スマホの契約と手続きで何時間もかけて、あちこちのカウンターを行ったり来たり。その全てが、“1万円値引き”のためだった。
私はこの出来事から、時間の大切さを思い知ったのだ。
『1万円お値引き』にトータルで3時間30分以上を費やし、仕事にも影響した。
時給にしたら、1万円お得どころの話ではないかも……。
MacBookとスマホを手にした時には、私はとっくに疲労困憊だった。
「1万円値引きのために、3時間以上もかけて何やってんだか、私……」
思わず笑ってしまった。きっと、これが“自分で選んだ”という証なんだと思う。
MacBookの起動音が、今日も静かに響いている。
画面を開けば、新しい世界が待っている。
今回一人で家電量販店に行く事を経験して、私の中の“ちょっと頼もしい私”が、ここに座っている。
「Macで、新しい一歩を踏み出した」この体験は“ただの買い物”ではなく、長年のスタイルを見直す勇気や自分で選ぶ強さ「選ぶ力を持った私」への成長かもしれないと感じた。
***
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