メディアグランプリ

「−1」の裏にあるもの 私たちは生きることをサボっていない!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:星空 志音(ライティング・ゼミ5月コース)

 

 

 

「あぁ、また忘れてしまった……」

「あぁ、また失ってしまった……」

また大事なものが手からこぼれ落ちていく。キャパシティのいう名の箱は無情にも簡単には大きくなってくれず、また今日も何かを失ってしまった。

何かがこぼれ落ちる度に同時になくしていたのは、自己肯定感。

どんどん目減りしていく自己肯定感という数字が0になった時……

私は、うつ病になった。

 

 

自分から何かの要素がなくなるということは、怖いことだ。

お金や地位、人間関係、せっかく築き上げてきたものを失いたいだなんて思う人はどこにもいないだろう。それが時間をかけて大切に積み重ねてきたものなら、なおさらだ。

特に完璧主義でネガティブな性格だった私は、わずか1でも失くすことが許せなくて、その失くした1をずっと引きずり悲観してばかりだった。

 

私にとって「−1=恐怖」だった。

 

 

その思考は些細なことでも発動した。

それは、携帯ゲームのミッションをクリアし忘れたという小さなことですら、発動した。冷静に考えれば、たかがゲーム。それを忘れたぐらいどうってことないのだが、ひどく落ち込んだ。たったそれだけのことでもきちんとこなせない自分はダメな人間なんだと、自分を叱責した。

以前の私はそうだった。……そう、以前は。

 

 

今の私も相変わらずゲームのミッションを忘れることはよくある。その点は昔と変わっていない。ただ今の私は落ち込まなくなった。それは家族の些細な一言がきっかけだった。

 

「あー、ゲームのミッション忘れてたー!」と私のいつもの声。

そんな言葉を聞きつけた家族。きっと呆れているに違いない。どんな言葉が返ってくるのか……。返ってきた言葉は意外なものだった。

 

『その分執筆を頑張っていたじゃん! えらいよ!』

 

その日、私は執筆の締め切りが迫り、頭の中はそのことでいっぱいだった。執筆に夢中になるがあまり、ゲームのことは忘れていたのだ。

「あっ、そうか。私頑張っていたのか……」

失ったことに思考が向くがあまり、家族に指摘されるまで、何かを頑張っていたということを逆に忘れてしまっていた。

私はゲームのミッションを忘れるという「−1」の方に注目していたが、家族は執筆をしていたという「+1」の方に注目してくれたのだ。

家族の言葉でようやく気づく。

私は手に入れたもの「+1」より、失ったもの「−1」に目がいきがちな性格だったのだ。

 

 

それ以来、何かができなかったとしても、「そのことができなかった分、他の大切なことをしていたんだ」と思うことができるようになった。

例えば、仕事や家事や勉強などに忙しく何かを手にできなかった場合、失った分を未来に向けて自分を磨く時間に充てられたんだと思う。

もちろん全部拾えたら一番いい。でも手からこぼれたものがあったって、その間の自分は生きることをサボっていたわけじゃないんだ。そう思ったら楽になった。

 

じゃあ、仕事や家事や勉強など出来ずに、ただ横になっていた日はダメなのか? 

以前の私ならきっとひどく自分を叱責した。でもそれだって、体や心の疲れをとるために自分を大事にしていたんだと思えば、生きることをサボっていたことにはならないと思う。

 

うつ病の時、お風呂にはいることやトイレに行くことすら辛い時があった。だから思う。

起きただけでえらい。

息をしているだけでえらい。

寝付く時に命があったということは、ご飯を食べたりお風呂に入ったりトイレに行ったりしたんだと思う。

ご飯を食べたということは、自分で作ったり、買いに行ったり、そのために必要なお金を稼いだりしたということだろう。

どんなに面倒でも起き上がってお風呂やトイレに行ったんだろう。

 

生きるために頑張っているじゃないか! 

私たちは生きることをサボっていない! 

 

何かが「こぼれ落ちた」んじゃない。

生きるために、何かを守るために、「こぼれ落とした」んだ。

 

 

「−1」は時に幸せの兆しだったりする。

例えば、音楽ライブ中に飛んでくる金テープ。2つ取れたものを独り占めしないで取れなかった人に1つあげれば、相手も喜んでくれるし、その人の笑顔を見られてこちらも幸せになる。一旦自分の手元から1つなくなるけど、それ以上に幸せをいただく。「2−1=3」になる。「−1」が「+1」に変わる瞬間だ。

1減ったということは、誰かに1渡せたということ。

自分が何かを手にする代わりに、誰かに何かを残せた。そうすることで結果自分も幸せになっている。

「−1」って悪くない。

 

 

こうして考えれば「−1=恐怖」ではないのかもしれない。

長所と短所が表裏一体なように、「−1」と「+1」は表裏一体だ。「−1」が起こっているところでは同時に「+1」が起こっていることが多い。

 

「何を手放したかではなく、それを手放してでも私は何を守ろうとしたのか?」

こぼれ落とした方より、手にできた方を見つめること。

つまり「−1」ではなく「+1」の方を見てあげること。

これが、心が楽になる公式になった。

 

きっと真面目な人ほど「−1」を見つめて生きていると思う。

「−1」の裏で気づかれずにいる「+1」に気づいてあげてほしい。

きっとあなたは誰かに「+1」を残せていると思うよ。

 


***

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2025-08-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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