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信号は待っていればいずれ変わる

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井口敦子(ライティング・ゼミ5月コース)

 

私の日常は「自転車で始まり自転車で終わる」と言っていいほど、毎日自転車が欠かせない。通勤・買い物・実家・お花見……すべて自転車で移動している。2年前に電動自転車を購入してからはなおさら。良く言えば、大方、自転車で移動できる距離ということかもしれない。

母が職場近くの病院に入院したときも、電動自転車があったから、休み時間や退勤後に立ち寄れて、本当にありがたいと思った。

もう電動自転車様様である。

 

そのため、私はこの電動自転車での移動時間に慣れての生活を送っている。

自転車に乗っている人であれば、よくあると思うのだが、車道も歩道もどちらも走行するのではないのだろうか。徐々に規制されてきているが、どちらも行き来ができるというのが自転車の最強なところだと私は思っている。

道によっては、明らかに歩道は人通りが多くて自転車が邪魔になってしまうところ、ある場所では車道は路駐している車が多くて走行しづらかったり、もしくは車の車線変更が激しくて車道に出るのが怖いところなど……その状況に応じて自転車で通る場所を変えている。

 

そして急いでいるとき……歩道と車道を行き来しながら、信号を回避してしまう。罪悪感を持ちながらも、そうすることで信号の持ち時間が短縮される。これは決していいことではないだろうが、そうやって信号を避けて走行することに慣れている人は結構いると思う。

正直、出勤が遅刻ギリギリになってしまうときは、そうやってうまく間に合わせてきた自分がいる。

毎日のことなので、どこの信号でひっかかるかわかる。それを効率よく走行するために、赤信号になってしまったら車道から歩道に乗り上げて、少し行ったらまた車道に戻って……という乗り方をしてきた。そうすると、うまく次の信号に間に合うのだ。

そして、最短時間で行けることに慣れてしまうと、人は不思議とそれで計算するようになる。本来ゆっくり行けば15分かかるところを、急げば10分で着く。そうすると「最悪10分で行ける」と計算して行動するようになるのだ。

 

でも、そうやってあくせくしている自分にどこか疲れを感じてきたのだった。

ノンストップで目的地に着くことはできるが、そうやっていつも急いでいる自分。なんだかしんどい。そして危ない。そんな余裕のない自分が嫌だった。

 

あるとき、私は思い切って信号を待つことにした。

待っているというのは時間が長く感じられる。

でもこれが普通なんだ。

改めてそう思った時に、自分は随分と急いだ時間の中で生活をしているのだと気づいた。

 

そして信号は青になった。

そう、待っていれば、いずれは青に変わって渡ることができる。皆こうやって信号を渡っているのだ。こんな当たり前のことに感動している自分がいて驚いた。

でも、それはどこか、あくせくしてきた自分を振り返らせてくれた一瞬でもあったように思う。

信号だけではなく、待っていればいずれものごとは変わっていく。不思議とそんな気持ちも感じさせてくれた瞬間だった。常日頃、母の介護を始め、いろいろな物事の先回りをしたり、深く考えたりして、効率や現実だけをみてしまっていたのかもしれない。だから、待つということよりも先のこと先のことで頭がいっぱいだったのだと思う。そうした自分に疲れていたところだったのだと思った。

いままでどちらかというと、不安を感じるよりは、先に行動した方が良いと思ってやってきた。何でも自分で考えて、自分で何とかしてきた気がしていた。でも、そうやって自分でコントロールできることばかりではない。物事って自分が突っ走ることだけじゃないんだ。

 

少し流れに任せてみるということ。なにかを誰かに委ねること、まあいっかと放っておくこと、急がなくてもいいこと、それも自分にとって必要な間合いだと思った。そして、物事をこなすだけでなく、自分の感情にも目を向けていくこと。

 

たかが信号。だけれど、それを待つという気持ちの余裕さえ、私には大きなことだった。いや、それだけ、今、余裕のない自分なのだ。そこに気付かされてよかったと思う。このご時世、確かに「待つ」という感覚は保ちにくい。情報がこれだけ身近で、物事が進みやすい時代に「待つ意味」を問われることもあるかもしれない。だけれど、「待てる」ことの意味は大きいと感じている。「あせらない」は私にとって人生の大きな課題かもしれない。

もちろん、交通ルールを守るのは当たりまえのこと。事故を起こしてはいけない。でも、それだけではない何かを感じさせてくれたきっかけをくれたことに感謝している。

 

***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2025-09-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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