メディアグランプリ

偽りの影と、SNSという居場所


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:嘉藤恵(ライティング・ゼミ7月コース)

 

ある日、突然メッセージが届きました。
「あなたの偽アカウントが出回っているよ」と。

調べてみると、確かに私の名前と写真を使ったアカウントが存在していたのです。どうやら中国のサーバーから作られていたようでした。インスタグラムに報告しようとした時には、すでに削除されていましたが、不安と不快感はしばらく残りました。

「偽物をつくられるなんて、有名人の仲間入りみたいだね」……そう冗談めかして言ってくれた友人もいました。でも、実際には笑い話だけでは済みません。有名人でなくてもSNSを使っている限り、誰にでも起こり得ることだと実感しました。

偽アカウントや乗っ取りは、もはや珍しくなくなりました。私の友人のひとりは実際にアカウントを奪われ、結局削除するしかありませんでした。「もうSNSはこりごりだ」とメールが届いたとき、他人事ではないと感じました。

私は、人と直接会ったり電話で話したりするのが少し苦手です。その代わり、SNSが私にとって人とのつながりを保つ場になっています。本当は「使わない方がいい」と頭では思うのに、ときどき寂しさに押されて、ついSNSに戻ってしまうのです。

そんな中、私が体験したのは「ロマンス詐欺」の入り口のような出来事でした。

「日本が好き。あなたと友達になりたい」……そんなメッセージが、香港から、まるでセレブのように見える美しい女性のアカウントから届いたのです。もちろん詐欺だろうとわかっていました。けれど「どんな手口で近づいてくるのか」を知りたい気持ちが勝ち、少し対応してしまいました。

やり取りの流れは驚くほどパターン化されています。最初は「日本に行きたいから友達になってほしい」という無害な会話。しかし徐々に、年齢や職業、住んでいる場所を細かく尋ねられ、「もっと話したいからLINEに移ろう」と誘導されるのです。翻訳ソフトの精度が上がった今、日本語のやり取りも違和感がなく、まるで本当に日本語が話せる相手と交流しているように錯覚させられます。

実際、私の知り合いの女性も被害に遭いました。外国語が得意だったことが逆に「あの人なら本物かも」と信じる要因になったのかもしれません。でも本当の理由は、結婚願望が強く、きっと孤独だっのだと思います。寂しさを埋めてくれる存在を求めるあまり、心を開いてしまったのでしょう。

警察庁によると、2024年の国内で認知されたSNS型ロマンス詐欺は3,824件。前年の倍以上に増え、被害額は400億円を超えたそうです。この数字は、単なる統計ではなく、ひとりひとりの心の隙間を突かれた現実の結果なのです。

騙される原因は何か?

ロマンス詐欺に巻き込まれる原因は、大きく分けて4つあります。

  1. 恋愛感情による判断力の低下
     「愛されている」「信頼されている」と思い込むことで冷静さを失ってしまう。
  2. 孤独感や承認欲求の利用
     「あなたは特別」とささやかれると、必要とされたい気持ちが刺激される。
  3. 肩書きや設定への憧れ
     医師や軍人、未亡人で投資家など「普段出会えない相手」との関わりに夢を見てしまう。
  4. 段階的な信頼構築
     数週間〜数か月をかけて信頼を得てから金銭を要求する。最初は少額でも、次第に高額になる。

こうして整理してみると、誰でも心の隙を突かれる可能性があると分かります。

防ぐためにできること

では、どうしたら防げるのでしょうか。

  • 第三者に相談する
     「秘密にして」と言われたら要注意。冷静な視点をくれる人に話してみましょう。
  • 身元を確認する
     プロフィール写真を画像検索する、ビデオ通話を試みる、公的情報で裏付けを取る。
  • お金の話が出たら即警戒
     医療費、渡航費、投資……名目はどうであれ送金はNGです。
  • 感情を揺さぶる話に注意
     「病気の子どもがいる」「戦地で危険な任務中」などは典型的なパターンです。

 

最後に

SNSは、私にとって人との距離を補ってくれる大切な道具です。でも、その裏には偽アカウントや詐欺のリスクが常に潜んでいます。

「使わない方が安全」……そうかもしれません。けれど、現実的には完全に離れられない人も多いでしょう。だからこそ大切なのは、疑う心と冷静さを持ち続けること。相手の言葉に心が揺れたときこそ、一歩下がって考える。そして誰かに相談する。その小さな行動が、自分を守る大きな力になります。

SNSは光にも影にもなり得る道具です。大事なのは「使い方次第」。そして忘れてほしくないのは、被害に遭ったからといって「弱い人間」なのではないということ。むしろ、人とのつながりを求める気持ちは誰にでもある自然なものです。

だからこそ、もしあなたのもとに「特別な言葉」をささやく誰かが現れたら……一度立ち止まってください。その声は本当にあなたを想っているのか。それとも、ただの偽りの影なのか。

見極める力を持つこと。それが、安心してSNSを使い続けるための第一歩になるのです。

 

 

 

 

***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00


 

2025-09-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事