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‘湯加減の人生論’、おばあちゃまの教えと『養生訓』の言葉に導かれて《インフィニティ♾️リーディング【養生訓】体験記》 


*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤原 宏輝(ハイパフォーマンス・ライティング)


目次
はじめに
1.おばあちゃまの言葉 “「ほどよく生きる」知恵”
2.貝原益軒と『養生訓』 “「病を治すより、生を養う」思想”
3.現代に生きる“養生”のかたち  “自分をマネジメントする力”
4.「人を幸せにする」  “プロデューサーとしての養生哲学”
5.おばあちゃまが残してくれた “生き方の羅針盤”
あとがき

 

はじめに


「コロナを発症しました」——お客様から突然の連絡が入った。
「うわっ、みんな大丈夫!?」
慌てて検査キットで確認すると、私も担当プランナーも全員‘陰性’。胸をなでおろした。

しかし、その安心も束の間。
朝晩の冷え込みや睡眠不足のせいか、身体の節々が痛み始めた。帰宅するなり、リビングのソファに倒れ込む。

深夜二時。夢の中に、おばあちゃまが現れた。
目を覚ますと、汗で髪が額に張りついている。体温計の数字は38.6度。
「どんな事も“やり過ぎ”はいかんのよ」
夢の中で聞こえたその声に、子どもの頃の記憶が蘇った。

高熱が二日間続いたあと、私はふと感じた。
「生き方を見直すための時間をもらったのかもしれない」と。

そんな折、天狼院書店の読書会「インフィニティ・リーディング」で、貝原益軒の『養生訓』に出会うことになった。

 

1. おばあちゃまの言葉 ——「ほどよく生きる」知恵


「腹八分目に医者いらず、風邪をひいたら焼き梅干し茶」
そう言って笑っていたおばあちゃま。私は思わず焼き梅干し茶を淹れた。

「過ぎたるは及ばざるがごとしやで」
幼い頃、意味も分からず聞いていたその口癖。
「食べすぎたらお腹が痛くなる。言いすぎたらケンカになる。がんばりすぎても、しんどくなる。なんでも“過ぎたら”いかんのや。熱すぎず、ぬるすぎず、ちょうどええ湯加減で生きなさい」

その“湯加減の人生論”は、いつしか私の生き方の軸になっていた。

貝原益軒の『養生訓』にある「病を治すより、生を養う」という言葉。
健康とは、身体を直すことではなく、日々の“ほどよさ”を積み重ねること。
おばあちゃまの生き方は、まさにその実践だった。

身体が弱く、病院通いが続いた幼い私に、おばあちゃまはよく言った。
「土のにおいを嗅ぎなさい。命のにおいやから」
庭で土をいじる小さな私の手を包みながら、
「命ってね、“生きること”より“生かすこと”の方が難しいんよ」
「綺麗な花になるより、綺麗な花を咲かせる土になりなさい」

おばあちゃまは、“見えないところを耕す人の尊さ”を、手のぬくもりで教えてくれた。

 

2. 貝原益軒と『養生訓』 ——「病を治すより、生を養う」思想

‘病を治すより、生を養う’。‘欲を抑え、心を整え、自然の理に沿って生きる’。
その言葉を大人になって読み、私は震えた。

益軒は江戸時代の学者で、病弱ながら八十を超えても健在だった。
彼の“養生”は単なる健康法ではなく「生き方のマネジメント」だった。

“怒りを抑え、欲を整え、節度を守る”
それは身体のためではなく、心の気を乱さぬため。

おばあちゃまも言っていた。
「欲を抑えるのは我慢やない。心を軽くすることなんよ」

『養生訓』の中の言葉、「怒りは気を損じ、欲は身を傷つける」。
忙しさの中で心が擦り切れそうな時、ふとおばあちゃまの声が蘇る。
「気をつけなさい。“忙しい”って字は“心を亡くす”って書くやろ」

益軒の哲学を、おばあちゃまは生き方として体現していた。
「生を養う」とは、自分の生活の中に“心の静けさ”を取り戻すこと。
それは現代の“セルフマネジメント”の原点でもある。

 

3. 現代に生きる“養生” —— 自分をマネジメントする力


現代社会はスピードと効率がすべて。だが、どんなにテクノロジーが進化しても、人の心は変わらない。

「忙しい」という字は「心を亡くす」。
心を亡くしたままのマネジメントは、やがて身体をも壊す。

これからのリーダーに必要なのは、“養生力”だ。
それは「休む力」であり、「緩める勇気」であり、「整える技術」。

健康経営、セルフケア、メンタルマネジメント。これらすべての源流は、“養生”の思想にある。

おばあちゃまの言葉を借りれば、「心と身体のリソース管理」。
エネルギーを無駄にせず、季節や状況に応じて“ほどよく”生きる。
それは、現代の経営やリーダーシップの根本にも通じている。

 

4. 「人を幸せにする」 —— プロデューサーとしての養生哲学


「綺麗な花になるより、綺麗な花を咲かせる土になりなさい」
おばあちゃまのこの言葉は、ブライダル・プロデュースという私の仕事に息づいている。

結婚式の現場では、チームの連携も感情の温度も“湯加減”が命。
焦ればミスが生まれ、冷めれば情熱が消える。
「熱すぎず、ぬるすぎず、ちょうどええ」その言葉が、現場で何度も蘇る。

「人を幸せにしたいなら、自分の心を温かく保ちなさい」
これは『養生訓』の“中庸”の精神そのもの。

自分の心を整えることが、チームを導く第一歩。マネジメントとは、人の“心の温度”を調律すること。

体をいたわり、心を整え、誰かを想う。
それが“生を養う”という生き方であり、プロデューサーとしての根本哲学である。

 

5. おばあちゃまが残してくれた“生き方の羅針盤”


焼き梅干しの香り、庭の土のぬくもり。
おばあちゃまの教えは、格言ではなく“生き方の哲学”だった。

「過ぎたるは及ばざるがごとし」「欲を持ちすぎると身体が曇る」
「腹八分目が心のゆとり八分目」「夜更かしは運を削る」
「忙しいって字は心を亡くすって書くやろ」
まるで『養生訓』のような日常の知恵。

その言葉たちは、やがて“生を養う”という静かな強さに変わった。

『養生訓』を書いた貝原益軒は八十三歳。
人が成熟するとは、知識を積むことではなく、
「命を大切にするとは何か」を、心で悟ることなのだろう。

 

あとがき


高熱で何もできず、ただ横たわっていた時間。
思考も感情も削ぎ落とされ、残ったのは「生きている」という感覚だけだった。

仕事で2000組以上もの“人生の節目”を支えてきた私が、ようやく自分の身体という“命の現場”に耳を傾けた瞬間だった。

天狼院の「インフィニティ♾️リーディング」で学んだ『養生訓』には、
「心静かに、己を養う」ことの尊さが繰り返し書かれている。
それは健康法ではなく、“生き方を整える知恵”だった。

忙しさの中で見落としていた小さな不調や心の違和感。
それを「大丈夫」と覆い隠してきた私に、身体が静かに警鐘を鳴らしてくれたのだと思う。

本当の“養生”とは、笑顔の奥の小さな声を見逃さず、自分の心と身体に「ありがとう」と言える時間を持つこと。

病み上がりの朝、光がやさしく差し込んだ部屋の中で思った。
「また新しい今日を丁寧に始めてみよう。欲を抑え、心を整え、自然の理に沿って、そして誰かを思って生きよう」と。

『養生訓』を読み、高熱を出し、夢におばあちゃまが現れ、そのままの流れで学んだ“インフィニティ♾️リーディング”。
あの出来事のひとつひとつが、線でつながった気がした。

それは、“生を養う”という言葉の意味を、人生を通してようやく体で理解できた瞬間だった。


《終わり》

 

 

***

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2025-10-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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