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「気にしすぎる人」が、実は世界を救っている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山原みさえ (ライティング・ゼミ11月開講コース)

 

「また、気にしすぎだよ」その一言が、どれほど多くの人を傷つけてきたことでしょう。

通勤電車の冷房の音が頭に響いて疲れ果てる。上司の「おはよう」の声のトーンで、今日の機嫌を察知してしまう。友達が送ってきたLINEの絵文字一つで、「何か怒らせたかな」と一日中考え込む。カフェで隣の席の会話が気になって、本の一行も頭に入らない。こんな経験はありませんか?

実は、5人に1人がこうした「敏感すぎる」感覚を持って生きています。それがHSP(Highly Sensitive Person)、日本語で「繊細さん」と呼ばれる気質です。これは性格の問題でも、メンタルの弱さでもありません。脳の情報処理の仕方が、生まれつき少し違うだけなのです。

1990年代にアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が発見したこの気質(HSP)は、長い間「神経質」「打たれ弱い」と誤解されてきました。しかし、最新の脳科学研究で分かってきたのは、HSPの脳は普通の人より深く、繊細に情報を処理しているということ。つまり、HSPの人は「弱い」のではなく、「高性能すぎる」のです。

考えてみてください。あなたの職場に、誰も気づかないような小さなミスを見つける人はいませんか? 会議で誰も言わない「なんとなくの違和感」を的確に指摘する人は? 家族の体調不良に、本人が気づく前に気づいてしまう人は? その人はHSPかもしれません。

HSPの脳は、数ミリのズレ、声の微妙なトーンの変化、空気の重さといった、ほとんどの人が気づかない情報をキャッチします。そして、その情報を瞬時に分析し、「何かがおかしい」というアラートを出すのです。これは、人類が生き延びるために進化の過程で獲得した、重要な能力だと言われています。

実際にHSPの人は、多くの分野で社会に貢献しています。例えば、医療現場では、患者の小さな異変に気づく看護師。デザイン業界では、ユーザーの使いにくさを察知するクリエイター。教育現場では、子どもの心の変化を見逃さない教師など……。HSPの繊細なセンサーが、見過ごされそうな問題を見つけ、大きな事故や不幸を未然に防いでいるのです。

しかし、その代償は小さくありません。HSPの人は、普通の人が何とも思わない刺激で疲弊してしまいます。週末の買い物で人混みに行けば、夕方にはぐったりし、飲み会の騒がしさで、翌日まで疲れが残る。相手の何気ない一言を一晩中反芻してしまう。「どうして私は、こんなに疲れやすいんだろう」「もっと強くならなきゃ」と自分を責める人も少なくありません。

問題はHSP本人ではなく、社会の側にあるのかもしれません。効率とスピードを重視し、常に刺激にあふれた現代社会は、HSPの人にとって過酷な環境です。「気にしすぎ」「考えすぎ」と言われ続けることで、自分の才能を欠点だと思い込んでしまいます。

想像してみてください。もし世界にHSPの人がいなかったら……。誰も細部に気づかず、誰も他人の痛みに寄り添わず、誰も深く考えない世界……。それは、おそらく殺伐とした、味気ない世界なのではないでしょうか。美しい音楽も、繊細な芸術も、心に響く物語も生まれなかったかもしれません。

今、あなたの周りにいる「気にしすぎる人」は、実は世界を豊かにしている人です。HSPの人は、あなたが気づかない美しさを見つけ、あなたが見過ごす危険を察知し、あなたが言葉にできない感情を理解してくれます。ただ、その能力は諸刃の剣で、彼ら自身を疲れさせてしまうのです。

もしあなた自身が「敏感すぎる」と感じているなら、知ってください。「敏感すぎる」のは欠点ではなく、あなたの才能です。疲れたら休む、刺激から離れる、一人の時間を持つ。それは逃げではなく、才能を守るための当然の権利なのです。

そして、もしあなたの周りにそうした人がいるなら、少しだけ配慮してあげてください。「気にしすぎだよ」ではなく、「そういう見方もあるね」と伝えてみてください。大人数の集まりを強要せず、静かな時間を尊重する。その小さな優しさが、HSPの才能を守ります。

「気にしすぎる人」が安心して過ごせる社会は、実は、すべての人にとって優しい社会です。なぜなら、誰もが時には傷つき、疲れ、静けさを求めるのですから。HSPという言葉が広く知られ、一人でも多くの人が「自分のままでいい」と思えるようになること。それが、今の時代に最も必要なことなのかもしれません。

≪終わり≫

 

 

 

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2025-11-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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