美人の友達
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:鐵谷知会子(2026年8月開講 ライティング・ゼミ福岡)
*この記事はフィクションです
千尋は、友達を持つなら可愛い娘がいいと常々思っている。可愛い娘は見ているだけで楽しいし、愛されて育っているからポジティブなエネルギーを貰えるのが良い。
自分の事をいうのは気が引けるが、いや全く気は引けない。なぜなら千尋は愛嬌で生きてきたタイプで、美人ではない。千尋の周りは美人や可愛い友人で溢れているから嬉しい反面、自分が引き立て役のように感じる時もある。
「食事会するから可愛い子連れてきてよ!」
同僚の田中に頼まれて素直に可愛い友人達を連れていく。すると、にやけた顔した田中が「女性が可愛い子を連れてくるって、だいたいハズレなのに、すごいなお前」
と無駄に褒められる。普通の女性というものは、自分より可愛い子は連れて行かないものらしい。勿論、千尋だって愛嬌なら自信がある。「愛嬌は無敵だよ」父からもよく言われている。
友人の中でも、ひときわ目立つ麻乃はロングヘアで大きな瞳が印象的な美人である。大学の授業が一緒だったのがきっかけで知り合った。当時から意味もなく彼女の側に寄ってくる男子学生は多くいた。当然、食事会に行っても男性のお目当てはそんな美人の麻乃。千尋といえば内気そうな男性から「彼女、本当に彼氏いなの?」とか「食事に誘いたいけど彼女イタリアン好きかな?」とか聞かれる。知らないよ! と思いながら「うーん、どうだろうね」と適当にあしらうのが千尋の役目。
「私ね。よくモテるでしょ、って言われるけど、好きな人からモテなきゃ意味ないわよ」
麻乃がアイスティーのストローを右手で回しながら言う。千尋は、確かにと思いストローをくわえたまま頷く。
「千尋、あんたどうしてそうかなー」
ショートカットで、色白の真琴が呆れたように言い放つ。真琴は高校の頃からの友達だ。彼女には高校時代から付き合っている彼がいて、その仲の良さには千尋もつい羨ましくなってしまう。
「だって、わざわざ可愛い子を連れて行く訳でしょう。どういう作戦よ。例えば見るからに意地悪そうな娘を連れていくとかさぁ」
千尋は遠慮なく真琴をわざと睨む。
「どういう意味よ、愛嬌だけが取り柄っていう事?」
真琴は慌てて笑顔を作ると
「私は千尋の笑顔、可愛くて大好きだよ! 勿論! でもさ、アイドルなんかと比べられたら大抵の女の子、目立たないでしょう。私が言いたいのはそういう事。そろそろ千尋と恋バナでもしたいよ」
「だけどさー」
と千尋がいつもの言葉を継ごうとすると
「千尋の問題は自己肯定感が低いって事なのよ。そのままだと千尋に興味がある人、見逃しちゃうよ」
長年の付き合いの真琴は辛辣である。
そんなある日、同僚の璃子が嬉しそうに近寄ってくる。
「なによ。なんの笑顔なの」千尋が問うと
「とっておきの情報。私の彼の親友がさ、1年ぐらい前からフリーらしいのよぉー。なんか明るくて、よく笑う娘がいいらしいよー」璃子が続けていう。
「LINEのID、預かっているんだぁー。これ逃すと後悔するわよー、なんたって私も見惚れるほどのイケメンだし、ほらスマホ貸して!」
手慣れた様子で千尋からスマホを取り上げると
「ほら、入れといたわよ。ちゃんとLINEしてよ。私が聡から怒られるからー」
「えっ、私でいいのかな」と小さな声で答えると
「頑張ってねー」と璃子は、また嬉しそうに自分の席に戻っていった。
お風呂から上がると短い髪を触りながら千尋は少し迷ったが、思い切ってLINEを送る。
『こんばんは、初めまして千尋です。聡さんの彼女の璃子からLINE ID教えて貰いました。愛嬌しか自信がありませんが宜しくお願いします!』以外にもすぐに返信がきた。
『浩紀です。宜しくお願いします! 僕の写真を送るから千尋ちゃんも写真送ってよ』
すぐ送られてきた写真に千尋は驚いた。純粋な日本人じゃないみたいなイケメン。その上、少し恥ずかしそうな笑顔がいい感じだ。暫くやり取りをして、お休みなさいと送った後に千尋は気に入った自分の写真がなくて夜中まで悩む事になる。
土曜日のお昼、久々に麻乃とランチを楽しんでいた。近頃、噂になっているフレンチレストランだ。手の込んだ盛り付けが目にも美味しい。千尋は、つい麻乃にイケメンの写真をみせた。
「ほらこの人、友達から紹介されたイケメン!」
麻乃が驚いたように目を見開く。
「私の好きなボーカリストにそっくりじゃない! ねぇ、まだ付き合っている訳じゃないよね」
今度は千尋が目を丸くする番だ。
「うん、まあ」
続けて麻乃は
「私にもLINE教えてよ。いいでしょう」
「う、うん、浩紀さんに聞いてみるよ」ダメだと、なぜ言えないのか。自分でも情けないけど美人のほうが男性も好きだからとつい思ってしまう。
浩紀は千尋がいいならとあっさりOK。そんなもんかと千尋は、かなりがっかりした。真琴や璃子からは大声で叱られそうだ。でも勝ち目はないかもしれないけど頑張ってみよう。彼の笑顔を思い出しながら、「Yes!」大声で自分を励ます。千尋は珍しく引かない事にした。
それにしても麻乃にあんな強引な一面があるのには驚いた。心許せる友達だと思っていたのは千尋だけだったのかもしれない。美人という生き物は千尋にとっては、ややこしいと今更ながら思う。
「千尋がややこしいんだよ! ばかだな」浩紀から笑われたのはもう少し先の話。
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院カフェSHIBUYA
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20番10号
MIYASHITA PARK South 3階 30000
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先
Hisaya-odori Park ZONE1
TEL:052-211-9791
営業時間:10:00〜20:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00







