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たかが習い事で人生は変わるのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

吉村心音(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
何人もの大人が悶絶していた。
 
「ヒィー! あと2回で終わると思っていたら、3回残っていたの?」
「うわー! やっと解放されると思ったのにぃ!」
 
私も、周りの人たちと「ひぇぇ! 先が長いですね……」と、身悶えした。
 
これは、私が通っているライティングゼミの最終講義の後、課題提出の説明がされた時の受講生の様子だ。
多くの受講生がキリよく5月末までだと思っていたが、実際は6月1週目まで提出日があったのだ。
 
あと一回チャンスが増えた(というか元々あった)のは、ありがたいことなのに、ここまで大人が悶絶する、こんな習い事が他にあるだろうか。
 
私は、2月から4か月間、“人生を変えるライティングゼミ”という名の文章を書く教室に通っている。
受講生は、毎週〆切までに2千文字の文章を書いて提出し、スタッフの方が添削してくださってOKがもらえるとゼミのサイトに掲載される。掲載された作品はページビュー数でランキングを競うという仕組みだ。
 
4か月の間、毎週月曜日に〆切がやってくる。
大人が自由意思で通う教室なので、提出は強制ではない。提出しなくても罰則はない。勿体ないだけである。
勿体ないは私の辞書にないので、最初の受講日に、「4か月間で17回、何が何でも毎週提出しよう!」と心に決めた。
 
何故このスクールに通おうと思ったのか。
私は「餅は餅屋に」という効率のいい発想が好きだ。
 
せっかちな私は、文章がうまくなりたいと考えた時に、手っ取り早くその道のプロに技術を教わりたいと思ったので、的確に添削してもらえると聞いたこのライティングゼミを受講することに決めた。
 
「人生が変わる? そんな仰々しいわ」と、人生が変わるほどの期待はしていなかったが、心理カウンセラーとして働く心療内科のサイトで、患者さんにわかりやすく症例を伝える文章を書いて集客につなげたいという目的を持ってライティングゼミに通い始めた。
 
講師は、「頭でわかったつもりになるのと、実際やってみて体得するのは違う。赤の他人に、途中で閉じられずに2千文字を読んでもらえるようになってください」と口酸っぱく言った。
 
頭の中に書きたいことはあるし、講座で書くコツも習っているが、文章で表現しようとすると、とても難しい。
「わかるのとできるのは違う」と、思い知った。
 
これは、心理療法に似ている。
頭で考え方の癖やパターンを理解しても、実際に何度も生活の中でトレーニングしないとパターンは崩せないし、生きやすさは身につかない。生きやすさはわかるだけでは体得できないのだ。
 
私は、1回目の提出で、2千文字ひねり出すのに、トータルで13時間もかかった。
最初の〆切日に、心療内科のことを書いて恐る恐る提出してみたら「面白かったです」と添削していただき、掲載OKが出た。拍子が抜けた。
 
あっさりとOKが出たので2回目の投稿では「面白い文章と言われたい」と思い始め、渾身の体験談を文章にした。自分の目的の変わりっぷりと欲深さに苦笑した。
SMクラブに遊びに行ったら女王様と間違えられた体験や、大人男性に誘われたプールデートで小学校のプール開放に連れていかれた体験は、友人に話すとスベリ知らずだったが、2千文字の文章にしてみたら、面白さが全く表現できなかった。
 
「どうしても伝えたいという熱量が感じられないから最後まで読んでもらえない可能性が高い」と添削で落ちた。
 
「熱量」の感覚がわからず、ググってみたがやはり単語は頭で理解していても感覚は理解できなかった。
 
3週連続で落ちた頃には、私は〆切の月曜日の為にスケジュールを組むようになっていた。
友人の誘いを断り、時間を食うネイルサロンに行くのをやめ、睡眠時間を削って家事育児を疎かにしてひねり出した時間を全て書くことに費やしていた。
この頃には、文章を書く目的は「とにかくOKがほしい。何とか閉じるボタンを押さずに読んでもらえる文章が書きたい」というものに変わっていた。
 
毎週の課題をこなすのに精魂尽き果て、当初の目的だった症例をわかりやすく説明する文章は一度も書けていない。
 
書くネタを常に探してアンテナを張り、思いつくとすぐにメモを取っていると、脳の偏桃体という部分が興奮して熱くなっているのがわかる。興奮状態が続いて睡眠が浅くなった。
 
時間と情熱をライティングゼミにつぎ込んでいたので、OKが出た時には「やったー 受かった―」と飛び上がって喜び、落ちた時はのたうち回って悔しがった。
 
最終講義の日は、やっと毎週月曜日の〆切から解放されるという嬉しさと、フィードバックに心を揺さぶられなくなるのかという寂しさと、これからスタッフさんの添削なしに人の心に届く文章を書けるのだろうかという不安の混じった複雑な想いだった。
 
だから、思っていたよりも一回多く提出日があったと知ったときは、無意識に悶絶してしまったのだ。
 
私は、最後の提出はライティングゼミのことを書こうと思い、手元の資料を読み返した。
 
その時、私は重大な勘違いに気付いてしまった。
 
“人生が変わる”ライティングゼミだと思っていたが、正しくは“人生を変える”ライティングゼミだったのだ。
たった2文字の違いだが、意味は天と地ほどの差があると今ならわかる。
 
講座を受けて理解していれば、自然と文章力が身について心に届く文章がスラスラ書けるわけではない。
必死にアンテナを張り巡らせてネタを探し、2千文字を頭の中からひねり出すこと4か月、書く量を積み重ねることでしか体得できない。
なんとなく状況はよくなっていくだろうとタカをくくりがちな私の楽天思考に、ガツンと一石を投じてくれたライティングゼミ。
 
変化を待つのではなく、あがいて行動する方が欲しいものに近づけることを体得させてもらった。
 
冒頭の皆さんの悶絶っぷりから、この4か月のライティングゼミ、あがき苦しんだのは自分だけではないことがよくわかる。
 
私は、ライティングゼミで人生を変えたか?
 
うん、人生を変えるツールを手に入れた。
これから私は文章に熱量を込めて書くというツールを使って人生を変えていく。

 
 

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2018-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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