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メディアグランプリ

私の夢は、戦場カメラマン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大塚翔平(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私は駆け出しのカメラマンである。しかし、名前はまだない。
 
カメラマンにはそれぞれ専門分野がある。風景、人物、広告、建物など。撮る人の感性、切り口によって写真はガラリと表情を変える。私は一応人物を撮影しているが、一概に人物撮影といっても、グラビア、スポーツ、ブライダルなどなど、数限りなくジャンルが存在する。わたしはこの人物撮影のジャンルをまんべんなく撮影している。だから、これと言って得意分野があるわけではない。
 
そんな私が強烈に心惹かれるものがある。
 
それは、「報道写真」
 
世界で起きた印象的な出来事を切り取った写真たちだ。例えば、ベルリンの壁崩壊の瞬間、9.11同時多発テロで飛行機が貿易センタービルに突っ込む瞬間などを収めたような写真たちである。
 
私は、小学生のころから、図書館などにおいてある世界報道写真年鑑を食い入るように見ていた。人の死体や事故現場の写真など、あまりにも生々しいそれらから、私はなぜか目を離せなかった。
 
私の生まれは長崎市内。原爆の爆心地の、ちょうど山向こうに家がある。だから、幼いころから他の地域に比べ、平和学習が多かった。平和学習というのは、簡単に言うと、夏休みの登校日が多くなることを意味する。楽しい夏休みに学校に登校し、被爆者や戦争経験者の講話を聴いて黙とうを捧げる、なかなか重い一日となる。私にとって、この日は特別だった。こんなにも平和な日本が戦争をしていたこと、被爆者から聞くあまりにもリアルな原爆体験談。知れば知るほど、興味がわいた。そして、普段私たちが生活している現代日本がいかに平和なのか、それを実感することができた。
 
興味がわけば、知りたくなるもので、学校の図書館にあった図鑑や漫画をよく読み漁っていた。その中で、一際目を引いたのが、報道写真年鑑である。当時は子供だったので、文字よりも写真のほうが目を引きやすい。さらに、テレビや新聞では決して見ることのできない、リアルすぎる写真の数々は私を虜にした。写真にはそれぞれキャプションがついており、この写真が、いつ、どうのように撮られたかが、必要最低限かつ鮮明に書き出されていた。
 
今思えば、このころから私は写真に興味を持っていたのだと思う。写真が映し出す圧倒的リアルの数々に、私は打ちのめされ、強烈に世界を知りたいと思うようになった。とりわけ、世界の絶景ではなく、世界で起きている問題や紛争などである。
 
なぜこれほどまで心惹かれるのか。
 
正直、分からない。まだ答えは出ていないし、一生出ないかもしれない。でも、一つだけ言えることがある。
 
昔から、人の生と死が気になっていた。ひとはなぜ生きるのか、なぜ死ぬのか、答えが出ない問いをずっと繰り返していた。小さい時から平和学習を受けていたからかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、昔の写真から人の死体や戦場の生々しい現場の写真を目にしたとき、「私が求めていたのは、生きている実感だったのだ」、と感じた。普段当たり前に学校に行き、友人と話し、食事をして寝る。他愛のない生活に、刺激を与えてくれたのが、報道写真だった。
 
時が過ぎ、私は写真を学ぶことなく、普通高校から四年制大学に進学し、普通に就職する、はずだった。
 
しかしながら運命のいたずらか、私は普通の会社には就職できず、あれやこれやと彷徨った挙句、写真の道に出会ってしまった。偶然と言えば簡単だが、かの有名なスティーブ・ジョブズが大学の式辞で語った言葉を借りるなら、「点と点はいつか線となって繋がる」ということらしい。紆余曲折はしたけれど、私は自分の生きる道に帰ってきたのだ。
 
そして現在、私はカメラマンとして生きている。被写体となるのは常に人。そして、被写体になる方々には極力ポーズや表情の指示は出さない。なるべく自然体を目指して写真を撮っている。人が生きた証を永遠に残せるように、祈りながら。いわば、人の生き様を撮影している。
 
そして、カメラマンとなった今でも、目指すものはやっぱり報道写真だった。どうしても知りたいのだ。世界の現状を、そして、人の死に様を。
 
両親にこの思い伝えたとき、人生で一番反対された。就職活動を辞めて海外逃亡した時も、帰国するや否やカメラマンになると言い出した時も、なんだかんだで応援してくれた寛大な両親でも、さすがに理解を得ることはできなかった。確かにその通りだと思う。
 
誰に言っても帰ってくる答えは一つだ。
 
「そんな危ない仕事、あなたじゃなくて、誰かに任せればいいじゃない?」
 
他人ごと。
 
 
今の日本に住んでいて、わざわざ危険な土地に行こうと思う輩なんて、どうかしてるだろう。
 
それでも私は、行きたい。
 
私には、世界の片隅で起こっている悲劇を、
他人ごとには思えない。
そして、人を最も苦しめることは、無知であり、無関心なのだからだと知っているから。
 
他人ごとではない。
今や私には、写真で人に伝える力を持っているのだから。
人の生き様も、死に様も、全部ひっくるめて、私はこれからも写真を撮り続ける。
 
誰にも理解されなくても、自分だけは信じて。
私は、私だけの夢を追いかける。

***

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2018-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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