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メディアグランプリ

飛び込み営業で学んだ、人生で大切なこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木佳文(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「2度と来るな!」
目の前で渡した名刺を破かれ、自分の身体が引き裂かれた様な気がした。
気が付いたら、駅のホームのベンチに腰かけていた。
 
経営コンサルタントとして独立して13年。
今でも、あの時のことはトラウマで、営業活動に力を入れることができない。
それでも、紹介などで続けられているのは、飛び込み営業をしていた時期に学んだことが身についてきているのかも知れない。
 
「アポイントを取れたら同行する」
いわゆる鞄持ちで師匠について回って、コンサルティングの勉強をさせてもらうつもりでいた僕は、青ざめた。
え? 約束が違うよ!
そんな言葉を飲み込んで営業準備をしようとする僕に、さらなる追い打ち。
「資料を作るのは禁止。その場で話を聴いて、提案をすること」
給料なしでも構わないという条件で弟子入りしたが、まさか細かい指導もなしに営業活動に放り込まれるとは思っていなかった。
 
それでも、サラリーマン1年生の時に飛び込み営業の実習を経験していたので、動くことはできた。
ビルの上から下まで1階ずつ訪問していく、落下傘
エリアを決めて1社ずつ全て訪問していく、じゅうたん爆撃
そんな前時代的なやり方でも、当時はまだ受付でシャットアウトされるような仕組みも普及していなかった。
それでも、面談できるのは100社に1社くらいのもので、正直なところ鬱でひきこもる寸前までいったと思う。
 
そんな状態でも、歯を食いしばって続けていると嗅覚が働くようになってくる。
「この会社は面談までいけそうだ」
そう思った会社には、何回も足を運ぶと会えることが多かった。
そんな自分なりのパターンを作りかけていたときの、
「2度と来るな!」である。
 
名刺を破かれるまではいかなくても苦言を呈されることも多かった。
「中小企業診断士なら話をしないよ」
にこやかに言われた言葉は今でも忘れられない。
「え? 折角、お時間を頂きましたし、見習いコンサルという事で理由を教えて貰えると嬉しいです」
「いいよ、中小企業診断士っぽくないし」
15分の筈が、2時間お話を伺えた。
その社長は、これまでに何人か中小企業診断士に依頼して助言を求めたことがあったそうだ。
公的機関の紹介でやってきた高齢の専門家達は上から目線で理論を語り、何の役にも立たなかったどころか害悪にも感じたとのこと。
見習いをしながら資格を取り、これからという気合が入った矢先の出来事だった。
でも、これが営業活動に向かう姿勢の転換点になった。
 
飛び込み営業は、営業活動というより情報収集と位置付けた。
忙しい中、時間を取ってくれるんだから、少しでもお役に立たないといけない。
次のアポイントは二の次で、お悩み解決に役立ちそうな情報提供を心掛けた。
いずれ自分が独立するまでに、何人の経営者と会って話ができるか。
断られてもご縁が無かっただけで、自分が否定される訳ではない。
考え方を切り替えた時から、アポイントを取れる確率が高まったように思う。
 
営業活動にトラウマを持ってしまった僕は、独立してからも苦労した。
積極的に動こうとするたびに、名刺を破かれた場面が浮かんでくる。
 
そんな中、出会ったメンターに、「自分の在り方が大切だ」ということを教わった。
飛び込み営業をしていた時の苦行を思い出し、知識と経験がやっと一致した。
あの時は師匠の指示で動いていただけだったけれど、大事なことを教わっていたんだ。
 
自分が欲しければ、まず自分が与えなければならない。
相手が欲しいものでなければ、相手は喜んでくれない。
 
いま思えば当たり前のことだけれど、
振り返ってみれば、長くお話できた方は悩みを相談できる人がいないということで困っていた。
若造でも、愚痴を聞いてもらえるのは嬉しかったのだろう。
 
飛び込み営業は、相手のお困りごとに寄り添うサービスだ。
だからこそ、相手が使ってくれる時間に対して十分なメリットを提供する必要がある。
「時間を使って良かった」
そう言って貰えるように、サービス力を磨かなければならない。
営業資料不可の飛び込み営業には、きっとそんな意味があった。
 
独立して悩ましかったことの一つが営業電話。
不動産、教材、怪しげな提携話、こちらの都合に関係なくバンバン掛かってくる。
そんな状態で、飛び込み営業まで来たらうんざりする。
「名刺を破きたくなることだってあるよなぁ……」
自分がその立場になって、はじめて実感した。
 
相手のお困りごとにどれだけ焦点を当てて、解決するヒントを提供できるか。
その為には、自分で勝手に用意したサービスではなく、その場その場で相手に合わせて最適なものを選ぶ必要がある。
そこに一番必要なことは、相手に寄り添う姿勢だ。
 
そしてそれは、営業活動に留まらない。
家族との関係であれ、
友人との関係であれ、
相手に寄り添う姿勢があれば、関係は深くなるし、長くつづく。
 
そして、お役に立つためには相手の話を聴かなければ話にならない。
聴く力を磨いていくことが重要だ。
 
聴くのが苦手な人にお勧めしたいトレーニング方法がある。
それは、妻や母親の話に共感しながら最後まで付き合うこと。
身近な人の話を丁寧に最後まで聴くのが実は一番難しい。
「ねぇ、私の話をちゃんと聞いてる?」
と言われなければ、力がついてきた証拠だ。
 
さて、僕も妻の話をじっくり聴こう。
妻の機嫌も良くなるし、聴くトレーニングにもなる。
こうして書いてみると、得をしているのは妻より僕かもしれない。

 
 
***

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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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