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メディアグランプリ

もう一度恋に落ちたら試してみたい、たったひとつのこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山本しのぶ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
恋に落ちるのは一瞬だ。
落ちてしまったら、最後。相手のうなじだったり、声だったり、肌の質感だったり、すべてが愛しいものに変わってしまう。
恋愛の初期に脳内にどばーっと出るのがドーパミンなのかなんなのかは知らないけれど、わたしの脳はそれに支配され、一気に機能を高めてしまう。
 
見るものすべての色彩が鮮やかになり、からだは軽く、動きやすくなり、普段は苦手な朝でも楽に目覚めることができるようになる。
「世界がこんなに鮮やかだったなんて」と、思わず恋愛映画の主人公のようなことを口に出してしまう。覚醒状態が自然に高まっているような状態。
 
そう長くは続かない。おそらくそれが続くと、今度はそのハイテンション状態に脳が疲れてくるのだろう。うまくいけば、徐々に、穏やかな愛しさの感情へと変わっていく。
 
気をつけないといけないのが、依存と執着である。恋愛下手の落とし穴。
「もっと一緒にいたい、もっとそばにいたい」
そんな気持ちが自分も相手も追い詰めてしまう。
 
春になると、わたしはいつもある匂いを思い出す。大学に入って初めて一人暮らしをした街に、毎年春になると漂う匂い。おそらくその街の街路樹や春になると咲く花の匂いが混ざり合っていて、それはとてもいい香りがする。
 
入学してひと月ほど経ったころ、わたしは同じ学部の同級生とお付き合いを始めた。お互いに地方から出てきて一人暮らし。仲良くなってから、付き合いだすまではあっという間だった。
初めてのデートは遊園地。ゴールデンウィークで実家に帰ったわたしが戻ってきた翌日に、いまはもうない遊園地に出かけた。中学時代に圧倒的な片思いを経験し、高校ではすっかりそれを引きずっていたわたしにとっての、はじめての「恋人」。一気に夢中になってしまっていた。
 
目を閉じれば彼の顔が浮かぶ。肌に触れて、息苦しいほど胸が高まり、ぎゅっと抱きしめられて自分と相手を感じる。生活も精神もまだまだ未熟だったわたしは、徐々に生活や感情のコントロールを失ってしまう。
 
慣れない新しい土地での生活や一人暮らしのストレスもあったのだと思う。恋人がいることで、その支えになった面もあるけれど、あるときから、それもコントロールできなくなり、わたしの体調や生活はどんどん悪化していった。
 
過呼吸発作をきっかけに、わたしの自律神経は不調をきたした。朝、起きられない。一日中、ずっと頭痛がする。夕方ごろになって、やっと起き上がることができる。いっときは、それくらいの状態になっていた。彼はすごく助けてくれた。周りの友だちにもとても助けられた。少しずつだけれど回復していき、一年が終わることにはもとの暮らしに戻ることができてきていた。
 
ただ、その間はとてもつらかった。
そして、心身のコントロールが難しくなった恋人を大学一年生の男の子が支える、というのは、ほんとうに大変なことだったと思う。
 
一年生が終わっての春休み、彼は地元に帰省し、戻ってきてからわたしに別れ話をした。ただ、彼も揺れていたのだろう。しばらくして、一緒に出かけるようになり、いつのまにか再び付き合いだしていた。入学してすぐくらいに感じていた、その街特有の春の匂いがちょうど漂っているころだった。
 
結局彼とは、2年半ほど一緒にいて、別れた。その後、復活しそうになるが、結局は一時のことだった。
 
そのあと、いくつかの恋愛をして、わたしは結婚した。
求めていた穏やかな生活。
わたしが少々大変な状況でも、「自分は自分、あなたはあなた」と線を引いてくれる夫の存在はわたしにとってとてもありがたい。
 
もう、自他の境界が溶けていくような、あんな恋愛をすることはないけれど、違う形でなにかに恋をしてしまうことはあるかもしれない。色彩が鮮やかになり、からだが軽くなるような、脳の反応。
 
そんなとき、わたしはどんな文章を書くのだろう。どんな表現で、なにを描くのだろう。それを試してみたい。
いま、わたしはそんなことを思いながら日々、恋のかけらを探している。その日のために、書き続けていたいなと思う。

 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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