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メディアグランプリ

ネットで知り合うという新しい友達作りの形


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小倉 秀子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ネットで知り合った友達を家に泊める?! 何言ってるの?」
 
息子からの申し出に驚きを隠せず、こう返答してしまった。
それは当時高校生だった息子からの、突然の申し出だった。趣味のゲームを通じて知り合った、北海道に住む子と茨城県に住む子の二人のネット友達を、家に泊めたいと言い出した。
 
本当に、何言ってるの? である。
まず、ネットで知り合った子達と、家に泊めたいと思うほど交流を持っていることも知らなかった。当時の息子は高校生だ。学校は家から電車を使って30分以内のところにあり、生活圏もその範囲に収まっていると思い込んでいた。
でも、実は全然そうではなく、その当時から都内の繁華街に足繁く通い、ゲームセンターにある音ゲー(音楽ゲームのこと)にハマっていたらしい。
しかも、当時高校生だった息子に対し、相手の子達は21歳の社会人と19歳の専門学校生。どうやって話を合わせていたんだろうか??
その北海道と茨城県の友達が東京のゲームセンターに遊びにくるため、彼らの出費を少しでも抑えてあげたいと言うことで、家に泊めることを思いついたようだ。
受験も控えているのに、遊びを抑える様子もなくそんなことを思いつく息子に呆れたが、欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる、要求が達成されるまで粘りに粘って交渉する息子にまた折れてしまった。
 
息子が信用して連れてくる友達だから大丈夫だろうと、最終的には了承したが、正直夫も私も少しは心配だった。ネットで知り合った友達ってどんな子達なんだろうか。ご両親はこのことを知っているのかしら。
 
私たちが学生の頃、インターネットなんてなくて、それどころか、携帯電話さえなかった。電話といえば当然家からかけるもの、外で電話したければ、公衆電話に並ぶものだった。電話番号を知らなければ、相手に連絡できない。だから当然、付き合う友達は顔見知りに限られた。近所の人、同じ学校の人。環境を共にする人の中から、気のあう人を見つけ、仲良しになっていくものだった。
自分が毎日生活している環境から友達を作って来た夫と私からしたら、ネットで知り合った友達とは、どういうものか想像できなかった。 
趣味の話では合うのだろうけど、ネット友達のそれ以外の部分を息子は知っているのか。
数回しか会ったことがないのに、いきなり家に呼んで大丈夫なのだろうか。
 
何も知らないからこそ、悪い方へと心配もしてしまう。息子の場合とは違うケースだが、ネットで知り合って交際した男性に命を奪われてしまった女子高生のこともニュースで報じられるような世の中だ。親としてはそんな最悪なケースのことも頭をよぎってしまう。
 
そんな心配も時には頭をよぎる中、北海道の21歳の男性と、茨城県の19歳の専門学校に通う男性が我が家にやって来る日が来た。
息子に促されてリビングに現れた二人の男性。年上でも息子の友達なので、男性というより男の子ともいうべきか。
 
「初めまして。〇〇と申します。お世話になります。これ、つまらないものですが、どうぞ」
と、それぞれ地元のお土産を差し出してくれた。
初めて会った二人は、とても礼儀正しく、笑顔が素敵な二人だった。息子よりもずっとしっかりしているように見えた。そこは高校生の息子と比べてはいけないか。
 
ちょっと保守的だったりもするわが家にとって、初対面の人をいきなり家に招待するなんていうのは結構勇気のいることだった。息子の粘り強い交渉に折れて許した、というのが正直なところで、彼らを迎え入れる直前まで、どんな子がくるのかな、大丈夫かなとそわそわしていた。
でも初対面のその瞬間、それらの心配が一気にどこかへ吹き飛んだ。
最初の挨拶も礼儀正しく好感を持てたが、その佇まいが、彼らの持っている雰囲気が穏やかで、目をしっかり見て話してくれて、
「この子たちなら大丈夫だな」
とすぐにわかったからだ。
 
それから夕食を共にし、一泊してから帰るまで、彼らは本当に礼儀正しく、息子にだけでなく、夫にも、私にも、次男にも積極的に、それでいて穏やかに接してくれた。
私は初対面でも結構会話する方だが、夫は初対面ではあまり会話はせず終始聞き役だ。そんな夫にも、息子の友達は敬意と親しみを込め、優しい口調で話しかけてくれていた。夫もそれを心地よく感じていたようで、彼らの会話に笑顔で返していた。
普段の家族の夕食時はいつもテレビがついていて、その時映っている番組の話題で会話しているようなところがあったが、この日はテレビがついていなくても、家族と友達がなにげない会話で繋がっているような一体感を感じた。
二人の友達は、弟である次男のこともとても可愛がって遊んでくれた。
特に21歳の北海道から来た友達が、小さい子の扱いがとても上手かった。まるで自分の弟であるかのようにとても優しく接してくれた。次男の好きな遊びを一緒に楽しんでくれたし、かと思えば就寝の時など、嬉しくてなかなか寝ようとしない次男に「明日も遊んであげるから」と優しく諭してくれていた。
次男もこのお兄さんがとても好きになり、彼らが帰る前にリビングで撮った集合写真では、彼の膝の上に座っていたくらいだ。
 
家族と息子の友達が我が家で楽しい時を過ごすという最高のプレゼントをくれて、一泊したのち、本来の目的である都内のゲームセンターで音ゲー友達と集うため、二人の友達は息子と共に家を後にした。
夫も私も、友達が泊まりにくるという初めての出来事を無事終えた安堵感と、それ以上に、あたたかく優しい時間を過ごした幸福感に包まれていた。
 
それ以来、息子の友達が家に泊まりにくることに大分寛容になった。
この件で、ネットで知り合った友達と付き合って大丈夫かと心配するのはナンセンスだとわかったし、息子の人を見る目も信頼できるとわかったから。
 
今息子は大学生だ。音ゲー友達が泊まりにくる頻度もさらに上がった。
うちに着替えが置いてあって毎週のように泊まりにくる友達もいれば、夏休みや春休みの長期休暇に北海道やら広島やら、全国各地から友達が集結することもある。
うちの広さも考えず、8人とか泊まったこともある。うちは民泊か!
 
最近あまりにも頻繁にくるので、その都度夕食とか朝食とか用意できず、基本的に提供できるのは寝る場所だけになってしまっている。まさに民泊と化しているけれど、本当は私も、時には若い子達とテーブルを囲んで飲んだり食べたりして過ごせたら楽しそうだな〜なんて妄想を膨らませている。
これもまた、新しい友達作りの形か(笑)。

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2018-07-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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