メディアグランプリ

体裁で固めた鎧は意味のある崩壊を遂げた


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記事:北村涼子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
現在、週休1日の会社に正社員として勤めている。
年間休日75日。
この会社に転職するまで約20年間週休2日で働いてきた私にはなかなかの厳しさがある。
1年以上続けてきた今、心と体に支障をきたしてきた感覚を覚える。
 
なぜそんな休日の少ない会社に転職したのか? 
家庭もあるし、小学生の子供に付き合ってあれやこれやの用事もある。
休みの日曜日に家事をこなし、疲れて昼寝でもしようものならあっという間に月曜日になり、また一週間が始まる。
さぁ仕事! 月曜日から土曜日まで全力で駆け抜ける。
 
なんか違う。
かろうじてなんとか家事がこなせている中で、「自分の時間」を捻出することが難しい状況になってきている。
どうしよう、このまま定年まで仕事ばかりに明け暮れて老後の世界に入っていくのか。
 
絶対にいや。
いくら働くことが好きでも仕事だけに明け暮れる生活は私の中では許せない。
 
職場は自宅から歩いて数分。転職する前から毎日会社の前を通っていた。
ある時、直感で「この会社で私の能力を発揮したい!」と思った。
その会社の業務内容に魅力を感じ、心が惹かれた。
求人の募集もない会社のホームページから「面接してください!」と職務経歴書と一緒に送り込んだ。
自分のスキルにそこまで自信があったわけではないけれど「とにかくこの会社で働きたい」という強い思いから衝動的に動いた。
求人の募集がないにも関わらず、私が売った能力に対して「そういえばそんな人財が必要な時期かも」という会社のタイミングにがっちり合って私の採用が決まった。
 
入社したい! という希望が通ったことに嬉しさが集中した私は大切な労働条件について二の次に考えてしまっていた。
週休1日。働くことが好きだから、会社も自宅の近所だし、なんとかなるよねー、と軽く考えていた。
とにかくしっかりフルタイムで必死に働いている自分、というものが「あるべき姿」と思っていた。
様々な仕事を見出し、新しいことを手掛け、自由に動かせてくれる会社に感謝しながら毎日楽しく志し高く働いてきた。
 
が、いつからか「ちょっとしんどいなぁ」というセリフが私の中で発信されだした。
「いや、でも仕事は楽しい。しっかり働いている自分に満足。なのになぜそう思う?」と自問自答してみる。
考えてみた。
「〇〇ができていない」という言葉がたくさん出てきた。
「あそこの隅っこの掃除ができていない」とか「片付けができていない」とか「娘と前ほどゆっくり話ができていない」とかいろんなことが山ほどあふれてくる。
その中でもなによりも私に痛恨のダメージを与えているのが「自分の時間が持てていない」ということ。
 
働いている自分を良しとしてきた。
でも家事がおざなりになっている。そこは夫に協力を願ってなんとか回せているとしよう。ただ自分でやってしまいたい細かな家事には夫の手は及ばない。
そんなちょっとしたことへのストレス。その「やらないといけないのにできていない」が襲ってくるこの感覚。
 
「自分の時間が持てていない」これが一番の曲者。
仕事、家事、子育て以外に充実させたい趣味の時間が持てていない。
私には自分を開放できる趣味の時間が必要である。
なんとも贅沢な話ではあるがその時間を持てていないことに気付き出した時に「ちょっとしんどいなぁ」というセリフが頭の中を占領するようになってきた。
ライフワークバランス、が全く機能していない。
私生活も満たされて仕事も満たされる。ありたい姿からどんどん離れていく。
歯車が狂いだす。
 
そんなある日、日曜出勤の振替休日として平日に休みがもらえた。
「何しよう! 私の時間!」とテンション高々の私が選んだのは大学時代からの友人に会いに行くこと。
友人はバリバリ働いたのちにイタリアに嫁ぎ、1年前に大病を患い今は療養をしながらも妊婦となり実家で穏やかに過ごしている。
そんな彼女に会って今の自分の状況を話してみた。
「なんかしんどい」と。
久しぶりに会う友人の前でさらけ出してみた。
数時間びっちり話した。お互いの今までの話から今後について。
友人の働きたくても働けない状況から見出してきたポジティブ炸裂の考え方を聞いたり、たった一回の人生の中で幸せを感じる働き方ってどんなのだろう、と一緒に考えたり。
そんな話をしているうちにどんなに条件が厳しくても必死に働く姿が美徳だと思い込んでいた自分の考えが崩壊していった。
 
「ばりばり働いています」「かっこいいでしょ、ワーキングママ」なんて言いたいだけであったことに気付く。
現に今までもいつもなぜか満足できず何か違うものを求めだす。
それは精神的に満たされていないから。
「働くことが好き」なんていう物質的な中身の無い鎧はいとも簡単に崩壊してしまう。
精神的な強いものに守られていないから。
直感で「この会社!」と思ったのも今の自分に気付くためだったのだろう。
自分に合った働き方を見直すために、遠回りではあるけれど今の会社を引き寄せたのだろう。
ようやく学んだ。自分に合った働き方。
趣味を仕事にしよう。本当にやりたいことを仕事にしよう。そんな心の奥底にあった想いが沸騰してきた。
 
この沸騰を招いてくれた親友と今の会社に感謝である。
守るべきものを最小限にして丸腰になって挑戦していこうと心に決めた。

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2018-07-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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