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29歳、結婚しないほうがしあわせ。


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記事:北村 有(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
今年、29歳になった。
 
「結婚はしないの?」
「いつ結婚するの?」
「良い人いないの?」
 
29歳になったというだけで、訊かれることが多くなった質問たち。
わたしの中身は10代のころから変わらない。
ずっと変わらないのに、29歳になっただけで、結婚はまだ? とせっつかれるようになった。
ひねくれ曲がった未婚アラサー女子らしく、わたしは声高にさけびたい。
結婚は義務ではない!
 
以前に勤めていた会社で、上司に訊かれたことがある。
 
「北村さんは、結婚はしないの?」
 
当時のわたしは25歳になったころだった。20代前半という枠をくぐりぬけ、世間のいう結婚適齢期というものに片足をつっこんだ時期。
 
「結婚、しないですねえ」
 
正直に言った。結婚する気も、する予定もなかったのだから、こう言うほかない。
わたしの断言っぷりに半ば圧倒されたのか、問うてきた上司はこう返してきた。
 
「諦めたってことだ」
 
わたしは諦めたのだろうか、結婚を。
結婚って、諦めるものなのだろうか。
単純な、する・しないの俎上ではなく、諦める・諦めないという、より積極的で能動的なまな板の上に載せられている。いつのまにか、しらないうちに。
 
そもそも、なぜ結婚することが当たり前とされているのか。
男女ともに結婚というゴールがしあわせに繋がるとされているからだ。
良いひとと出会って、恋愛をして、結婚をして、子どもをもうけて家庭を築いて生きていくことが、1つのしあわせの確固たる型として存在している。
 
それがしあわせとされていて、人間はみんなしあわせになりたい生き物のはずだから、結婚することが当たり前だし推奨されてもいるのだ。
子どもを産んでくれないと、ますます少子化がすすんで国が困るわけだし。
 
たしかに、良いひとと出会って結婚をするのはいいことです。めでたいことです。そこから愛が生まれるのだし、愛は世界共通で混じり気なく育むべきものであるし。
 
ただそれを、女としてのしあわせの、たったひとつのルートとして定めてほしくないだけなんです。女は結婚をして子どもを産まなければいけないという、凝り固まった価値観をはやく捨ててほしいだけなんです。女としてではなくひととして、個人としてのしあわせを、もっと追究させてほしいんです。
 
わたしが現在勤めている某スクールには、若い方からシニア世代まで、じつに幅広い年齢層のユーザーが毎日通ってくる。
年頃の女だと知るやいなや、結婚はまだか、子どもは早いうちに、と説教がましくなるのは決まって高齢者である。
 
時代の色、というものをひしひしと痛感せずにはいられない。
このひとたちにとってのしあわせは、結婚だったのだ。
結婚して子どもを産むことで、はじめて一人前と称された時代に生きていたのだ。
10代後半ともなれば、将来を見越して相手を見つけていなければ、いろいろな意味でいき遅れとされていた世代。
 
「先生、結婚は?」
「いいえ、まだまだ」
「まだ? 早くしないとね、まだ若いけど、いつまでも若いわけじゃないんだから」
「ええ、そうですねえ」
「良いひといないの? かわいそうに」
 
そう、このひとたちから見れば、わたしはかわいそうなのだ。
29歳にもなって相手もいない、結婚もしていないわたしはかわいそうなのだ。
かわいそうなわたしは、それでもしあわせに生きているのだ。
結婚しないほうがしあわせだ。ひとりでいるほうがしあわせだ。
このひとたちの価値観を塗り替えることはもうできない。
時代が、国がそうだったのだから、仕方ないことだ。
 
生涯独身幸福宣言。
29歳、結婚しないほうがしあわせ。
痩せガマンだととらえてくれていい。わたしのこの発言が、さぞ痛々しいものにみえるだろう。それでも、わたしは、わたしとしてのしあわせを、追求する手を止めたくない。
 
年齢を訊かれて答えたあとの「ご結婚は?」を廃止してくれ。
法律で禁止してくれ。
わたしは結婚しないほうがしあわせだと思っている。
思っているこの状態そのものをかわいそうだと決めつけてくる人がいる。
勘弁してくれ。
わたしのしあわせを尊重してくれ。
 
今年、29歳になった。
来年は30歳になる。
無事に生きていられたら、40歳になり50歳になり、平均寿命の80歳ほどまでになるだろう。未婚のまま自分のしあわせを貫いて、最期は、ああ、結婚しなくてもしあわせでしたよと、満面の笑顔で後世につたえてからこの世を去るのが、わたしの夢である。
 
生涯独身幸福宣言。
29歳、結婚しないほうがしあわせ。
 
 
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2018-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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