メディアグランプリ

心の中に青空を保つ! 何があっても上機嫌でいる!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:津田智子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「大変残念なのですが、今回はお見送りという結果になりました」
 
この3カ月でこの文面に何度接したことか。48歳にして5度目の転職活動中。3月下旬に前職の上司の理不尽な言動の連続に耐えられなくなり、衝動的に退職を表明した。即日荷物をまとめ、追い出されるようにして会社を去った。
 
そのことは全く後悔していない。辞め方には問題があったが、辞めたことは正しい選択だった。数カ月程度は収入がなくても生活に困ることはない。派遣会社の営業担当によると、翻訳の仕事に年齢制限はないらしいから、じっくり待っていれば面白い案件はポツポツやってくるだろう。就職には縁も左右するから、落ちたことをいちいち気にしていたら心身が持たない。
 
頭ではわかっていても、「是非やってみたい」と思っていた案件の不採用通知は胸にズキズキ来る。何度もらっても慣れることなく、毎回心が痛む。もしも書類選考落ち、もしくは翻訳トライアルで落ちていれば、衝撃はそれほどでもない。「まあ、仕方ないか」と受け止め、すぐに気持ちを切り替えられる。しかし、書類選考もトライアルも通り、面接まで行けば、どんどん期待が高まってしまう。
 
面接もうまく行ったはずだ。しかし、翌日も翌々日も連絡が来ない。ヒヤヒヤしながら1週間近く待たされる。結果、不採用……。この流れは精神衛生上、非常に悪い。心が大きなダメージを受ける。
 
先月、大いに期待していた企業の不採用通知を受けたとき、私はNPO法人のボランティア仲間と一緒にいた。私は「残念ながら……」の文面をみた途端、メールを閉じたが、その後も自分の感情を制御できず、会議中ずっと不機嫌だった。帰り際に反省し、次回以降は周囲のためにも、自分の心のためにも、どんな通知を受けても上機嫌でいようと心に決めた。
 
そして先週月曜、面接に出かけた。ファッションニュース翻訳の仕事だ。トライアルは手ごたえあった。自分の力を全部出し切り、自己評価は満点。自信満々で提出した。翌日には面接に来てくれとの連絡が入った。「よし!」携帯電話を片手に握りつつ、もう片方の手でガッツポーズを取った。しかし、面接でファッションについて聞かれたとき、正直に「現時点では全然詳しくないのですが、好奇心旺盛なので、これから積極的に学んでいきます」と答えてしまった。
 
帰りに少し反省してツタヤにより、ファッション関連のDVDを4本借り、繰り返し鑑賞して予習した。ファッションの世界もなかなか面白そうだ。新しい仕事に胸が期待で膨らんでくる。しかし、先月同様、翌日も翌々日も何の連絡もない。前回と同じパターンか?
 
水曜日くらいから気持ちが沈み始めた。いけない、いけない……。近所のヨガスタジオに行くと、先生が「台風が来たら雨風で周囲は大荒れに荒れますが、中心部分はシーンとしています。台風の中心は晴れ渡っているのです。私たちも周りで何が起きても、台風の目のように安定した心を保ちたいですね。それがヨガの目的でもあります」と話してくれた。
 
ヨガの先生の話から、私は15年前、心に青空を発見したときのことを思い出した。私は大学を卒業して生命保険会社に就職したが、単調な作業ばかりで全く面白くなかった。やりがいなど全く持てなかったが、かといって辞める勇気もなく、毎日仕方なく通勤していた。
 
31歳の時に3度目の異動通知を受け、証券取引の執行担当となったが、初日に大きなミスをやらかした。2千万と2億を数え間違えたのだ。その後も、証券の売りと買いを間違えたり、同じ注文を複数の証券会社に重複して出したり、少し気が緩むと重大なミスを犯してしまう。そのたびに心臓が止まり、1時間近い上司の説教が続いた。
 
そして33歳の時、1年半にわたる片想いが終わった。相手の男性Sさんにはわずか6回ほどしか会っていなかったが、一目見た瞬間に心奪われ、それ以来、彼はずっと私の心の支えだった。優しくて、知的で、身のこなしがスマートで、とっても魅力的な男性だった。大好きで、会うたびにドキドキして、別れるときはいつも「明日も会いたい!」と思った。
 
でも実際には全然会えないし、連絡も取れなかった。電話は来ないし出ない。メールも週に2回ほど、私が熱いメールを書いた数日後に短く返信してくるだけ。それでも、彼の虜になっていた私は、いずれは一緒になれる、と信じていた。そうしたら、友人の調査で、彼には妻子がいることが判明した。ショックだった。
 
私は心の動揺をどう鎮めたらよいのか、どのように平常心を取り戻せばよいのかわからなかった。出勤しても涙が止まらず、仕事どころではなくなった。というか仕事などどうでもよくなった。1カ月後に退職すると、実家に戻った。
 
ある日、自分の部屋から澄み切った空を見上げていると、何とも言えない自由を感じた。仕事と恋を一気に失い、心はズタズタに引き裂かれ、ボロボロに崩れ果てていたはずなのに、そのときの私の心は異常なほど晴れやかだった。青空が私の心に入り込んできたかのようだった。
 
「あ~、もう性に合わない作業をしなくていいのだ。自分の好きなことをできるのだ」そして、「私は今まで、自分で自分を会社やSさんに縛り付けていたのだ」と気づいた。その時、ものすごい解放感が私を包み込んだ。そして私は確信した。
 
「人生で一番大事なことは、心の雲を追い払い、きれいな青空を保つこと、誰にも邪魔されない、本物の自由を見つめ、感じ続けることだ。そうしたら、いつも明るい気分でいられるし、楽に生きられるはずだ」と。
 
ヨガの先生の一言で、このときの感覚と気づきを思い出した。ファッションニュース翻訳の仕事は予想通り、不採用だった。ショックはショックだった。でも、その台風の拡大をすぐに食い止めた。すぐに心の台風を追い払った。青空を見つめることに注力した。翌日にまたNPO法人の活動があったが、今度は平常通り、テキパキと明るく業務をこなした。
 
私はまだ48歳。これから求職活動以外にも数々の難関に直面するだろう。大波も台風も数えきれないほどたくさんやってくるに違いない。しかし、そんなときこそ、周囲の台風ではなく、心の青空に焦点を当てて、平常心を保ち、ノンシャランと乗り切っていきたい。

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2018-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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