メディアグランプリ

本を出したい、本を出したい。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:三木智有(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
数年前。
NPOを起ち上げ、事業づくりに苦心していた頃。
僕は彼とよく一緒に、事業や社会の未来について語り合っていた。
 
 
僕は、家事シェアを広める活動をしている。
家庭と社会の間には色々な課題がある。男性にとって家庭との距離のとり方というのは、実は社会問題になるほど大きな課題でもある。
 
パパにとっても、ママにとっても心地よく帰りたくなる家庭であること。
それはつまり、「ただいま」と帰りたくなる家庭づくりにほかならない。そんな想いを持ってNPOを起ち上げた。
 
僕たちは、言葉や表現は違ってもおおよそ同じ方向に向かって、それぞれの団体に応じた事業を考えていた。
 
しかし事業づくりは難しく、そう簡単に思ったような成果は出ない。
僕は起業支援と、それに伴う助成金を食いつぶしながら生活をしていた。
 
その頃受けていた社会起業家を育てるための起業支援は非常に厳しく、毎日のように自分が一生をかけて取り組んでいきたい社会課題について考え、自分の団体のビジョンやミッションが何なのかを考え続けた。
果てることのない「なぜ」を繰り返し、何度もなんども事業プランをつくり直した。
 
「社会を変えるんだ」
 
そんな強い想いを抱えた友人たちは、それぞれがその業界では知らない者はないほどの存在になっていった。
彼らは大きな旗を振りながら、社会課題の波をどんどん切り分け進んでいった。先導者になり、その後に多くの仲間、彼らを追随した事業が生まれていった。
これまで多くの人が社会課題だと思っていなかった事象に対して、それがいかに重要な課題であるかを知らしめていった。
 
僕も、小さな旗を懸命に振りながら一生懸命走った。
しかしふと横を見ると、共に目指す社会を語り合いながら進んでいたはずの彼は、いつの間にかずっと前を、より大きな旗を振りながら突き進んでいた。
 
 
「本を出すことになったから、ぜひ見て欲しいんだ」
 
彼からの報告を、当時僕は心から喜ぶことができていただろうか。
同じ未来を目指す以上、ひとつでも多くの情報が発信された方がいい。そんな事はわかっていた。
だけど「くやしい」という気持ちは隠しようもなかった。
いつの間にか全国区で活動し、本を出すことにまでなったその人の活躍を僕は心から喜ぶことができなかった。
 
 
周りで活躍する友人たちの姿がSNSを通して毎日更新され、目に入る。最初はガソリンのようにやる気に火を点けてくれていたその姿は、だんだん重荷となって僕の中に深く沈んでいった。
 
このままじゃダメだ。
 
それから僕は毎日ブログをアップすることを決めた。
それまではほとんど更新していなかったブログを1年間、毎日更新した。特別書くことが好きなわけじゃない僕にとっては毎日書くことは苦行でしかなかった。
それでも継続することには、やはり力がある。
 
徐々にWEBメディア等での執筆依頼が舞い込むようになり、色々な所で自分の想いを発信する機会に恵まれるようになった。
 
そして。
 
「本を出しませんか」
 
大手出版社からの問い合わせに一も二も無く飛びついた。しかし問い合わせの段階ではまだ出版が決まっているわけではなく、打ち合わせをしながら企画会議に出すための企画書を練っていく。そして、企画が通ればいよいよ執筆となる。
 
この企画書を練り合わせている段階で、担当者と揉めた。
どうしても譲れない想いの部分で僕が意見を押し通した。
 
そして、企画に落ちた。
 
もちろん想いを突き通したことだけが原因ではない。結局は僕自身の持っているコンテンツが期待値に届かなかったのだ。
 
 
合計3度。
出版の話しが舞い込み、そして消えていった。
 
出版に向けての話し合いを何度も重ねる中、はっきりとわかったことがある。
それは、本を出すことは「目的」ではないということ。
いつの間にか出版の話しが来ると出版までこぎつけることしか考えていない自分がいた。それでは、意味がないのだ。
 
目的は、本を出したその先にある。
 
矢を射る時は的を狙うのではない。的のさらに奥を狙って撃ち抜かなくてはいけない。
 
僕には、的を射る力がなかった。
的を射抜くだけの見通しもなかった。
だから、矢を射ることが許されなかったのだ。
みっともない矢を射ることを許されなかったことに、むしろ感謝しなくてはいけないのだと、自分で理解をするほどにくやしさは募っていった。
 
 
「本を出したい」
 
昨年の終わり頃。僕は久しぶりにその想いを抱いた。
 
「いまなら、書ける」
 
ふとそう思ったのだ。もちろん文章に自信がついたなんてことではない。どうしても伝えたいと考え続けてきた想いを、気持ちではなく形としてコンテンツにできると思った。それは単純に、場数と活動に対しての手応えかもしれない。
 
「本を、出したい」
 
本を出すことはもう目的ではなくなっていた。
先に出版を決めてきた沢山の友人たちにとってそうだったように、本を出すこと自体に価値があるわけじゃないのだ。
本を出すことで、世界にどのような変化があるかが大切なのだ。
本を出すことは、これまで自分の力では届けられなかった人たちへ想いを届けられる機会なのだ。
 
僕は、本を出すことを特別視し過ぎていたのかもしれない。
 
それは出版社が共に、広めたいと思ってくれてスタートするプロジェクトのひとつ。
これまで色々な所と共に行ってきたプロジェクトと、ある意味では同じなのだ。
 
 
そして、はじめて自分から出版の相談をするようになった。
かつて取材をしてくれた出版社のいくつかに企画書を持っていってみた。当たり前のように、やんわりと断られた。
 
相談し始めて2週間。
 
「うちで本を出しませんか」
 
思いがけない出版社から突然依頼が来た。
だけど僕はもう焦らなかった。そして自信があった。幸い、企画書までできていた。
深く深呼吸をして打ち合わせに向かった。
 
 
僕はここから、新しいスタートラインに立ったのだ。
他人をうらやむのではなく、自分らしい一歩を踏み出すために。
そして、一人でも多くの人の世界を変えるために。
 
いま、この本を書き上げるために僕は天狼院へ通っている。

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2018-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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