もし一番言われたくない人からキツイ言葉を言われたら
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記事:眞水純子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「片付けなさい。これじゃお客さんが来た時に恥ずかしいわよ!」
わかっていた。部屋がごちゃごちゃしていた事は私もずっと気になっていたのだ。「いつかやらなくては」私も十分わかっていた。でも日々の忙しさにかまけて、そのいつかはなかなか来なかったのだ。それを、よりによって一番言われたくない人から言われてしまったのだった。
急に福岡の実家に行かなくてはならなくなった私は、長い留守をお義母さんにお願いした。いつものことではあるが、私が実家に帰っている間は、頼まれなくても息子や孫のために掃除、洗濯、ご飯の用意をお義母さんがしてくれているのだ。今となってはありがたい事ではあるが、結婚当初は困惑したものだ。
「汚い、ちゃんと掃除しなさい」
はっきり言われる嫁の立場を想像してみて欲しい。でも今回ばかりはお義母さんの言葉に「そうですね、綺麗にします」と素直に受け入れる気分だっだ。
というのも実家がすごかったのだ。物の量が半端ないのだ。整理整頓というレベルを超えていた。物が物で覆い尽くされていたのだ。物の山で、入り口から一歩も入れないという部屋が3つも出来ていた。今回の帰省でその一部を片付けたのだが、あまりの量の多さに途方にくれた。物がぎゅうぎゅうで、部屋が呼吸できていないように感じた。
よくもまあこんな中で生活出来ていたもんだと思うのだが、そこにずっといる人にとっては当たり前の風景なので特に違和感なく過ごせていたのだろう。そんな環境で数日を過ごした私は否が応でも、物が少ないスッキリとした暮らしがしたい、ゆったり呼吸ができる生活したいと強く思った。「帰ったら自宅の物を減らすぞ」と心に誓っていたのだ。そんな私に「片付けなさい」とお義母の追い討ち。
やってやる!!! 私の闘志に火がついた。今に見ていなさいよ!!!
って誰のために行うのか本末転倒ではあるが、短期決戦の場合、怒りのエネルギーの方が瞬発力を発揮するのかもしれない。
まずは部屋を見渡した。部屋の角に積まれた書類たち、棚の上に細々した小物たち。それらがちょっとした山になって集まっていた。それがごちゃごちゃした印象になっていた。その物たちは、最初はちょっと「とりあえず」置いただけだったはず。なのにいつの間にかそこが定位置になってしまい、1つあるんだからこれ位いいかなと周りに物がどんどん集まっていった。
まるで自転車を停める時と同じだ。駐輪禁止の場所がスッキリとして1台もないと自転車を停める事をためらう。だが、ごちゃごちゃと停まっていたらいくら駐輪禁止と書かれた看板が真横にあったとしても、「とりあえず」置いてしまうって事はないだろうか? まさにその心理に似ている。1つの乱れが他の侵入を許してしまうのだ。
引き出しや押入れにも「とりあえず」の物たちが侵入していた。見える場所に置いておけない物はとりあえず入れておく。どんどん物が増えても押し込んでも閉めてしまえばわからない。表面的には綺麗に見える。だが見えない部分にどんどん押し込んでいるのだ。ただ表面を取り繕っているだけなのだ。これは私がよくやるパターンだ。
これは見えない心の中も同じだと言える。感情を表に出さずに心の奥に押し込んでしまう。キャパいっぱいになるまで、ぐちゃぐちゃっと押し込んでいく。いろんな物を溜め込んで、だんだん元気が出なくなっていくのだ。
もし押入れや引き出しに詰め込むクセがある人は、心や頭の中もいっぱいに詰め込んでいないだろうか? 思考をスッキリしないのなら、引き出しや押入れの中の物を一度全部出してみるといい。見えない心や頭の中を、物を通してスッキリさせるのだ。
なんでこんな物がここにあるの? いつからここにいたの? 「とりあえず」の物たちがたくさん出てくる。そんな物たちと一つ一つ向き合うのだ。
なぜ取っておくのか? まだ必要なのか? 一歩先の未来の私にそれはふさわしい物なのか?
物と向き合うことは自分と向き合うことでもあるのだ。どんな自分でありたいのか? その観点でいくと、自ずと取捨選択は決まってくる。過去は必要だったかも知れないが今は役割を終えた物たち。その物たちに感謝してお別れした。
物が減ると、必然的に部屋はスッキリする。棚の上には物がない。床に物がない。ちょっとしたことではあるけれど、見晴らしが全然違う。「とりあえず」の物がないだけで空気感がまるで違う。凛とした空間になっている。目覚めて一番に見る景色がスッキリしていると朝から気分がいい。物が与えるエネルギーは思っている以上に大きいのかも知れない。流れる部屋の空気が本当に全く違うのだから。
こんなに快適ならば、家中をスッキリと快適にしてみようじゃないか。家を整えるということは、大げさに言えば人生を整える事にも繋がるのではないだろうか?
「とりあえず」の人生はやめにして、自分に正直に心地よく生きたいものだ。そのための第一歩が物と向き合うことなのかも知れない。
「まあ! 清々しくなったね」
とお義母さんも嬉しそう。思わず心の中でガッツポーズをした。
やっぱり一番言われたくない人からの言葉は素直に聞いておいた方がいい。
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