メディアグランプリ

実母との同居で分かったこと


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記事:桑島あつこ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「やっぱり、今日から一か月、あんたの家でお世話になるわ」
近くに住む母が、朝一番に我が家にやってきて言った。
実家をリフォームするからなのだが、昨日までは「全面リフォームじゃないし、自分の家が気を使わなくていいから、ご飯とお風呂だけお世話になって家に帰る」と言っていたのに。
 
別にいい。別にいいけれど、こちらも母が泊まる準備を全く用意していなかったので、不意を突かれ「なんで? 家でなんかあったん?」と聞いたのが、悪かった。母は、「なんか迷惑そうや。前は、リフォーム中、自由に家に泊まったらいいやんって言うてたのに。いざ、泊まるとなったら嫌そうやん」と機嫌を損ねてしまった。
 
そこから、なぜか親子喧嘩に発展し、「そんなに私が泊まるのが嫌なんやったら、ホテルに泊まる」と言い出した。どれだけなだめても怒りはおさまらない。私と母は言いたいことを言い合って、喧嘩もするけれど数日したら仲直り。いつもはそうだったが、今回は、なかなか機嫌がなおらない。同居初日から喧嘩。先が思いやられる。
 
夫に母と喧嘩したと言うと「狭い部屋でテレビもないんだから、お母さんもストレスがたまって可哀そうだよ。ポータブルテレビを買ってあげない?」と提案してきた。「お母さんのために買ったといったら、気を遣うだろうから、僕が欲しかったことにして1か月貸すことにしよう」と言う。優しいじゃないか。私にその優しさの一ミリでもあれば、喧嘩にはならなかっただろう。夫の提案は功を奏し、母も少しは気がまぎれたようにみえた。
 
だが、その後も、3日に一度は喧嘩になった。たった一か月のことなのに、なぜうまくいかないのだろう? 昔一緒に住んでいた時は、そんなに頻繁に喧嘩なんてしなかったのに。
 
母はもう10年以上一人で暮らしていて、母の生活ペースがある。私は子どもが中心の生活で、毎日バタバタと過ごしていて心に余裕がない。お互いのストレスが、おかまいなしにぶつかり合うから、喧嘩してしまうのだろうか。喧嘩するのも仲の良い証拠と割り切れればいいのだが。
 
高齢で慣れないリフォームの上、居候先にはイヤイヤ期真っただ中の1歳半の子どもがいる。狭いマンションで、義理の息子も住んでいるのだから、ストレスがたまるは当然だ。
 
夫は「たぶん、あつこは気づいていないけど、言い方がきついんじゃない? だから喧嘩になるんだよ」と言う。そんなことない! と反論したいところだが、ビンゴである。私は深く考えずに思ったことを口にしてしまう。夫が言うように、私が意味なく言った言葉が、母を傷つけていたのかも。
 
先日、母が「友人と外出する」と朝から出かけた。夕方頃には帰ってくると思っていたので9時になっても帰ってこない母が心配になった。いつもはこんなに遅くなることはないし、ご飯がいらない時は、いらないというのに。
 
携帯に何度電話をしても出ず、折り返しもない。事故に巻き込まれたのだろうかと心配で居ても立っても居られなかった。夫と相談し、母の友人が泊まっているというホテルに電話までして、友人に母の居所を確認してしまった。友人から5分前に別れたと言われ安堵した。
 
私は大学生の頃、9時の門限を超えて帰ると母によく怒られたことを思い出した。母はいつまでも帰らない娘が何か事故に巻き込まれたのかもしれないと、心配で仕方なかったに違いない。それなのに、当時の私は「そんなん、大丈夫。心配しすぎ!」と言っていた。今、私は母を同じように心配している。
 
同居して初めて、当時の母の気持ちに気づいた。母が帰ってきて、すごく心配したことを話し、私が当時、母に相当心配かけたことを謝った。そして、この同居で、母を傷つける発言をしていたかもしれないと詫びた。
 
次の日、私はランチに母が好きなフルーツサンドを用意していたら、母は私が好きなお店のタコ焼きを買ってきてくれた。喧嘩をしても相手を大切に思っている。気持ちは同じだ。
 
ぶつかり合ってもちゃんと謝って、お互いの気持ちをちゃんと聞く。その人の立場になること。同居して改めて、そんな当たり前のことに気づかされた。同居して2週間がたつ。不思議と最近は喧嘩しなくなった。母が出ていく日がすでに寂しい。

 
 
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2018-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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