メディアグランプリ

まだボケモンGOやってるんすか?


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記事:ほしの(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「えっ? まだボケモンGOやってるんすか?」
「やってない! やってないってば!」
そう言いながら、あわててスマホをカバンにしまい込んだ。
「さっき近くにやってる人がいてさ、久しぶりに思い出して画面開いただけだよ!」
すべては真っ赤な嘘だった。亀の姿をしたポケモン「ゼニガメ」を思いっきりとっている姿を知り合いの大学生に見られ、めいいっぱい慌てて、口からとっさに出た言葉が、
「やってない!」だった。
 
今や街中のポケモンGOイベントに集まっているのは、おじさんと少しのおばさんが中心だ。下手をするとおじさん、おばさんを通り越して、おじいさんの姿も目にする。
 
実際、数日前に近所のジムとよばれる場所で、伝説ポケモンをゲットしようと戦いを挑もうとしたところ、初老の男性が近づいてきた。
「このレベルでこの人数じゃあ、ちょっときついよ」
「あ、はい……」
きついと言われてもどうしようもないなぁと思ったのだが、その初老の男性、つまりおじいさんはおでこにのせていた老眼鏡をかけなおし、
「ちょっと待ってて。今スマホとは別に、iPadも起動して最高レベルのポケモンで、加勢するから」と言いだした。
ほんとかいなと思っておじいさんのiPadを覗き込んだら、わたしより数段格上のレベルで、めちゃくちゃ強いポケモンを何体も持っていた。
ジムでのバトルはたしかに、そのおじいさんが加わったことで有利に働き、我々のチームは辛くもバトルに勝つことができた。
「ほら、ギリギリだっただろ? このポケモンがいなかったら、30秒は残してタイムアップだったはずだよ」
たしかにその通りだなぁ、ありがたいなぁと思いつつも、そこからの自慢話は長かった。毎日ジム戦を挑んでは、レベル上げをしているらしい。どおりで強いわけだ。いわく、孫からも尊敬されているらしい。それはそれは鼻高々に、そして楽しそうな様子で、いいなぁと思う反面、年金暮らしで暇だからできるんだよなぁと思った自分がいた。
 
だからわたしは大学生の男の子に、ポケモンGOをやっている姿を見られた時、「ポケモンGOをまだやっている」=「暇なおばさん」
と指摘されたような気がして、とっさに嘘をついたのだ。
それに加えて「まだ」という言葉が、「情報感度が低く新しい刺激を知らないおばさん」であると指摘もされているように思えた。
 
けれど、わたしもポケモンGO好きのおじいさんも、ほんとうに「暇」と「情報感度が低い」だけで、ポケモンGOをつづけているのだろうか。
わたしはポケモンGOをやっている中高年を代表して、さらにはポケモンGOをやっていることを瞬間的に恥じたことを反省し、あえて言いたいと思う。
「そういうことじゃないんだよ!」
 
たしかに他のゲームなどの最新情報に強いとは言わない。まぁそれなりにチェックもしているし、過去にはそれなりにはまったこともある。けれどそれらは、若い子たちと同じで、ある程度のところで飽きてしまったのだ。
それに対し、ポケモンGOだけは例外だった。
 
わたしたち昭和生まれは、子ども時代「モノ」に触れて遊んだ。折り紙やめんこを集めたり、リカちゃんを並べたり、初期のゲームであるファミコンが出てからも人気ソフトを買い集めた。発売日に店に並び、手に入れたカセットは名前を書いて友達と貸借りもした。
少し大人になり、おもちゃからは手を離したけれど、次は大好きなアーティストのCDを発売日に買いに行き、胸にしっかと抱きしめて持ち帰った。
 
ポケモンGOの着想は昆虫採集だという話がある。わたしは女の子だったからか友達も含め昆虫採集の思い出はあまりないのだけれど、昆虫採集もまた、手で昆虫に触れ、大切にコレクションし、友達にも自慢したりしたものだっただろう。
 
ポケモンGOはポケモンには直接触れることはできないけれど、スマホの画面をタップすることでポケモンを捕まえることができる。また、捕まえるために、わざわざ町に出ていく必要もある。レアポケモン欲しさに、雨の中わざわざの家を出て、そこに集まる周りの人をちょっぴり意識しながら画面をタップする。それは面倒なゲームだと言えるだろう。けれど、そこにはどこか懐かしい、昭和の遊びの要素が詰まっているのだ。
 
ポケモンGOは大流行してしまったがゆえに「まだ」が、まだついてくる。
「まだやってるの?」
けれど私たちが続けているポケモンGOはもう流行とは関係ない。ポケモンGOはもうすでに一発屋のレベルを超え、昔の思い出のうえにしっかりと根をおろし、生活に入り込んでいる。オフィス街の昼時に、スーツ姿のおじさんがジムの周りにあつまっている姿を見るが、彼らは暇どころかちょっと忙しい日々の間にも、ポケモンGOのアプリを起動してしまっているのだ。
 
「ポケモンGOにはまっている=中高年」かもしれないけれど、恥じることではないのだ。
 
最近になって、ポケモンGOに、捕まえたポケモンを友達と交換するシステムが導入された。小学生のころ、綺麗な折り紙を友達とトレードしたことを思い出す。たぶん多くの人が、ビックリマンシールや仮面ライダーカードや、メンコや、はたまた綺麗な小石など、あらゆるものをトレードした子供時代を思い出しているにちがいない。ポケモンGOはやはり昭和世代殺しである。
今度また近所のジムで、バトルに加勢してくれたおじいさんに会ったら、
「ポケモンの交換しません?」と言ってみようかな。

 
 
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2018-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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