メディアグランプリ

「子供の名付け」は服装を選ぶようなもの


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記事:牧 美帆(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私には、「子供の名前を考える」という趣味がある。
 
最初に名付けに目覚めたのは、中学くらいのときに見かけたローカル新聞。
そこに、希呼(のあ)という名前が載っていた。「のぞみ」の「の」に「嗚呼」の「あ」。
ノアの方舟のノア。「希望を呼ぶ」でノア。なんて完璧な名前なんだろう!
その名前に心酔した私は、暇な時は漢和辞典を引き、将来付けたい子供の名前ばっかり考えていた。なお、インターネットでこの名前を検索すると、京都大学助教授の女性の情報がヒットする。年齢も近いので、私がかつて新聞で見たのはこの方かもしれない。
 
趣味の延長線上で、インターネットの掲示板で、匿名で名付けの相談に回答するようになった。多分2003年くらいからだ。
 
例えば、「ユナ」という名前を付けたいという相談があるとする。
「ハナ」「ヒナ」「マナ」など、ナで終わる2音の名前は人気が高い。
「ユア」「ユイ」「ユメ」など、「ユ」で終わる2音の名前も人気が高い。
じゃあ、「ユナ」もいいのではないか? となりそうなものだが、その前に待ったをかけるのが回答者の役割だ。
なぜならユナには湯女(ゆな)という同音異義語があるからだ。湯女とは江戸時代、風呂屋で接客をしていた娼婦を指す。
 
当然、「せっかくユナちゃんって可愛いのに、いちいち湯女とか昔の言葉を持ち出してくだらない。うちの幼稚園にもユナちゃんはいるけど、そんなのは気にならない」というような意見も出る。
もちろん、私自身、実際にユナちゃんという名前の子に会ったとしても、いちいちこの指摘はしない。
ただ「知っているけどあえて名付けた」と「名付ける時点では知らなかった」は天と地の差がある。なぜなら、改名というのはそう簡単には出来ないからだ。家庭裁判所に申し立て、許可を得なければならない。おそらく「ユナが湯女と同じ音だったので変えたい」という理由では改名はできない。
だからこそ、名付ける前にできるだけ多くの情報を提供し、判断材料としてほしいと願っている。
 
気をつけているのは言葉遣いだ。あまりにきつい言い方は避けたいと考えている。
 
昔、双子の名付けの相談があった。全く読み方の予想もつかない名前を希望していた。
私は考え直してほしい一心で、きつめの口調で反対意見を述べた。
他にも 反対意見は複数あった。
 
数カ月後、忘れた頃に返信があった。
 
「皆さん、先日は名前の相談に載っていただき、ありがとうございました。実はあのあと、体調が急変し、入院し緊急帝王切開となりました。その結果、一人は天国に旅立ちました。そのため、お礼を言うのが遅れてしまいました。申し訳ありません。もうひとりの子供には、全く別の名前を付けました……」
 
私は自分の書き方のせいで、相談者にストレスを与えてしまったのではないかと自分を責めた。
それから数ヶ月、名付け相談の回答から離れた。
 
それでも、いろいろな相談者の方から、
「参考になりました。ありがとうございました」
とお礼を言ってもらうのが嬉しくて、戻ってきてしまった。
 
相談相手は、不安を抱える妊婦さんがほとんどだ。
そのことを肝に銘じたいと思っている。
 
子供の名付けは、服装を選ぶのに似ている。
必ずしも、きっちり着こなす必要はない。
少しぐらい「外し」たり「遊び」があった方がお洒落に見えることもある。
例えば「SEKAI NO OWARI」のメンバーであるSaoriさんは「彩織」という字を書く。彩にはサイという読みはない。しかし「サイ」+「オリ」でサオリと読むであろうことは想像がつくし、「彩る」と「織る」という字並びも素敵だ。
また、時代に合った装いもとても大切。どんなに良い服を着ても、デザインが時代に合わないと浮いてしまう。
仮に、将来心の清らかな子になってほしいという願いがある。
ストレートに清子とする手もある。しかし、清子は大正時代に人気のあった名前だ。
ひとつは、子を別の字に変えてみる。清葉(きよは)、清音(きよね)、清乃(きよの)など、他の字と組み合わせてみる。
もうひとつは、読み方を変えてみる。音読みで清奈(せいな)、名乗りで清花(さやか)としてみる。
それだけで、ぐっと現代的な名前になる。
もちろん、それでもなお、清子がいいというというのであれば、それも親の選択だと思う。
とにかく、いろいろ頭の中で「試着」してみることが大切。出生届は、出産日を含めて14日以内に出さないとならず、焦ってしまうと「こんなはずじゃなかった」という後悔の元になりかねない。
 
さて、インターネットで子供の名前に対する質問に回答していると、ときどき聞かれるのが、
「そういうあなたは、どんな名前を子供につけたのですか?」
という質問である。
 
もちろんインターネットで、正直に子供の名前を答えることはしない。
そもそも、我が子の名前は夫が考えたものだ。私がつけようとすると思い入れが強すぎて暴走しそうなので、考えてもらった。
その結果、我が子の名前は、漢字の説明もしやすく、意味もあって、かつ少し珍しいの名前になった。愛する夫が付けてくれた息子の名前を、私はとても気に入っている。

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2018-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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