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目ヂカラ入れて今日も行く!


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記事:卯月そら(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「お姉ちゃん、眠い? 眠いの?」
「さっき起きたばっかりなんだから、眠くないよ! ちゃんと起きてるよ!」
ちょっとキレ気味に私は答える。
これが、年に2回ほど帰省した時の妹とのいつもの会話である。
 
どうも、最近の私の顔は、いつ見ても眠そうに見えるらしい。
自分でもうすうす気づいていたが、よく眠って起きた朝一番にそんな風に
見えるとは……。
眠そうに見える原因は、年齢を重ねるにつれてだんだん下がってきたまぶただ。
よくよく鏡を見ると、黒目の3分の1がまぶたで隠れている。それがいつもの顔になっているなんて、そりゃ、いつも眠そうに見えるわけだ。
 
私は、どちらかといえば勢いがある。仕事での打ち合わせも、友人との会話も前のめりぎみだ。仕事で伝えなくてはならないことは、言いにくくても必ず伝える。
そんな私が、眠そうな顔なんて……。
グイグイ前に進める打ち合わせをやっている、私の表情が眠そうなんて、説得力がなさすぎる。
 
いけない。この顔何とかしなくては。
一体、どうしたらいいんだろう。
世の中には、まぶたを引き上げる手術もあるらしい。でも、ピアスも開けられない私にはとてもそんな勇気はない。ケガもしていないのに顔にメスを入れるなんて。
 
しかし、ちょっと待てよ。年を重ねて眠そうな顔になってきたのは何も世の中に私だけではないはずだ。世の中の妙齢の女性の中には結構いるんじゃないだろうか。
そう思って、通勤電車の車内や、会社で周囲を見回してみる。
でも、なかなか見当たらないのだ。
みんなばっちりメイクで、一様に目は大きいのだ。
 
そのとき、ふと思い出した。福岡に住んでいたころ通っていた料理教室の先生が眠そうな目だったことを。でもなぜか、その先生は存在感と迫力があった。眠そうだと思ったことは一度もない。でも妙にいつも目元が気になった。どうしてだろう。
 
わかった!
アイラインだ。
その先生には、ハリウッド女優張りのアイラインが目元にしっかり引かれていた。それでずいぶんハッキリした印象になっていたのだ。
ああ、そう考えるとさりげなく、でもしっかりとアイラインを引いている知り合いはたくさんいる。ずいぶん年下の後輩もみんなラインを入れているのを思い出した。
 
デザインでも風景画でも、黒でラインを入れるとそのものが際立つ。まぶたに黒いラインを入れるということは、目が際立つということだ!
ああ、こんな当たり前のこと世の中の女子はみんな知っていたんだ。だから、あんなにアイメイクに時間をかけているんだ。
 
情けない。
長年、女子をやっているにもかかわらず、こんなにみんなやっていたことに今まで気づかなかったなんて。
女子力が低くて、残念すぎる……。
 
でも。
顔にメスを入れることなく目を大きく見せる方法にやっと気付いたんだからすぐにやらないと。
 
メイクボックスを開けると、隅のほうから一度も使ったことのないアイライナーがでてきた。パッケージがかわいいことで有名な、コスメメーカーのクリスマスキットに入っていたものだ。人気があって競争率が高いので、ずいぶん苦労して手に入れたキットなのにアイライナーだけは使わないなと、箱にいれたままだった。
ついに、これを使う時がやってきたのだ。
 
箱から出して、キャップを開けてみる。
リキッドタイプのアイライナー。要は、目元を描く筆ペンみたいなものだ。
実は、この筆ペンタイプのアイライナー、使うのが難しそうで敬遠していた。
 
鏡の前に座って、上まぶたのまつ毛の際に、そっとアイライナーを引いてみる。
「あ、思ったよりすんなり描ける」 
もっと、太くなったり線が乱れたりするのかと思ったけどそんなことはないみたいだ。
ラインは太くなりすぎてはいけない。あくまでもさりげなく。
利き手のせいか、ラインは右目より左目のほうが難しい。
でも、絶対に左右均等にしないと変なのだ。
そうやって、時間をかけて左右のまぶたの上のラインが引けた。
 
「わっ、目がくっきり。もう眠い目じゃない!」
あえて「仕上がった」と表現しよう。仕上がった顔は、本来の自分を示す顔だった。
まじまじと自分の顔を鏡で見ながら、急にこんな顔で会社に行ったら、誰かに何か言われるんじゃないかと心配になった。でも、まわりの女子はみんなさりげなくアイラインを入れている。私もその仲間入りをしただけだ。
案の定、この顔で会社に行っても誰にも何も言われなかった。唯一、いつも一緒にランチをしている後輩だけは、まじまじと私の顔をみて何かいいたそうだったけれど。
 
ああ、これでやっと謎が解けた。
世の中の女子が、何故、あんなに時間をかけてアイメイクをするのかが。
すべては目を大きく見せて、目ヂカラを手に入れるためだったのだ。
そして、やっと私もこの年になって、必要に迫られてだけれど「目ジカラ」というアイテムを手に入れた。ちょっと朝の化粧の時間が長くなったけれど、これで本来の自分の顔を手に入れられるなら苦でもない。
 
アイラインを引くのも手慣れてきたころ、会社を辞めて転職した友人に久々に会った。彼女は言った。
「あれ、なんかメイク変えた? すごくあか抜けた感じがするよ」
 
その時、私は確信した。
「目ジカラ」を使いこなせていることを。
 
さあ、今日もアイラインを引いて「目ジカラ」いれて出かけよう!
そして、私らしい顔で仕事をしよう。

 
 
***

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2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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