fbpx
メディアグランプリ

カシスオレンジを飲む空海


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事;やまもとよしこ(ライティングゼミ・日曜コース)

 
 
「すみません。今、レイアウト変更中なのでしばらくお待ちいただけますか」
いつもより1本遅い電車で天狼院京都に飛び込んだ。
なのにまだ2階へは上がれないのだと。
なんでも店主の三浦さんが今日は京都に居て、ここで登壇するらしい。
そう聞いてもまだ現実感のないまま1階の書店で本を眺めていた。
5分前になった。中継画面が正面に見える私のお気に入りの席には既に人が座っていた。
仕方なく前方の席に座る。細長い二人掛けのテーブル席。向かいにはソファー。
この前に立つのはさすがに厳しいのではないかと「三浦さんどこに立たはるんやろ?」
思わずつぶやいたら「そっちの黒板の前と違いますか」と誰かが言った。
薄暗くていつもは気にしていなかったが、私の左側は通常の壁ではなく一面黒板になっていた。
近いよ~。1メートルも開いてない。パーソナルスペース入ってるやん!
こんなところに現れられたらどうしたらいいのん?
そんなおばさんのうろたえも当然知らずに黒ずくめの男・三浦さん登場。
いやー、私、もろにかぶりつきの席じゃないですか!
こうなったら少しでもその‘気’や‘エキス’をもらおうと聞き入った。
総復習とテストで距離を気にする暇もなく淡々と最終講義は終わった。
ここまでならまぁ普通だった。
三浦さんはこぶ平(失礼! 9代目林家正蔵)ではなかったと納得して終わり。
続くプチ打ち上げで三浦マジックを見せて頂いた。
「先ず飲み物、何にしますか?」から始まったものの「カシスオレンジ、超お勧めですよ。なぜなら……」とお酒を飲まない三浦さんから語られると「ビール」と言おうとしていた口がさっきまで全く興味のなかった「カシスオレンジ」と声にしていた。
私はアルコールは好きだけれど、カクテルは悪酔いするので滅多に飲まない。でも先月ごちそうになった奇跡のおいしさのリンゴジュースと同じ里山十帖のオレンジジュースを使っていると言われ、更には某飲料メーカーの方が本気で絶賛したと聞くと味を知りたくなるではないか。
運ばれてきたグラスには夕焼けの様なオレンジと濃い紫の液体が底に沈んでいた。
かき混ぜようとすると「ちょっと待って」と待ったがかかり「少ないからもうちょっと足しましょう。ビン持ってきて」とスタッフに指示をした。
テーブルにはオレンジジュースとカシスリキュールのビンが並んだ。
そして若くて美人の‘おかみ’が一人一人の席を回りグラスに継ぎ足していく。
何と心憎い演出だろうか。
最初から適量で運ばれていたなら、ただの美味しいカシスオレンジで終わっただろう。
でも、この演出だと味、香り、色に加えて側におかみが寄ってくる時の密度の濃い空気や、注ぐときの音や液体の動きだって聞こえてきそうで五感で記憶に残る時間となる。
そして話は現在執筆中の京都を舞台にした小説に移った。
京都市内の市バスが恐ろしく混んでいる日常から、そんなことまで話して大丈夫なんですか? と思わず言いたくなるネタまで出てきた。
そこからはちょっとした文章講座に発展。
例えで話された、“ビーチに居る盗撮者を探せ”はとても印象深かった。
盗撮者を探す三浦さんが挙動不審なため調べられ、手持ちのパソコンから怪しくも美しい‘秘めフォト部’の写真がわんさと出てきて万事休す、も面白いけれど「何もなかった、でもいいんですよ」とおっしゃったのだ。「それでどう着地するのですか?」と、かぶりつきの席特権で三浦さんの隣になった私はすかさず尋ねた。
「盗撮者はおらず何事もなく、ビーチは今日も平和だった」
それを聞いて、二つの事を感じた。
この人はどうやったら面白くなるのか、楽しめるのか分かりやすくできるのかを本当にいつも全力で考えているのだと。そして何が何でも書き切ろうとする思いが強いのだと。
その後は秘めフォト部の美しい写真を見せて下さり、見ず知らずの女性の裸体に女の私が魅了された。
うっとりした魅惑の時間の魔術で、うっかりと週末の熱海の合宿にも行ってしまいそうだった。
次々と繰り出される魔法。
天狼院をかじった人は皆知っている‘天狼院はシルクドソレイユである’をこんな形で実感した。同時にそれだけじゃないと何かが迫って来た。
薄暗さか酔いのせいか、町屋を改装した天狼院がなぜか東寺の講堂のように感じられた。一つ一つの講座は立体曼荼羅だ。
密教の教えを分かりやすく表現したのが曼荼羅だが、それをよりリアルに具現化したのが立体曼荼羅と言われている。壮大な構想で当時の人達は驚いたに違いない。
真言密教思想を可視化した空海。リーディングやライティング、撮る事、演じる事等、様々なジャンルの凡人の悩みを解決すべく、その理論をオリジナルでそれも再現性高く構築して世に提示した三浦さん。似ていなくはないだろうか。
信心深い方、密教や仏教に造詣の深い方には叱られるだろうけれど。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事